絶対、イヤ。絶対、ダメ。

高宮碧稀

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彼女の片想い***

ダメ、絶対。2

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フフンッて見下した感じの笑みで動けない私を嘲笑って、キッチンの方に歩いて行ったから、坂本くんが視界から消えた。
少し休んだら頑張って起きて、シャワーを浴びて、朝になる前に、ちゃんと帰る。
回らない頭で、気だるい体でそう決意したけど……まだ起きられる気がしない。
「美夜ちゃん。何か飲む?」
坂本くんが下着だけでタオルを首にかけてキッチンから声をかけてくれた。
「……お水、飲みたい」
「ん。了解」
冷蔵庫を開ける音や、コップが置かれる音。生活音が心地いい。
眠気が襲ってきたけど、しっかりしなきゃ。

「飲める?」
……ムリ。今は起き上がれそうにない。
「口移しで飲ませたげようか?」
笑いを含んだその言葉に、うんって言いそうになった。
口移し……それって、キスと同じじゃないっ!
急いで身を起こす。ふらつく体を坂本くんが支えてくれた。

「そんな急いで起き上がらなくても……持てる?」
ため息まじりにコップをもたせてくれた。
冷たいお水。のどを潤して、胸の辺りまで冷やしながら食道を降って不意に消える。
アルコールも少し入っていたから、すごく美味しい。
半分くらい一気に飲んで、一息ついた。
続けてもう半分飲もうとしたら、坂本くんが胸の頂を口に含んでびっくりした。

コップが傾きそうになってあわてて両手で持ち直す。
そう言えば、びっくりして起きたから裸のままだったことを思い出した。
身をよじって逃げようとしたけど、腰に手を回されてあんまり動けない。
「にげひゃらめらよ」
逃げちゃダメだよ?無理に決まってる。
「やっ……んっ、やめ……」
もう片方の胸を、腰を支えていない左手が不埒ふらちにいたぶる。
上目遣いで様子を伺って、実に楽しそうな笑みを浮かべているのが、瞳だけでわかった。

その余裕のある表情にムッとして、手の力を抜いてやった。
スルリと抜け落ちたコップが、坂本くんの頭を直撃。
「いたっ!」
半分飲んでいたから水はこぼれなかった。

拘束が緩んだ隙に、コップを持ち直して寝具を手繰り寄せた。
しっかり胸まで引き上げると、坂本くんが成人男性にあるまじき可愛らしい拗ね顔で身を起こした。
「隠さなくてもいいのに」
バカなことを言わないで欲しい。
何回見られていても、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「このままもう1回したい」
拗ねた様子のまま、そんな無理難題を平気で言ってのける。
「……ダメ。もうちょっとしたら、シャワー浴びる」
そう言うと、坂本くんが不意に、にやりと片方の口の端をあげた。
「どうせ、またトロトロのぐちゃぐちゃになるよ」
「……今日はっ、もうしないっ!」
急いで半ば叫ぶように言うと、しばらく瞬きを繰り返した坂本くんが、意地悪じゃない満面の笑みを披露した。

「美夜ちゃん……『今日は』って言った?」
何に引っかかったのか、一瞬わからずに首をかしげる。
突然、坂本くんの裸の肩が近づいて、寝具ごとギュッて抱きしめられた。
「よかった……もう『2度と』しないって言われなくて」
耳元で安堵のため息まじりに言われて気づいた。
今日みたいにシテも、結局許しちゃうって宣言したようなものだと。
……仕方がない。
だって、好きなのも、また会いたいのも、体の隅々まで坂本くんで満たしたいのも、みんな私の方なんだもの。
だけど、安堵してるような坂本くんに。嬉しそうな坂本くんに。
必要とされているみたいで……うれしい。
恋って、だいぶ厄介らしい。

「また、えっちしようね」
『それなら今日は我慢するから』って言われて、本当は次があるってことに安心したのは私の方だってことを、坂本くんは知らない。
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