絶対、イヤ。絶対、ダメ。

高宮碧稀

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彼の片想い******

きっとそうだよ。6

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一応借りていた物を返すという大義名分はあったものの、差し迫ったものではなくて、りこちゃんを見せびらかしたいだけのようだった。
「……ごめんね。急に来て」
りこちゃんが謝ったけど、強引に連れてこられたのは一目瞭然だった。
「いや、連絡なかったのも有志のせいでしょ?どうぞ」
そう言ったけど、りこちゃんは玄関から動かない。不思議に思って、声をかけようとした時、勝手に奥に入って行った有志の声がした。
「拓眞ー、コーヒー入れて!りこちゃんのカップ、コレな!」
りこちゃんのカップと限定されて、嫌な予感がした。
「……有志っ!勝手に触んなよ!」
短い廊下を入ると、流し台の横から、伏せておいた美夜ちゃんのカップを手に取った有志が見えた。
「それはダメ!」
取り上げて、有志が触ったのが気に入らなくて目の前で洗い直す。
「なんだよ?淡いブルーで明らかに女物で?ちゃっかり高園、部屋に呼んでんのか?いつから?」
「………………」
自分に都合のいい思い込み以外には、察しがいい有志。美夜ちゃんのマグカップとぼくの慌てようであっさり言い当てた。
「いいから、有志はりこちゃん呼んでこいよ」
そう言うと、とりあえず彼女の顔を見にあっさり玄関へ向かった。
美夜ちゃんは最近部屋を訪れていなかったけど、カップは自分が何回か使った。我ながら気持ち悪いけど。

3人分のコーヒーをドリップすべく、準備する。お湯は……美夜ちゃんのなら、細口のポットでわざわざ沸かしてから冷ます手間も惜しまないけれど。
来客とはいえ、有志だからいいか。電気ポットから注ぐ。蒸らしている間に顔を出して二人の様子を伺った。
「りこちゃんは、砂糖とミルクいる?」
二人で話していたけど、りこちゃんは靴すら脱いでいない。有志が若干困った顔でこちらを振り向いた。
「坂本くん、美夜ちゃんの誤解解いたの?」
有志が口を開く前に、有志の新しい彼女が僕を詰まらせる一言を放った。
「……告白してみたけど。不発だったよ」
有志が驚きの表情を見せた。
「断られたのか?高園に?」
「本気にしてもらえなかったんだよ」
顔をそらしてそう言うと、りこちゃんが可愛らしい顔をしてさらに毒をひとさじ。
「つまり、ヘタレた事しか言えなかったのね?」
「……りこちゃんの彼氏よりヘタれてないと思うよ」
決して褒めていないのに、目の前の恋人達は揃って顔を赤らめた。
 ごちそうさま。胸焼けがしそうだよ。

暫しの沈黙の後、りこちゃんが一番最初に口を開いた。
「誤解解けてないなら、いが…有志くん、が一緒でも上り込むのはやめとく」
『五十嵐くん』と呼びかけて、ちらりと有志を伺って言い直した。有志も独占欲が強いタチらしい。
「あー。高園は、内に貯めそうだもんな。不安も、不満も」
恥ずかしながら、有志の事を親友だと思ってるけど。
それでも、美夜ちゃんについて知った風に言うのが最高にムカついた。
「いつか、美夜ちゃんも一緒に来るよ。私、コーヒーはブラックだから。その時にいただくね。い……有志、くん。帰ろう?」
身長差のせいか、上目遣いで見つめられて、有志はあっさり帰っていった。
3人分の蒸らし過ぎたコーヒーだけが残ったから、多少の雑味を我慢してアイスコーヒーに作り変えた。この時期には寒々しい。
少しでも早く、この狭い部屋でぎゅうぎゅうになって、4人でコーヒーを飲めるように頑張ろうと思った。

最後に会った時、美夜ちゃんは次の飲み会の後は来ないと言っていた。
体を繋げられないからって理由なのか、体調が悪くなるのか。貧血なんかがひどいと言うのなら、無理はさせられないけれど、飲み会自体に参加できるようだったらそのままここに連行だ。
もう1週間以上前に、お兄さんに連絡して許可をもらい、お兄さん経由でご両親にも快諾していただいている。
日付をまたぐ前に帰ること。自宅の扉が閉まるまで見届ける事を予め自分から申し出た。

勝手に進めた計画を告げると、美夜ちゃんはちょっと不貞腐れた。
もう気持ちは伝えたので、怖いものなんかない。たとえ本気にされなかったとしても。
「会いたいの、僕だけ?美夜ちゃんは、僕と二人で過ごしたくない?」
気持ちを隠さずそう言うと、小さく『ずるい』と『うそつき』を漏らした。
飲み会を二人して少し早めに切り上げて、二人の時間を延ばした。
その事自体には不満は出なかったけど、きっちり時間をずらして会場から出なければならなかった。美夜ちゃんがそこを譲らなかったのだ。
美夜ちゃんの、頑固者。
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