階段から転げ落ちたら知らないゲームの中だったので勇者を倒してサッサと帰りたいと思います。

uma

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ハンカチ。

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 「実況者としては、テレビの前の皆様には正確な内容をお伝えしたいのですが、Bステージの光景に目を奪われてしまい、言葉が出ません。あまりにも圧倒的すぎる朱里選手。彼女は一体何者なのでしょうか?」

 「すごい、すごーい! がんばれー!」

 (いいぞ、いい感じだ。全ての者を蹂躙して、次のステージへと駆け上がるのだ!)

 「彼女も僕の秘蔵っ子でしてね。僕が育てた、と言っても過言ではありません。ふふふふふ」

 「なんと! リル選手に引き続き、彼女もまた田中さんの教え子なのですね!」

 「なのですが、ちょっと凄すぎますね。僕も言葉が見つからなくなってきました」

 (ん?これって昨日の特訓必要だった?……私、結構ドヤっちゃったよ。やばい、恥ずかしくなってきた)

 (今まで全て一撃で決めてたから分からなかったけど、改めて見ると朱里の反応速度が半端じゃない。うわ、また人が飛んでった)

 (すっご。今、雷の魔術を避けたよね?雷の魔術って避けれるものなの?最速の部類だよ)

 「おっと、果敢にも朱里選手に一人近づいて行きましたね」

 「朱里の暴れっぷりを目の当たりにして勝負を挑みに行くのは自信の表れなんでしょうね」

 「あ! 朱里ちゃん、危ない!」


 ———


 よーし。体も温まって来たし、どんどん行くぞー!

 だけど魔術師がまだ数人残ってるみたい。油断はしないようにしないと。

 「少し、目立ち過ぎじゃないの?」

 上から!?
 
 うわっととと、あっぶな。なにこの蹴り、地面が抉れた!?直撃したらやばかったかも。

 「って、え? この前のハンカチ貸してくれた子じゃん。一緒のグループだったんだね」

 今の蹴りをこの子が?やるじゃん。

 「早速会えたね。この前のハンカチはプレゼントしてあげる。ここで私にやられちゃうのに、参加賞が無いのは可哀想だしね」

 「へえ、随分と自信家なんだね。だけど参加だけで終わるつもりはないよ」

 この前と見た目が全然違う。羽根と尻尾?まるで悪魔みたい。

 なんか嫌だな。いかにも魔術使ってきそうな感じ。

 ここは……先手必勝!

 「朱里ちゃんオリジナル!奥義、河童爆散掌!」

 「っ! いったーい! こいつ、私の結界を素手で砕いた!?」

 うわぁ!弾かれた!?河童の事を水平線まで吹き飛ばした技なのに。この子、強いじゃん!

 「さっきから見てたけどその馬鹿みたいな火力、ちょっと反則じゃない? 悪いけど本気でいかせてもらうから。降参するなら今のうちだよ」

 おおっ、飛んだ。

 空、飛べるんだ。いいなぁ、私も羽根欲しいなぁ。

 「ずるいぞ! 降りて来い!」

 「アンタ、火力特化の武道家ってやつだよね? その感じだと魔術は使えないでしょ」

 御名答、戦闘経験も豊富そうだね。

 「率先して魔術師を狙ってたみたいだし、その様子だと図星かな? なら、わざわざアンタの距離に付き合う事はないね」

 んー、降りて来なそうだよ。どうしよう。

 「仮に近づく事ができても無駄。多重結界も貼らせてもらったから、え? いない!?」

 「上だよ! さっきのお返しだ! えい!」

 「う、うわあ!!」

 やば、やり過ぎたかも!大丈夫かな?

 「ひ、非常識すぎる。多重結界を破壊して、そのまま押し潰してくるなんて」

 「うわあ、タフだね。地面に叩きつけられてまだ意識があるんだ」

 「くっ、調子に乗って。その余裕もここまでよ!」

 「あ、あれ?」

 これも魔術?やばい、体が動かない!

 「アンタがどれだけ強くても動きを封じてしまえばただのサンドバック。残念だけどここまでだね」

 や、やばい、動けー!

 「はは、無駄だよ。対魔術の知識も無い奴に私の拘束魔術が破れる訳ご無い」

 うがー!!

 燃えあがれ!私の筋細胞!おっらぁー!

 「は? ちょっと待ってよ、デタラメすぎる。拘束魔術を強引に破ったっていうの?」

 「いたたた。思いっきり身体動かしたら筋肉痛みたいになっちゃったよ」

 「筋肉痛って。アンタ、何者?」

 「私? 魔法少女に憧れる、ただの女子高生だよ」

 ドッ!

 「かはっ」

 「ハンカチは返すね。血出ちゃってるから拭いた方がいいよ。それじゃあね」


 ———


 「あの人、強かったですね。朱里ちゃんが少しだけ手こずってた」

 (あの手の攻撃にはトコトン弱そうだからなぁ)

 「朱里選手、凄まじいですね。明らかに魔術によって動きを拘束されていたのに、強引に払い除けてしまいました」

 (精神系の魔術を純粋な力のみで解くなんて。それってもう、神の領域じゃないの? 凄すぎるよ)

 「しかし、相手の選手もかなりの強敵だったのではないのでしょうか? あの特徴的な羽根と尻尾は恐らくサキュバスの方ですよね?」

 「そうですね。サキュバスであそこまで攻撃的な個体も珍しいですが。変異種でしょうか? 朱里が手間取ったのも頷けますね」

 (ちょっと危なかったんじゃないの?朱里、油断しないでよね)

 「サキュバス選手の魔術はかなりのものだったと思います。しかも上空に飛び上がった朱里ちゃんに対し、即座に反応していました。身体能力もかなりのものなんでしょうね」

 「総当たり戦で観るのは勿体無いくらいの好カードでしたね。ん? また爆発音が聞こえますよ! この爆音はまた朱里選手が暴れ出したのでしょうか」

 「いや、今度はAステージから聞こえましたね」

 (あっちにも朱里と似たようなのが?)

 「リルさん、いかがでしょうか? 初戦から白熱していますが、この後の展開も非常に楽しみですね」

 「やはり魔王を決めるために集まってる人達だけあります。経験、レベル、共に目を見張るものがあります」

 (リ、リルちゃんが実況慣れしてきた。やばいぞ、このままだと僕がお払い箱になってしまう!)

 「皆さん悔いのない様に全力で戦って頂きたいですね」

 「あ、田中さん。すいません、CM入ってます」

 「……冗談ですよ」



 半分以上は減ってる筈だよね?

 隣のエリアから爆音も聞こえてきたし、まだまだ強敵はいそうだな!

 はは!楽しくなってきたかも!
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