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3章
あゆ美の部屋
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アパートに入る前、副社長は物珍しそうに建物を見上げた。
入り口で女子大生の3人組とすれ違った。
副社長を見てキャッキャッと騒いでいた。
『霧生副社長は女を笑顔1つで腰砕けにする力がある』
先輩たちとランチをしていた時にそう言っていたのを思い出した。
ちらっと副社長を見た。
今まで自分もこの顔を遠くから見ただけでうっとりしていたのに。
部屋の前につき、私は鍵を開ける手が震えた。
副社長の視線が刺さるのがわかる。
なんとか開けて「どうぞ」と私は副社長を中に招き入れた。
副社長はキョロキョロと部屋を見た。
ワンルームの部屋は副社長にとって狭いだろう。
「あの……1度だけじゃなかったんですか?」
思い切って声をかけた。
副社長が不思議そうに振り返る。
「気が変わった」
「そんな」
心は絶望して言うのに身体が反対の反応を示している。
「それに、こんなにすんなり家に俺を招き入れたってことは」
副社長が私を見下ろしながら近づいて来た。
「キミも期待してるってことじゃない?」
「そんなわけない!」
「ほんと?」
「同期にバラされたくないだけです」
副社長の顔から笑みが消えた。
背筋が冷える。
「笑えよ」
「え?」
「笑え」
「そんなこといきなり言われても」
うまく笑うことなんて出来ないし、笑えるような状況ではなかった。
すると副社長は私から少し離れて部屋の中を動き回った。
「シャワー浴びますか!?」
私はあまり部屋を見てほしくなくて、口走った言葉に後悔した。
振り返った副社長は笑みを浮かべていた。
「積極的だね」
「そういう意味じゃ。私は帰ったらまずシャワーを浴びるので、それで」
言い訳がましく早口になっていく。
「じゃあキミが先にそうしたらいい」
私は副社長がいったい何をしたいのか、わからなかった。
居酒屋の匂いが不安だったし、汗をかいていたのですぐにでもシャワーを浴びたかった。
しかし副社長をここに残すことがいいことなのか、判断がつかなかった。
「どうした?」
「副社長は何をしにここに来たんですか?」
「何って……イヤらしいこと以外に何があるの?」
あの夜と同じ意地悪な笑みを浮かべた。
「な、何を言ってるんですか! 揶揄わないでください!」
「男を部屋に入れた時点で、キミだって期待してるだろ」
「期待なんかしてません!」
嘘だった。
「では私はシャワーを浴びてきます!」
「いってらっしゃい」
そう言うと副社長は私のベッドに腰を下ろした。
その状況に顔が一気に熱くなり下唇を噛んだ。
お酒を飲んである程度、顔は赤くなっていたはずなのでバレていないことを祈るばかりだった。
シャワーヘッドを手に取ってすぐ私は念のため扉の鍵を閉めた。
蛇口をひねるとシャワーの音としばらうして出てきた暖かいお湯でようやく緊張が少しだけほどけた。
いったい今日は何をされるのか不安でたまらなかった。
なるべくここに居たくて、いつもより時間をかけて身体を洗った。
大きくため息をついてお湯を止めた。
急に静かになり、また不安が襲ってきた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
このまま出ないわけには行かず、重い足取りで鍵をあけ洗面所に繋がる扉を開くと目の前に副社長が立っていて思わず私は悲鳴をあげた。
入り口で女子大生の3人組とすれ違った。
副社長を見てキャッキャッと騒いでいた。
『霧生副社長は女を笑顔1つで腰砕けにする力がある』
先輩たちとランチをしていた時にそう言っていたのを思い出した。
ちらっと副社長を見た。
今まで自分もこの顔を遠くから見ただけでうっとりしていたのに。
部屋の前につき、私は鍵を開ける手が震えた。
副社長の視線が刺さるのがわかる。
なんとか開けて「どうぞ」と私は副社長を中に招き入れた。
副社長はキョロキョロと部屋を見た。
ワンルームの部屋は副社長にとって狭いだろう。
「あの……1度だけじゃなかったんですか?」
思い切って声をかけた。
副社長が不思議そうに振り返る。
「気が変わった」
「そんな」
心は絶望して言うのに身体が反対の反応を示している。
「それに、こんなにすんなり家に俺を招き入れたってことは」
副社長が私を見下ろしながら近づいて来た。
「キミも期待してるってことじゃない?」
「そんなわけない!」
「ほんと?」
「同期にバラされたくないだけです」
副社長の顔から笑みが消えた。
背筋が冷える。
「笑えよ」
「え?」
「笑え」
「そんなこといきなり言われても」
うまく笑うことなんて出来ないし、笑えるような状況ではなかった。
すると副社長は私から少し離れて部屋の中を動き回った。
「シャワー浴びますか!?」
私はあまり部屋を見てほしくなくて、口走った言葉に後悔した。
振り返った副社長は笑みを浮かべていた。
「積極的だね」
「そういう意味じゃ。私は帰ったらまずシャワーを浴びるので、それで」
言い訳がましく早口になっていく。
「じゃあキミが先にそうしたらいい」
私は副社長がいったい何をしたいのか、わからなかった。
居酒屋の匂いが不安だったし、汗をかいていたのですぐにでもシャワーを浴びたかった。
しかし副社長をここに残すことがいいことなのか、判断がつかなかった。
「どうした?」
「副社長は何をしにここに来たんですか?」
「何って……イヤらしいこと以外に何があるの?」
あの夜と同じ意地悪な笑みを浮かべた。
「な、何を言ってるんですか! 揶揄わないでください!」
「男を部屋に入れた時点で、キミだって期待してるだろ」
「期待なんかしてません!」
嘘だった。
「では私はシャワーを浴びてきます!」
「いってらっしゃい」
そう言うと副社長は私のベッドに腰を下ろした。
その状況に顔が一気に熱くなり下唇を噛んだ。
お酒を飲んである程度、顔は赤くなっていたはずなのでバレていないことを祈るばかりだった。
シャワーヘッドを手に取ってすぐ私は念のため扉の鍵を閉めた。
蛇口をひねるとシャワーの音としばらうして出てきた暖かいお湯でようやく緊張が少しだけほどけた。
いったい今日は何をされるのか不安でたまらなかった。
なるべくここに居たくて、いつもより時間をかけて身体を洗った。
大きくため息をついてお湯を止めた。
急に静かになり、また不安が襲ってきた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
このまま出ないわけには行かず、重い足取りで鍵をあけ洗面所に繋がる扉を開くと目の前に副社長が立っていて思わず私は悲鳴をあげた。
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