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第十二章 結末(ドグマside)
74.夜明けの街
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パーティー会場の屋敷を出る頃には周囲はうっすらと明るくなっていた。
しかしすっきりと晴れた青空は見えなくて、外に出るとすぐ先も見えないほどの濃い朝もやが出ていた。ローレンスと共に庭を抜け、門の外へ出ても石畳の街並みは見通せない。
屋敷の前に立っているタキシードの使用人が馬車を手配しようとしてくれたが、大通りの方まで歩いて自分で馬車を拾うからと言って断った。すぐに帰るつもりはなかったのだ。
後ろについて歩くローレンスをちらりと振り返ると、少し恥ずかしそうに頬を赤らめていた。
絶頂しながら「好きです」と俺に告白してきたことを思い出しているのだろう。本音が口から漏れてしまったという風だった。常に身分をわきまえている奥ゆかしいローレンスが……。
俺も顔がかぁっと熱くなって、前を向き直った。朝の冷たい空気が顔に当たって心地良い。
こんなふうにローレンスと街を歩くのは初めてだ。ローレンスと一緒にいるとなんでもないことでも全て楽しくて心浮かれてしまうから不思議だ。
先を越されてしまったが、俺からもきちんと想いを伝えねば。
ローレンスを執事として迎え入れたのも、俺の一目惚れから始まったことだと言ったら、ローレンスはどんな反応をするだろうか。そして俺の妻になってほしいと正式に求婚したら……。
ああ、ドキドキする。
住民たちはまだ眠っているのだろう。夜明け直後の街はしーんと静かで、人の気配がなかった。路地の方から物音がしたかと思うと野良猫のなーなーとさかりのついた鳴き声が聞こえるだけだった。
どうやって伝えようか。この場で振り返って、ローレンスを抱きしめて募る想いを打ち明けようか。
いや、もう少し歩いた先に公園がある。その池のほとりがいいかもしれない。
さっきの屋敷の寝室で伝えてもよかったのだが、情事の最中や直後に伝えるのではなんだか俺のこの本気の気持ちが伝わらないのではないかと思って躊躇われたのだ。それぐらい俺のローレンスへの気持ちは重いモノなのだから。
背後から誰かが走って来る足音が聞こえた。きっと牛乳屋か新聞配達員だろう。勢いよくこちらに向かって迫って来るその様子になんとも言えない異常さを感じた。
短剣を手に猛スピードでこちらに迫ってくるのだ。
「……っ!」
通り魔か!? ローブで身を包んでいるけれど、相手は魔族ではなく人間だ。
防御しようと自分とローレンスのいる範囲に魔法でバリアを張るが、なんとその短剣はバリアを切り裂いてしまった。
「まさか……っ!」
こんなこと初めてだった。俺の魔法が通用しないなんて。相手は本当にただの人間か!?
どうしたらいい!? 考えている間にも相手は剣を構えてこちらに迫って来る。
「ドグマ様お逃げくださいっ!」
そう言いながらローレンスは俺の前に出て、盾になろうと両手を広げた。
「ローレンス、よせっ!! お前こそ逃げてくれ!」
大事なお前がどうしてそんな真似を。
「うああああっ!!」
叫び声を上げながら、男は刃先をこちらに向けて速度を上げた。
相手の頭をフードで覆っていたが風圧を受けてひらりとめくれた。
露わになったその顔は見知ったものだった。俺以上にローレンスが驚いて叫んだ。
「フランシス様っ……!」
つややかな金髪に人形のような白い顔はローレンスが以前仕えていた伯爵家のフランシスに間違いなかった。
「そこを退けローレンス! 僕はバケモノ辺境伯を倒しに来たんだっ!!」
フランシスは叫びながらローレンスをかわして俺に斬りかかろうとした。
「バケモノめがっ! よくも僕のローレンスをっ!!」
血走ったその眼から本気の殺意を感じた。
「っ!!」
もう一度バリアを張るが、やっぱり短剣には全く効かない。
魔力の強い俺の魔法が効かないなんて、こんなこと初めてだった。
後ずさりするが、背後は壁でこれ以上逃げ場はない。
何の手立てもない。このまま、斬られるしかないか!?
フランシスの短剣が振り上げられた。
「ドグマ様ッ!!」
今まさに俺の胸に短剣の刃が突き刺さろうとした瞬間、ローレンスの叫び声がしたと思ったら俺は突き飛ばされていた。斬りかかるフランシスと俺の間にローレンスが体を滑り込ませたのだ。
「……っ!!!」
盾になったローレンスの胸に刃物がぐさりと突き刺さった。
しかしすっきりと晴れた青空は見えなくて、外に出るとすぐ先も見えないほどの濃い朝もやが出ていた。ローレンスと共に庭を抜け、門の外へ出ても石畳の街並みは見通せない。
屋敷の前に立っているタキシードの使用人が馬車を手配しようとしてくれたが、大通りの方まで歩いて自分で馬車を拾うからと言って断った。すぐに帰るつもりはなかったのだ。
後ろについて歩くローレンスをちらりと振り返ると、少し恥ずかしそうに頬を赤らめていた。
絶頂しながら「好きです」と俺に告白してきたことを思い出しているのだろう。本音が口から漏れてしまったという風だった。常に身分をわきまえている奥ゆかしいローレンスが……。
俺も顔がかぁっと熱くなって、前を向き直った。朝の冷たい空気が顔に当たって心地良い。
こんなふうにローレンスと街を歩くのは初めてだ。ローレンスと一緒にいるとなんでもないことでも全て楽しくて心浮かれてしまうから不思議だ。
先を越されてしまったが、俺からもきちんと想いを伝えねば。
ローレンスを執事として迎え入れたのも、俺の一目惚れから始まったことだと言ったら、ローレンスはどんな反応をするだろうか。そして俺の妻になってほしいと正式に求婚したら……。
ああ、ドキドキする。
住民たちはまだ眠っているのだろう。夜明け直後の街はしーんと静かで、人の気配がなかった。路地の方から物音がしたかと思うと野良猫のなーなーとさかりのついた鳴き声が聞こえるだけだった。
どうやって伝えようか。この場で振り返って、ローレンスを抱きしめて募る想いを打ち明けようか。
いや、もう少し歩いた先に公園がある。その池のほとりがいいかもしれない。
さっきの屋敷の寝室で伝えてもよかったのだが、情事の最中や直後に伝えるのではなんだか俺のこの本気の気持ちが伝わらないのではないかと思って躊躇われたのだ。それぐらい俺のローレンスへの気持ちは重いモノなのだから。
背後から誰かが走って来る足音が聞こえた。きっと牛乳屋か新聞配達員だろう。勢いよくこちらに向かって迫って来るその様子になんとも言えない異常さを感じた。
短剣を手に猛スピードでこちらに迫ってくるのだ。
「……っ!」
通り魔か!? ローブで身を包んでいるけれど、相手は魔族ではなく人間だ。
防御しようと自分とローレンスのいる範囲に魔法でバリアを張るが、なんとその短剣はバリアを切り裂いてしまった。
「まさか……っ!」
こんなこと初めてだった。俺の魔法が通用しないなんて。相手は本当にただの人間か!?
どうしたらいい!? 考えている間にも相手は剣を構えてこちらに迫って来る。
「ドグマ様お逃げくださいっ!」
そう言いながらローレンスは俺の前に出て、盾になろうと両手を広げた。
「ローレンス、よせっ!! お前こそ逃げてくれ!」
大事なお前がどうしてそんな真似を。
「うああああっ!!」
叫び声を上げながら、男は刃先をこちらに向けて速度を上げた。
相手の頭をフードで覆っていたが風圧を受けてひらりとめくれた。
露わになったその顔は見知ったものだった。俺以上にローレンスが驚いて叫んだ。
「フランシス様っ……!」
つややかな金髪に人形のような白い顔はローレンスが以前仕えていた伯爵家のフランシスに間違いなかった。
「そこを退けローレンス! 僕はバケモノ辺境伯を倒しに来たんだっ!!」
フランシスは叫びながらローレンスをかわして俺に斬りかかろうとした。
「バケモノめがっ! よくも僕のローレンスをっ!!」
血走ったその眼から本気の殺意を感じた。
「っ!!」
もう一度バリアを張るが、やっぱり短剣には全く効かない。
魔力の強い俺の魔法が効かないなんて、こんなこと初めてだった。
後ずさりするが、背後は壁でこれ以上逃げ場はない。
何の手立てもない。このまま、斬られるしかないか!?
フランシスの短剣が振り上げられた。
「ドグマ様ッ!!」
今まさに俺の胸に短剣の刃が突き刺さろうとした瞬間、ローレンスの叫び声がしたと思ったら俺は突き飛ばされていた。斬りかかるフランシスと俺の間にローレンスが体を滑り込ませたのだ。
「……っ!!!」
盾になったローレンスの胸に刃物がぐさりと突き刺さった。
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