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フェンリルってすごい勇敢だと思う。恐らく勇者一行に親子で酷い目に遭わされて、命からがら『気まぐれ穴』から逃げてきたのに、いきなり目の前で天獄無作為流壱の突『閃光一閃顔面捻りメリ込みパーンチ☆』の光景を見ても怯えずに私に立ち向かってくるんだから。
猫パンチ程度の攻撃とはいえ、実力の差はその目でしっかりと確認出来たはずなのに。力の差が分かって戦いに挑むのは無謀と捉えてしまう人もいると思う。
でも私は違うと思うんだ。親も想う気持ちがこの子を立ち向かわせる勇気に変えてるはず。この子は勇敢なんだ!私も見習わなきゃ!
さあ、行くよ!憎き勇者の所へ!
このズタズタの指の恨みを勇気に変えて、あいつの爪一つ残さないほどの『閃光一閃顔面捻りメリ込みパーンチ☆』をプレゼントしてあげるんだから!
—————————
「ふう、指が全部無くなるかと思ったよ。ヒヤヒヤした。でもまた懐いてくれたね」
「良かったよ。勇者と戦えなくなる所だったよ」
「指がなくても突きは打てるけどね。しかも私、蹴り技の方が得意だし」
(恐ろしい子だ。彼女はこの実力をしてなにを目指しているんだ?今度の魔王総選挙に内緒で応募してしまおうかな)
「フェンリルちゃんは、お話は出来ないみたいだね。お母さんとお父さんの所に連れて行ってあげよ!悪い奴らは私がやっつけるから」
(……さっきは驚いて噛みついちゃったけど、もし喋れる事が知られたら黙っていた罰として、舌を抜かれてしまうかも知れないよ。ここは大人しく言うことを聞いた方がいいよね?)
なんて可愛らしいの。チワワの様に小刻みに震えてる!愛らしいとはまさにこの光景!眼福なり。
「じゃあ中に入ろうか。うわ、結構暗いな。クリス、灯りないの?」
「はい。どーぞ」
「どーも。本当にあんたが着いて来てくれて助かったよ」
「それなら良かったよ。戦闘の面に関しては朱里に任せっきりになりそうだからね。自分の得意分野をそれぞれ活かせばいいよね」
こいつ一切戦わないつもりだな。こんなにもか弱き乙女は中々いないぞ。
「あれ? 案内してくれるの? フェンリルちゃん」
「そうか!君の家はここだから『気まぐれ穴』の内部の変化パターン知っているのかも知れない!」
(早く家族の所へ行って助けを求めないと)
「それは頼りになるね。お願いね!フェンリルちゃん」
「朱里!魔石を集めるのも忘れないでね!」
「そうだ!すっかり忘れてたよ」
洞窟の中は魔石がキラキラと輝いていてイメージと違って幻想的だった。魔石を集めながら少しずつ進んでいたんだけど、途中クリスの持って来たツルハシが壊れたから私は手刀で採取を始めた。
「朱里、僕は目の前の光景が信じられないよ。相当硬いでしょ?それ魔石だよね?」
「そうだよ? え、間違ってるかな?」
(末恐ろしい、まだ低レベルなのに。そんな簡単におぼろ豆腐を掬う様に採れるものじゃないよ。フェンリルちゃんの頭でも撫でたものなら頭皮ごと全部持ってかれそうだな)
(え?この人って、いやそもそも人なの?私はあの凶器のような指に噛みついてしまったの!?お母さーん!私はこの悪魔に手刀で桂剥きされて、お刺身のツマにされてしまいそうだよ)
「五体全てを、ある時は鋭利な刃物に、そして全てを砕く槌の様に変えるのが私の師匠《マスター》の教えだからね。その気になればフェンリルちゃんの噛み付きも全然効かなかったと思うけど、それやっちゃうと犬歯全部ガタガタになっちゃうからね」
(怖すぎる。私この前犬歯が生え変わったばかりなのに差し歯になる所だったの!)
(やはり、僕の目に狂いはなかった。このキラリと光る異質な才能!。魔王総選挙のオーディションに選考書類を送るしかない!)
フェンリルちゃんはずっとプルプルしてて尊いなあ。ん?あそこで倒れてるのって?
「ねえ、あそこ!魔物達が倒れてる!」
「ほんとだ!おーい、大丈夫ですかー?」
「酷い。どうしたらこんなに酷い怪我を?」
「朱里、申し訳ないけど、河童さんの方がこれの倍は重症だったよ」
「あいつは大袈裟なんだよ、ちょっと押しただけで馬鹿みたいに海の上跳ねちゃってさ!河童なのに馬と鹿って、やばい思い出しちゃう。あ、あいつの、ふふ、皿の水が溢れて、ははは、け、痙攣する姿が担任の腹中黒先生に、あは、あははははははは」
(なんて乾いた笑い!朱里、いけない!それ以上、心を闇に堕とすと魔族になってしまうかも知れない!あ、でも魔王に推薦するから別に構わないか。一緒に笑っとけ)
あははははははははははは。
(怖ぁ。この悪魔達、高笑いしてるよ。きっと私はこの人に殺されるんだろう、でも諦めない!あの落とし穴のフロアまで案内すれば!)
「はー笑った、じゃなくて!あの人達治療してあげないと!」
「僕は村を出た時にケンタさんからポーション沢山貰ったよ!これを使ってあげよう!」
流石ケンタさん!頼りになる!
「フェンリルちゃん、手伝ってもらってもいい? まず皆を一ヶ所に集める!そしてこのポーションを三人で一斉にかけるんだよ!」
(この人達助けようとしてくれてるの!?もしかしていい人達なのかな?それなら私も手伝わなきゃ)
「よし、皆一箇所に集めたね!じゃあポーションかけるよ!」
どぼどぼどぼどぼどぼ。じゅーーーー。
「ぎゃっぎゃーーーーーーーーー!」
「な、なに!? ケンタさん間違えて毒薬渡したの!?」
(この人達って『気まぐれ穴』のアンデット盗賊団の一味?報復待ったなしだよ)
「な、なんて事だ!アンデット達だったのか!全員昇天しちゃったよ!」
『レベルが上がりました。スキルポイントを付与します。ご自由に振り分けてください』
(私のレベルまで!?)
「でも、これはこれで良かったのかもしれない。ここのアンデット達は瘴気にやられて凶暴化したアンデットだから悪さばかりするからね。ギルドにも討伐依頼沢山あったし」
「そ、そうなの?なんか悪い事した気分になるよ」
「勇者達が討ち漏らしたんだろうね。『気まぐれ穴』を運良く抜けたら、そのまま善良な魔物を襲う奴らだったら気にしないで平気さ」
ならいいの、かな? ま、いっか。
「ん? なんだろうこの音」
「え、えええええ!床に穴空いたぁ!」
「お、落とし穴だ!」
(えええ!落とし穴のフロアはまだ先だよー!?)
うわあああああぁぁぁぁぁぁ
私びっくり系苦手なんだよ!!
勇者絶対許さない!!(八つ当たり)
猫パンチ程度の攻撃とはいえ、実力の差はその目でしっかりと確認出来たはずなのに。力の差が分かって戦いに挑むのは無謀と捉えてしまう人もいると思う。
でも私は違うと思うんだ。親も想う気持ちがこの子を立ち向かわせる勇気に変えてるはず。この子は勇敢なんだ!私も見習わなきゃ!
さあ、行くよ!憎き勇者の所へ!
このズタズタの指の恨みを勇気に変えて、あいつの爪一つ残さないほどの『閃光一閃顔面捻りメリ込みパーンチ☆』をプレゼントしてあげるんだから!
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「ふう、指が全部無くなるかと思ったよ。ヒヤヒヤした。でもまた懐いてくれたね」
「良かったよ。勇者と戦えなくなる所だったよ」
「指がなくても突きは打てるけどね。しかも私、蹴り技の方が得意だし」
(恐ろしい子だ。彼女はこの実力をしてなにを目指しているんだ?今度の魔王総選挙に内緒で応募してしまおうかな)
「フェンリルちゃんは、お話は出来ないみたいだね。お母さんとお父さんの所に連れて行ってあげよ!悪い奴らは私がやっつけるから」
(……さっきは驚いて噛みついちゃったけど、もし喋れる事が知られたら黙っていた罰として、舌を抜かれてしまうかも知れないよ。ここは大人しく言うことを聞いた方がいいよね?)
なんて可愛らしいの。チワワの様に小刻みに震えてる!愛らしいとはまさにこの光景!眼福なり。
「じゃあ中に入ろうか。うわ、結構暗いな。クリス、灯りないの?」
「はい。どーぞ」
「どーも。本当にあんたが着いて来てくれて助かったよ」
「それなら良かったよ。戦闘の面に関しては朱里に任せっきりになりそうだからね。自分の得意分野をそれぞれ活かせばいいよね」
こいつ一切戦わないつもりだな。こんなにもか弱き乙女は中々いないぞ。
「あれ? 案内してくれるの? フェンリルちゃん」
「そうか!君の家はここだから『気まぐれ穴』の内部の変化パターン知っているのかも知れない!」
(早く家族の所へ行って助けを求めないと)
「それは頼りになるね。お願いね!フェンリルちゃん」
「朱里!魔石を集めるのも忘れないでね!」
「そうだ!すっかり忘れてたよ」
洞窟の中は魔石がキラキラと輝いていてイメージと違って幻想的だった。魔石を集めながら少しずつ進んでいたんだけど、途中クリスの持って来たツルハシが壊れたから私は手刀で採取を始めた。
「朱里、僕は目の前の光景が信じられないよ。相当硬いでしょ?それ魔石だよね?」
「そうだよ? え、間違ってるかな?」
(末恐ろしい、まだ低レベルなのに。そんな簡単におぼろ豆腐を掬う様に採れるものじゃないよ。フェンリルちゃんの頭でも撫でたものなら頭皮ごと全部持ってかれそうだな)
(え?この人って、いやそもそも人なの?私はあの凶器のような指に噛みついてしまったの!?お母さーん!私はこの悪魔に手刀で桂剥きされて、お刺身のツマにされてしまいそうだよ)
「五体全てを、ある時は鋭利な刃物に、そして全てを砕く槌の様に変えるのが私の師匠《マスター》の教えだからね。その気になればフェンリルちゃんの噛み付きも全然効かなかったと思うけど、それやっちゃうと犬歯全部ガタガタになっちゃうからね」
(怖すぎる。私この前犬歯が生え変わったばかりなのに差し歯になる所だったの!)
(やはり、僕の目に狂いはなかった。このキラリと光る異質な才能!。魔王総選挙のオーディションに選考書類を送るしかない!)
フェンリルちゃんはずっとプルプルしてて尊いなあ。ん?あそこで倒れてるのって?
「ねえ、あそこ!魔物達が倒れてる!」
「ほんとだ!おーい、大丈夫ですかー?」
「酷い。どうしたらこんなに酷い怪我を?」
「朱里、申し訳ないけど、河童さんの方がこれの倍は重症だったよ」
「あいつは大袈裟なんだよ、ちょっと押しただけで馬鹿みたいに海の上跳ねちゃってさ!河童なのに馬と鹿って、やばい思い出しちゃう。あ、あいつの、ふふ、皿の水が溢れて、ははは、け、痙攣する姿が担任の腹中黒先生に、あは、あははははははは」
(なんて乾いた笑い!朱里、いけない!それ以上、心を闇に堕とすと魔族になってしまうかも知れない!あ、でも魔王に推薦するから別に構わないか。一緒に笑っとけ)
あははははははははははは。
(怖ぁ。この悪魔達、高笑いしてるよ。きっと私はこの人に殺されるんだろう、でも諦めない!あの落とし穴のフロアまで案内すれば!)
「はー笑った、じゃなくて!あの人達治療してあげないと!」
「僕は村を出た時にケンタさんからポーション沢山貰ったよ!これを使ってあげよう!」
流石ケンタさん!頼りになる!
「フェンリルちゃん、手伝ってもらってもいい? まず皆を一ヶ所に集める!そしてこのポーションを三人で一斉にかけるんだよ!」
(この人達助けようとしてくれてるの!?もしかしていい人達なのかな?それなら私も手伝わなきゃ)
「よし、皆一箇所に集めたね!じゃあポーションかけるよ!」
どぼどぼどぼどぼどぼ。じゅーーーー。
「ぎゃっぎゃーーーーーーーーー!」
「な、なに!? ケンタさん間違えて毒薬渡したの!?」
(この人達って『気まぐれ穴』のアンデット盗賊団の一味?報復待ったなしだよ)
「な、なんて事だ!アンデット達だったのか!全員昇天しちゃったよ!」
『レベルが上がりました。スキルポイントを付与します。ご自由に振り分けてください』
(私のレベルまで!?)
「でも、これはこれで良かったのかもしれない。ここのアンデット達は瘴気にやられて凶暴化したアンデットだから悪さばかりするからね。ギルドにも討伐依頼沢山あったし」
「そ、そうなの?なんか悪い事した気分になるよ」
「勇者達が討ち漏らしたんだろうね。『気まぐれ穴』を運良く抜けたら、そのまま善良な魔物を襲う奴らだったら気にしないで平気さ」
ならいいの、かな? ま、いっか。
「ん? なんだろうこの音」
「え、えええええ!床に穴空いたぁ!」
「お、落とし穴だ!」
(えええ!落とし穴のフロアはまだ先だよー!?)
うわあああああぁぁぁぁぁぁ
私びっくり系苦手なんだよ!!
勇者絶対許さない!!(八つ当たり)
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