絶対、イヤ。絶対、ダメ。

高宮碧稀

文字の大きさ
108 / 113
閑話******

横山先輩はほくそ笑む。2

しおりを挟む
永らく更新が滞り申し訳ありません。
近況ボードにお詫びを掲載していますので、まだ読んでいらっしゃらず、かつ、お時間がある方はご一読お願いいたします。
--------------------------------------

「美夜ちゃんみたいな可愛い子の恋こそ、叶って欲しいのになー」
ふにゃふにゃになるまで酔って、ざっくりと開いた胸元まで赤らめて。無防備な顔で、甘えるように擦り寄ってくる。
関心ない顔を装って、冷静ぶって、でも、視線を走らせて。彼女が動くたびに微かに動いて、細い首に寄り添う華奢なチェーンと花のモチーフのペンダントトップを認めて安堵した。
今日、何度も確認したネックレスは、去年の誕生日に贈ったもので、寸前まで指輪と迷ったなんて、綾には絶対に言えない。
「本当に気に入ってんのな。高園の事」
「うん。妹みたいに可愛い!」
顔を上げて、無邪気に笑う。綾のそんな表情を引き出す女の後輩にすら、ちょっとモヤモヤする自分の独占欲は、我ながら引く。逃げられたら困るから、隠しておきたい事実だ。
「自分だって。坂本や五十嵐の事、気にかけてるじゃない」
キツめの目を、意地悪く細めてからかうから、脈絡なく口付けて黙らせた。
頬も、目尻も、首筋も。鎖骨から胸元まで更に赤らめて、顔を伏せる様子が堪らなく可愛い。
女に、こんなにも溺れるなんて。
最初こそ、意地を張ってあらがおうとしたが、彼女を手に入れる為、自分の小さなプライドは早々に放棄した。

初めて会った時、週末いっぱい綾の顔や表情、声や仕草が忘れられなくて、翌週にはサークルの活動場所を訪れた。
もともと、毎日参加するヤツなんていないから、綾にもう一度会えたのは、かなり後になってからだった。
サークルに誘ったのは自分のくせに、驚いた顔をして。
「本当に来るとは思わなかった!横……横、なんだっけ?」
なんて言うから。あまりの関心の薄さにムッとした。
苛立ちを隠さないままに手を取って、引き寄せて、耳に唇を寄せた。
「横山だよ。山田あやさん」
声に想いを乗せて、耳から脳に送り込むように紡いだ言葉。彼女がかなり頬を赤らめたから溜飲が下がった。
会えずに通い詰め、サークルに参加していたヤツに、彼女の特徴と『あや』と言う名前を出しては、苗字や学部を教えてもらった。
フルネームの響きを知っただけで、専攻を知っただけで、毎回胸を躍らせた自分との差に、自分で驚くほど落胆した。
後から、『綾』と書くのだと本人から聞いて、今まで気にも留めなかったその漢字すら美しく思えた自分は、最初から彼女には敵わない。

クルクル変わる表情。しっかりした考え。自分の意思をきちんと持った、揺るぎない彼女に、会うたびに惹かれた。
恋人にこぎつけた今も、不思議と飽きる事がない。
そんな彼女は、サークルの後輩の高園をえらく気に入っている。
「美夜ちゃんのお義姉ねえさん『綾香』って言うんだって!私の事も、姉みたいで『綾』って字に縁があるって言ってたの」
そう言って、ひどく可愛く照れるから。綾の、滅多に見れない表情を引き出す高園に、ついつい意地の悪い言い方をしてしまう。
まぁ、うん。自覚してる。冷静ぶってるだけで、その実、かなり嫉妬深い。
それでも、坂本よりはマシだよな。そう思うと、高園が気の毒にも思える。
高園も、満更でもなさそうだし、すぐにまとまると思ってたんだが……

「ただ……片想いしているだけです。その人には、好きな人がいるので……」
語尾に向かって、細くなる声を聞きながら、まだ坂本が江頭を好きだと思い込んでるのかと呆れる。心配気に気遣う綾も、未だ誤解している一人だけど。
あの独占欲丸出しの坂本を目の当たりにしておいて、気づかない二人の鈍感さには驚かされる。
あと、五十嵐な。アイツも大概鈍い。
一肌脱いでやっても……なんて、思い始めてるあたり、綾の事を言えやしないのかもしれない。
最初は綾だけが目的だったサークルも、より身近な人間関係も、後輩も。そこまで嫌じゃない。
特に、坂本の独占欲や、根回しや、強い想いは、自分となんとなく通じてる気がして。ちょっとだけ、協力してやろうかという気にもなる。
それなのに。4年も片想い?
高園も、絶対に坂本の事を好きだと思ったんだが、勘が外れたみたいだ。だけど、それで諦める坂本じゃないだろう。

高園の片想いを教えてやった時の表情を思い出して、ほくそ笑む。正直、さっさと捕まえて欲しい。
綾が……高園の恋の行方に想いを馳せる、その時間さえ、自分で埋めてしまいたい。
自分も大概だな、と思いつつ。今年の誕生日は、指輪一択だと決める。
綾の胸元を、チラチラと見遣るサークルのメンバーを思い起こして決意した。
そんな、醜い想いさえ。
「この服、このネックレスが一番映えるの」
なんて、可愛く綾が言うから。
ついそんな服装を許してしまって、気苦労が絶えないなんて……綾に会う前の自分ならあり得ないけど、不思議と嫌じゃなかった。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...