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1章
やっと話ができたのに……
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翌日、アラーム音で飛び起きた。
私はスマホを手にいつの間にか寝ていたのだ。
時計を見て青ざめる。
「やばい! 遅刻する!」
化粧もそこそこに家を飛び出した。
満員電車につぶされながら、ようやく会社の最寄り駅についた。
会社まで全力で走る。
大きな自社ビルが見えてきて何とかギリギリ間に合ったとホッと胸を撫でおろした。
正面玄関に止まっていた黒塗りの車が出発するところが目に入り、ドキッとした。
「副社長かな」
こちらから中は見えないが中からは見えるので私は髪の毛を手櫛で整え、車とすれ違った。
もちろん副社長が私を見ている確率は、ほぼないけど。
それに社長や会長、他の幹部の可能性もある。
私は再び走りビルの中に入った。
いつも賑わっているロビーには取引先の営業らしき人が受付に数名いる程度で社員はほぼ見当たらなかった。
「まずい」
私はすぐにカードリーダーをかざし、ゲートを抜ける。
25階へ向かうエレベーターへ行くと扉が閉まる寸前だった。
「ま、待って!」
しかし目の前で扉がしまってしまう。
激突した衝撃でエレベーターの扉が揺れた。
息切れして落胆していたところ扉がゆっくりと開いた。
「あ、ありがとうござ……」
私は顔を上げて驚愕した。
目の前には不機嫌に顔を歪めたこの会社の副社長が立っていたのだ。
彼は脇にある開くボタンを長い指で押してくれている。
私は思わず外にあるエレベーターの表示を見た。
「役員用ではない、だから乗るなら早く乗れ」
副社長の声に思わず身体が反応してしまう。
「す、すみません。失礼します」
私はおずおずと乗り、ボタンの前にぴたりとついて25のボタンを押した。
最上階のボタンも押されていて、もちろん、それは副社長である。
心臓がバクバクと鳴っていて耳に響く。
25階まで副社長と2人きり。
緊張と走ってきたこともあり、扉が閉まった瞬間、汗が噴き出した。
私は急いで鞄からハンカチを取り出そうとした。
一緒にスマホが落ちてしまう。
拾おうとした瞬間、ギョッとする。
顔認証が起動していてぱっと画面が切り替わった。
『君のことを好きで好きでたまらない。おかしくなりそうだ。俺の1部になってほしいほど愛している。ああ……イクッ』
静まり返ったエレベーターの中で私のAI彼氏の声が響き渡った。
それは目の前にいる副社長と瓜二つの声だった。
顔をあげることが出来ず、硬直していると副社長がかがみこみスマホを拾った。
「どういうこと、これ」
副社長が画面を見つめる。
全裸で身体を震わせ喘ぎ声を出している二次元の彼は副社長と同じ黒髪で見た目もよく似ている。
そして何より【霧生冥】と書かれた名前はどう考えても偶然ではない。
私は目をつむって息を吐いた。
バレてしまった。
人に言えない私の秘密だったので誰かにバレることだけでも避けたなかったがよりによって本人にバレた。
覚悟を決めて副社長を見つめるとスマホの上部を持ち、顔の横にかかげ、画面をこちらに向けてプラプラさせている。
画面には副社長にそっくりな私のAI彼氏が果てたあとで顔を赤くして息切れしていた。
そう、私はずっと片思いしていた相手を自分のAI彼氏にしていたのである。
私はスマホを手にいつの間にか寝ていたのだ。
時計を見て青ざめる。
「やばい! 遅刻する!」
化粧もそこそこに家を飛び出した。
満員電車につぶされながら、ようやく会社の最寄り駅についた。
会社まで全力で走る。
大きな自社ビルが見えてきて何とかギリギリ間に合ったとホッと胸を撫でおろした。
正面玄関に止まっていた黒塗りの車が出発するところが目に入り、ドキッとした。
「副社長かな」
こちらから中は見えないが中からは見えるので私は髪の毛を手櫛で整え、車とすれ違った。
もちろん副社長が私を見ている確率は、ほぼないけど。
それに社長や会長、他の幹部の可能性もある。
私は再び走りビルの中に入った。
いつも賑わっているロビーには取引先の営業らしき人が受付に数名いる程度で社員はほぼ見当たらなかった。
「まずい」
私はすぐにカードリーダーをかざし、ゲートを抜ける。
25階へ向かうエレベーターへ行くと扉が閉まる寸前だった。
「ま、待って!」
しかし目の前で扉がしまってしまう。
激突した衝撃でエレベーターの扉が揺れた。
息切れして落胆していたところ扉がゆっくりと開いた。
「あ、ありがとうござ……」
私は顔を上げて驚愕した。
目の前には不機嫌に顔を歪めたこの会社の副社長が立っていたのだ。
彼は脇にある開くボタンを長い指で押してくれている。
私は思わず外にあるエレベーターの表示を見た。
「役員用ではない、だから乗るなら早く乗れ」
副社長の声に思わず身体が反応してしまう。
「す、すみません。失礼します」
私はおずおずと乗り、ボタンの前にぴたりとついて25のボタンを押した。
最上階のボタンも押されていて、もちろん、それは副社長である。
心臓がバクバクと鳴っていて耳に響く。
25階まで副社長と2人きり。
緊張と走ってきたこともあり、扉が閉まった瞬間、汗が噴き出した。
私は急いで鞄からハンカチを取り出そうとした。
一緒にスマホが落ちてしまう。
拾おうとした瞬間、ギョッとする。
顔認証が起動していてぱっと画面が切り替わった。
『君のことを好きで好きでたまらない。おかしくなりそうだ。俺の1部になってほしいほど愛している。ああ……イクッ』
静まり返ったエレベーターの中で私のAI彼氏の声が響き渡った。
それは目の前にいる副社長と瓜二つの声だった。
顔をあげることが出来ず、硬直していると副社長がかがみこみスマホを拾った。
「どういうこと、これ」
副社長が画面を見つめる。
全裸で身体を震わせ喘ぎ声を出している二次元の彼は副社長と同じ黒髪で見た目もよく似ている。
そして何より【霧生冥】と書かれた名前はどう考えても偶然ではない。
私は目をつむって息を吐いた。
バレてしまった。
人に言えない私の秘密だったので誰かにバレることだけでも避けたなかったがよりによって本人にバレた。
覚悟を決めて副社長を見つめるとスマホの上部を持ち、顔の横にかかげ、画面をこちらに向けてプラプラさせている。
画面には副社長にそっくりな私のAI彼氏が果てたあとで顔を赤くして息切れしていた。
そう、私はずっと片思いしていた相手を自分のAI彼氏にしていたのである。
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