階段から転げ落ちたら知らないゲームの中だったので勇者を倒してサッサと帰りたいと思います。

uma

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お約束。

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 わわわわ!行き過ぎた、行き過ぎた!

 私が何をしてるかって?ここのパン屋さんがすんげえ美味いから自転車を走らせてたのさ!見りゃわかんだろ!

 あれ?あまりの急ブレーキにブレーキホースが千切れ、タイヤ痕からゴムの焼けた臭いと黒煙が上がってるよ!

 し、しかも両タイヤがパンクしちゃってるー!?

 あっちゃー。またお小遣い減っちゃうよー。

 でもやめられないよ。私はこうやって自転車で脚力を鍛えて、ここのパン屋さんの看板メニュー「食えるものなら食ってみろ!鉄より硬いフランスパン!」を食すのが鉄板コースなんだ。

 これで(ガキン)顎も(ゴリ)鍛えて(ガリガリ)今日も一日頑張ろう!(血まみれ)


        —————————

 
 「しかし朱里は足が早いね。もう街に着いてるかも」

 「ねえ、さっきな魔王オーディションの話。バレたら大変じゃない?」

 「……まあ、その時はその時で。上手く口車に乗せれば命だけは守れると思うよ」

 「私はちゃんと言った方がいいと思うけど」

 「大丈夫じゃない?朱里鈍いから」

 「おい」

 「この声は修羅、じゃなくて朱里! どこだ!?」

 (こわー。声が重くて冷たいよ)

 「少し小腹が空いたら木に登って胡桃を殻ごと貪り食ってたら聞こえたよ。なに? 魔王オーディションだあ?」

 (う、上だと?完璧に油断してた!)

 (すごい!首里ちゃんの気配で周りの鳥や動物達が逃げていく)

 「どうせ、そんな事だと思ったよ」

 (お、怒っていないだと!?)

 「今の話聞いて少し思ったんだけどさ、このままだと勇者に中々会えないでしょ?なっちゃおうかな、魔王」

 「意外にも前向きなんだね、朱里ちゃん」
  
 「確かに、朱里が魔王になれば勇者からこちらにやってくる! どうだい!? 先見の明があるだろう!」

 「何、自分の手柄にしようとしてんだよ。魔王ってオーディションなの? 実力主義じゃないんだ?」

 「そんな事ないよ。魔王には圧倒的な実力必要なんだ。あとは簡単な筆記試験かな。」

 「朱里ちゃんならいけるよ!」

 「さ、冗談はさておき街に戻って大勢を整えよ」

 「え? 冗談? そっか、そうだよね。急に魔王って言われても朱里ちゃん困っちゃうよね」

 (もしや)

 (……クリスちゃんが悪い顔してる)

 「朱里! 9×8は!?」

 「……馬鹿な事言ってないで行くよ」

 「どうしたんだい? 普通に生活していたら勉強していなくたって答えられるよ」

 くっ!まさか私が勉強を出来ないのを見抜いたの?こいつにだけはバレたくなかった。

 えーと。キュウカケルハチ?

 「ロ、ロクジュウニ?」

 (ゴクリ。こ、こりゃあ相当だぞ。予想以上の馬鹿だ)

 「さ、もういいでしょ! 行こ!」

 「朱里、今日から僕と毎日勉強しよう(常識を)。魔王オーディションの筆記はごく一般的な常識問題だ。一日に30分でもいい、まずは勉強を習慣にするんだ」

 は?親かこいつは?うちの親はそんな事言わないけど。なんでこんな訳の分からない生命体に一般的な常識を習わなきゃならないんだよ。

 「朱里ちゃん、頑張って! 私、朱里ちゃんに魔王になってほしいな」

 リルちゃん!そんな事言われたら!そんな可愛いお口でそんな事言われたら——

 「お任せあれ! こんなゲームの中の常識なんて私にかかれば、余裕のよっちゃんだよ!」

 (リルちゃんいると乗せやすくて助かる)

 「そうと決まれば宿に急いで戻ろう!」

 「これからの作戦も立てていかなきゃいけないしね!」

 オーディションに勉強とやる事が増えたけど頑張るしかないか。

 「探したぞ」

 (あれ?河童さん松葉杖取れてる!流石の耐久力だ!)

 (すっごいピンク。河童、なの?目がチカチカするよ)

 「ん? あれー? 河童じゃん! あはははははははは」

 「お前、俺を見て笑うまでの速度が半端じゃねえな。条件反射で笑ってんじゃねえか」

 「はー、おかし。どうしたの? ふふ」

 「お前に相撲を負けたのは例外として、あの戦士に借りを返さないと俺は気が済まない! 俺を連れてってくれないか!?」

 こいつ生臭いから連れて来たくないな。

 (河童さん生臭いんだよなー)

 (な、なんか臭いなあ)

 「頼む! この通り! 頭下げるから」

 「河童さん! こぼれてる! お皿の水がこぼれてるって!」

 「ええー! 大丈夫なの!? 痙攣すごいよ!」

 「お、お前それ、わざとだろ、あは、あはは! あははははははははははは」




 あー、笑った笑った!
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