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第六章 連れ去らわれて
39.フランシス様
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自分の思い通りにならないと怒りだす。フランシス様は昔からそうだった。
我慢という言葉を知らず、少しでも気に入らないことがあると大騒ぎするのでウェルズリー家の使用人はみんなフランシス様に手を焼いていて、世話係を命じられた者は次々と辞めて行っていた。
そんなフランシス様の世話係として唯一俺だけが数年にわたってお世話をし続けることができた。俺の場合は父親がウェルズリー家で執事長をしている手前、簡単に仕事を辞められなかったのだ。
俺だって最初はフランシス様のお世話係は嫌だった。けれど、わがままで手に負えないはずのフランシス様がどういうわけか俺に懐いてくれたので、次第に嫌な気持ちが和らいで行った。
俺がドグマ様の屋敷へ引き抜かれることが決まったとき、フランシス様に挨拶せずに伯爵家の屋敷を出てきたのは、フランシス様が唯一心を開いた俺のことを手放したくないと大暴れすると思ったからだ。
けれど、実際に挨拶せずに出てきたら出てきたで、後から不安になった。俺が黙って屋敷を出ることをフランシス様が許してくれるはずはないのだから。
二度も手紙が来たときは、やっぱりなとため息が出た。フランシス様にきちんと話をしてから出て来ればよかったと後悔していたのだが、まさかこんなふうに拉致監禁されることになるとは……。
フランシス様は俺をどうする気だろうか。縛られた両手を背後でグッと左右に引っ張っても、やっぱりびくともしない。
この状況で殴られたり、刃物で刺されたりしたら、俺は何の抵抗もできない。
フランシス様が俺の前まで歩み寄った。手が伸びる。叩かれるのか!?
息を呑んだけれど、フランシス様の手は俺のあごを掴んで、目を見つめられた。
「ローレンス、僕のことなんて、もうどうでもいいって言いたいのか!?」
フランシス様は青く美しい目に涙を溜めながらそう言った。
どうやら黙って出て行ったことを復讐しようとか、思っている感じではない。
寂しさのあまり、ただ俺に会いたかったのだろう。
この様子だと新しい世話係ともうまくいかなかったに違いない。少し気の毒に思えてきた。
「今でも私はフランシス様のことが大事です。長年お仕えして築き上げた絆は永遠のものだと思っています」
フランシス様の表情がパアッと明るくなった。
「そうか、そうだと思ったんだ! きっとローレンスも同じ気持ちだと信じていたよ! この家は空気のいい森の中で静かに療養したいと言ってお父様に買ってもらったんだ。ローレンス、一緒にここで暮らそう!」
我慢という言葉を知らず、少しでも気に入らないことがあると大騒ぎするのでウェルズリー家の使用人はみんなフランシス様に手を焼いていて、世話係を命じられた者は次々と辞めて行っていた。
そんなフランシス様の世話係として唯一俺だけが数年にわたってお世話をし続けることができた。俺の場合は父親がウェルズリー家で執事長をしている手前、簡単に仕事を辞められなかったのだ。
俺だって最初はフランシス様のお世話係は嫌だった。けれど、わがままで手に負えないはずのフランシス様がどういうわけか俺に懐いてくれたので、次第に嫌な気持ちが和らいで行った。
俺がドグマ様の屋敷へ引き抜かれることが決まったとき、フランシス様に挨拶せずに伯爵家の屋敷を出てきたのは、フランシス様が唯一心を開いた俺のことを手放したくないと大暴れすると思ったからだ。
けれど、実際に挨拶せずに出てきたら出てきたで、後から不安になった。俺が黙って屋敷を出ることをフランシス様が許してくれるはずはないのだから。
二度も手紙が来たときは、やっぱりなとため息が出た。フランシス様にきちんと話をしてから出て来ればよかったと後悔していたのだが、まさかこんなふうに拉致監禁されることになるとは……。
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