サキュバス村の色魔王 〜性欲を魔力へと変える力とスキル【賢者タイム】で無双してたら魔王扱いされたのでちょっと異世界征服してくる〜

虎戸リア

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魔霧の森の賢者

12話「歓迎祭」

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「賢者様の帰還よ!」
「きゃあああああああ!!」
「さっさと準備終わらせるわよ!」

 俺達が村に戻ると、既に村はお祭りムードだった。
 屋台は出ているし、村の中央広場には宴会スペースが出来ている。
 どうやら歓迎祭? の準備を防衛に出なかった村人達で密かに行っていたようだ。にしては手際が良すぎる。

 見ると中央広場の奥にある一段上がった場所には席が設けられていた。

 俺の部屋にあったはずのあの玉座も置かれている。
 どう見てもあそこに座れって事だよなあ……。

 玉座、近くでよく見ればなぜか尻の部分に穴が開いている。
 ……きききっと、通気性を良くする為だな!

 そのスケベ玉座の横には普通の椅子があり、どうもそれがリシアの席のようだ。

「あーリシア、第3なんとかとかいう立場なんだろ? あれに座っていいぜ、特別に」

 俺が横にいるリシアにさりげなく玉座を譲ろうとするが、

「絶対嫌。というかそこに座ったら私殺されそうだが?」

 リシアはそう言って背後を指差した。見ると、後ろでメリッサが笑顔を浮かべながらも剣の柄へと手を滑らせている。
 おっかないな!

「どうぞ、祭りの準備が整うまでこちらでゆっくりなさってください」
「お、おう」

 俺は結局渋々玉座に座った。意外と座り心地は悪くなかった。

「テンガは本当にここの賢者なんだな」
「らしいね。俺も正直把握出来ていない事の方が多い。そっちも色々と混乱してそうだが、安心しろ俺の方が何がなにやらさっぱりわからん」
「……私は……!」

 リシアが必死そうな表情で何かを言おうとしたので、俺は首を振った。

「せっかく、メリッサ達が歓迎しようとしてくれているんだ。そういう話は後でいいと思うぞ」
「……私は招かざる客だ」
「席が用意されている時点でリシアも客だ。胸張っとけ」
「っ! 胸はまだ大きくなる! いらぬ世話だ!」
「は?」

 頬を朱色に染めて、拗ねたようにそっぽを向くリシア。
 言っとくが俺はおっぱい成人だが、サイズで差別はしないぞ? 好みはそりゃデカい方だけど……。
 何やら胸を張るという言葉を変に勘違いされているみたいだが、まあちょっとは元気が出たみたいだしいいだろう。

 帰ってくる途中、リシアはずっと暗い顔してたしな。

「テンガさまっ! これ、おのみものですっ! たいくつしないようにってメリッサさんからもっていけといわれました!」

 とてとてと、可愛らしいサキュバスの幼女が目を輝かせながら持ってきたのは、無色透明の液体が入った木製の小さな杯だった。

「ありがとうね。これはなにかな?」

 幼女がそれを俺とリシアに配ると、何の躊躇いもなく俺の膝の上へと座った。
 初対面なのにナチュラルにこちらに懐いていることに未だに慣れない。まあこんな幼女なら可愛いなあで済むのだけど……。

「これはきりしゅです! まぎり? をまりょくではっこーさせたやつですよ!」
「……私も初めて見た酒だ。霧酒、か」
「つうかリシアは未成年じゃないのか?」
「っ!! 無礼者! 私は立派な成人だ!」

 顔を真っ赤にして怒るリシア。どうやら成人の概念がこの世界では違うみたいだ。

「12さいになったらおさけのんでいいんですよテンガさま。れでぃーをみせいねんあつかいしたら、めっ! です!」
「そうなのか……知らなかったとはいえすまんかった」

 幼女にフォローされたので、素直に頭を下げておく。

「テンガは……どこから来たのだ? このディール大陸では常識だぞ?」
「遠い場所だよ。まあ、仲直りの乾杯といこうじゃないか」
「う、うむ」

 俺は杯をリシアの方へと伸ばす。彼女は、そっと俺の杯へと自分の物を触れさせた。

 俺はそれを口元にもっていくと、何ともいえない香りが鼻をくすぐる。日本酒やワインとも違う、フランスかどこかの薬草酒に近いようなハーブの匂い。

 俺は一口それを飲む。香りと同じ、甘くそして薬草っぽい味がする。

「美味い……けどきっついな!」

 喉が焼けそうだ。

「そうか? かなり度数は低いと思うが……確かに美酒だ」
「……この世界の酒こええ」

 リシアは平然と飲んでいる。

「日本男児として負けてられん!」

 俺は一気に杯を煽った。これでも酒は結構強い方だ。

「ニッポンダンジとはなんだ? テンガの部族の名か?」
「みたいなもんだ!」
「おかわりもってくる!」

 そう言って、幼女が膝から降りて、とてとてとおかわりを取りにいった。

「ほお、見かけによらず酒はいけるクチか? まあ私には敵わないだろうが」
「言うじゃねえかバニーちゃん。飲みサーを荒らしまくった俺っちの鯨飲についてこられるかな?」
「バニーではなくリシアだ」
「俺に負けたら一生俺のバニーちゃんになってもらうぜ!」
「ほお……いい度胸だ。かかってこい」

 なんて言ってリシアと飲みまくっているうちに、辺りが暗くなってきた。

「テンガ様、お楽しみのところすみません。歓迎祭の準備が整いましたのではじめてもよろしいでしょうか?
「かまへんかまへん! やったれ!」
「ええい、酒が足らんぞ!」

 俺もリシアも既にへべれけだった。

「では……これより【第345回酒池肉林葉っぱキメてハメハメ大王祭】を開催し——」
「あははははは! ハメハメ大王ってなぁに? テンガ答えよ! あはははは!」

 酔ったリシアが真っ赤な顔で爆笑している。俺が知るか!

「うるせえ! ええいメリッサよ、その頭悪いネーミングセンスはどうせ歴代賢者共のだろうが、名前変えよう」
「はっ! どう致しましょうか?」
「……【賢者降臨祭】でいいよ」
「……」

 あれ、ダメ? センスない行政感出し過ぎた!?

「……素晴らしい……素晴らしいですテンガ様! シンプルかつ分かりやすい名称です!」
「お、おう」
「ええー私はハメハメ大王の方が良いと思うぞ?」

 笑顔でそういうリシアをメリッサが睨む。

「貴様は黙ってろ」
「ごめんなさい……」

 どうやら既に力関係が出来ているようだ。

 そして祭ははじまり、俺は村人一人一人から挨拶とセクハラを受けまくったのであった。
 南無。

☆☆☆

 夜が更けても祭りは続いた。サキュバス達は皆どうやらザルのようだ。
 いい加減酔って眠くなってきたので、俺は部屋に戻る事にした。なぜかリシアが俺の腕を離さない。

「あーリシアさん? 俺は寝ますよ? 寝床はメリッサさんが用意したらしいからそっちだろ」
「や! 今日は一緒に寝るっ!」
「は? 何を言っているんだ」
「やーあ! テンガと寝る!」

 急に幼児退行したリシアの赤ら顔を見て、断れる男がいるだろうか、いやいない。
 まあ手を出すわけにはいかないのだがな。

 部屋に戻ると、リシアはバニースーツを着たまま俺のベッドへとダイブした。
 そのまますやすやと寝息を立てて眠りについた。

「やれやれ……俺は床で寝るか……」
『流石テンガ様。寝込みを襲おうものなら、リリスビームで焼き殺すところでした』
「あれ、リリスビームって言うのか……」
『他にもリリスブレードやらリリスキャノンやら色々あります』
「さよか……さていい加減眠いから寝るぞ。今日は……色々……ありすぎた……」

 予備の毛布にくるまって、俺はベッドの横の床で横になった。
 不思議なのだが、この世界の木は妙に身体にフィットするというか、凄く寝心地が良い。

『特別サービスで、色々弄ってますゆえに。アルコールも分解しときます』
「神かよ……」

 どうやらリリスが色々してくれているようだ。案外手厚いサービスを提供してくれるなこいつ。

 睡魔に俺は身を委ね……眠りについた。


 それからどれぐらい経っただろうか。一時間は寝た気がするし、まだ数分しか経っていないようにも感じた。

 俺は何か予感めいた物を感じて、目を覚ました。

 酔いは既に抜けていた。リリスのおかげだろう。

「……起きてる?」
「ああ……」

 どうやらリシアも起きたようだ。

「少し話、しても良い?」
「いいぞ。結局色々聞けなかったしな」

 こうして俺達は横になりながら、真夜中の会話をはじめたのだった。
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