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【VerΑ編第3章〜大竜星祭】
67話「暴虐の女王Ⅱ」
しおりを挟む「どうしたの? なんだか心こにあらずって感じ。集中せずに勝てるとでも?」
偽アキコそう言いながらまた連撃を寸分違わず同じ動きで再現している。
戦闘用AIアシスト。それは1対1では効果を発揮するものの、状況判断能力が乏しく、よほどで無い限り使っていない方が勝てる。あくまでも最初の助けとなるだけの初心者用の機能だ。
偽アキコの動きは違う。明らかに人の限界を超えた動きかつ、臨機応変に対応している。
「んー分かりかけたけどわかんない!」
私は、試しにスキルを発動してみた。
斧槍スキルである【回転戟】 赤く発光した私が斧槍を持って回転しながら全周囲を薙ぎ払う。
偽アキコはここで初めてバックステップで間合いを取った。
スキルはパリィ不可で、弾く事も出来ない。つまり回避かガードの二択。
「スキルは使わないの? パリィは? そんなに攻撃を見切れるならパリィすればすぐに勝負は終わるのに」
「……したらすぐに終わっちゃう。それじゃあ勿体ない」
「そう」
私は斧槍を短く持ってリーチを短くする代わりに、取り回しを重視した構えに移行する。
「ふふふ、ようやく良い顔になって来たよ……アキコ」
「アキコはそっちでしょ!」
ギリギリ反応しきれる速度で、偽アキコがまたあの連撃をまるで機械のように放つ。
しかし、何度も見たせいで、私は既にその動きを見切れるようになっていた。
「ここ!」
連撃最後の大振り。ここに私は攻撃を合わせるように斧槍を払う。
対人戦におけるパリィの成功率はおおよそ10%前後と言われている、らしい(ミリー曰く)
フレーム単位での判定で、かなりシビアなようだ。Verβの感覚でやっても中々難しいし、そもそも同じような動きを繰り返してくる相手に練習して、やっと実戦で使えるレベルなのだ。
対人戦では、戦う場所、相手の状態、状況で動きが変わってくるのでほぼ勘でやらざるを得ない。軽い攻撃ならいいけど、そうじゃないのなら失敗した時のリスクが大きい。
だけど、偽アキコは全く同じ動きも何度も何度も放ってきていた。
まるで……パリィしろとでも言わんばかりに。
「じゃあ遠慮無く!」
私の斧槍が偽アキコの攻撃に当たった瞬間、黄色のエフェクトと、パリィ成功時の効果音が鳴った。偽アキコに赤いターゲットマーカーが表示された。私はそこに向かって、斧槍を突き立てた。
ドゥーンという音と共に致命撃が偽アキコに入り、彼女のHPが大きく削られた。
とはいえ、それでも4割程度である。大体のプレイヤーなら一撃で倒せる攻撃力なんだけどなあ。
「硬いのかHPが高いのか……」
致命撃で吹き飛んだ偽アキコが起き上がる。その顔にはぞっとするような笑みが浮かんでいた。
「いいね……いい。凄くいい。素晴らしい! 天性の物よそれは! いくら見切れてもパリィを仕掛けてしかも成功させるなんて! やっぱりアキコ……貴女は素晴らしい!」
急にテンション上がった偽アキコ。ちょっと……いやだいぶ怖い。
「もっと遊ぼう!」
そう叫ぶ偽アキコだけど、私はバックステップ。
風を切る音と共に爆弾が落ちてくる。
アキコはまるでどこに落ちてどこまで爆発の範囲かまるで分かっているかのように平然と爆弾の雨を突っ切ってくる。
そんなの、勘が良いとか、観察力があるとかだけで説明できる芸当じゃない。
明らかに異常だ。
だけど、それが何か分からないし、分かったところで対処出来る物かどうかも分からない。
分からない事ばかりだ。
「あはは……そういえばVerβの時もそうだったなあ」
あの時は、何も分からず戦っていた。楽しかった。
記憶の中でスピちゃんが、なんだか私を勇気づけてくれている気がした。
私は獣化ゲージを見る。まだ半分ぐらいしか溜まっていない。降ってくる爆弾とHPゲージを確認する。
「なんか、ちょっと最近楽しんでなかったかもなあ……よし! みんな! ごめん!!」
私がそう通信でみんなに謝ると、ポーションを取り出した。
HPが全回復する。
そして私はまっすぐ偽アキコへと走っていった。
上を見上げると、爆弾が目の前へと迫る。
「まさか……あはははははははは!!! やっぱり貴女は! 最高に最高だ!!!!」
狂気の笑いを浮かべながら偽アキコが同じようにポーションを使ってHPを回復させながら私へと飛び込んでくる。
「ラノア!!」
それがミリーの叫びなのか、蔵人さんの声なのか、それともユーナちゃんの言葉なのか分からなかった。
爆発が、私と偽アキコを襲った。
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