とあるJKの青春日記

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
1 / 7

①「くしゃみ」

しおりを挟む
・登場人物

 泡切 優音あわぎり ゆうね:一年A組。

 井出島 七香いでじま ななか:一年A組。

 宇野宮 春陽うのみや はるひ:一年A組。



ーーーーー



 温かで心地よい風が吹く、4月中旬。とある高校の一年A組の教室内では、生徒たちの楽しげな声が響き渡っている。高校で新しくできた友達と、中学からの仲が良い友達と、各自でグループを作り机をくっつけあい、お昼の時間を楽しんでいる。
窓際の席に座る女子ーーー井出島 七香いでじま ななか宇野宮 春陽うのみや はるひは、お昼を食べ終え、ペラペラと楽しげに一方的に話す泡切 優音あわぎり ゆうねの話をスマホ片手に聞いている。
ペラペラペラペラと、止まる様子もなく話し続ける泡切だったが、唐突にピタリと言葉を止め、三人の間に沈黙が流れ始める。


宇野宮「おい、どうした?」

泡切「は、は、は...はっっくしゅっっん!!! あーちくしょぉ...。」

宇野宮「お前、くしゃみ豪快すぎだろ。」

井出島「女を捨ててた。」

泡切「ななぴー、女を捨ててるは言い過ぎじゃない?」

井出島「いやいや、捨ててたよ。しかも、くしゃみした後に「あーちくしょぉ...。」とか言ってたし、この世の終わりだよ。」

泡切「だから言い過ぎだって。くしゃみした後って、なんか言いたくならない?」

井出島「ならない。」

宇野宮「お前、微妙に可愛いんだからさ。くしゃみくらい可愛くしたら?」

泡切「おい、微妙にってなんだ、微妙にって!! 褒められてるんだろうけど、褒められてる気がしないんだけど!?」

井出島「とてもいい表現だと思う。だって、めちゃくちゃ可愛いかって言われたら、首を縦に振れないもん。」

宇野宮「うんうん。」

泡切「はいぃぃぃ!? ケンカ売ってます!? 売ってますよね!? なんでくしゃみしただけで、こんなにディスられなきゃいかんのだ!?」

井出島「落ち着いて。可愛くないとは言ってないから。」

宇野宮「あんたさ、もう少し落ち着きなよ。七香ななかみたいに。」

井出島「ゆうねっちも、マイペースに生きよ~。」

泡切「いや、これは落ち着きすぎでは?」

井出島「いやいや、世はこれくらいのマイペースなのんびり女の子を求めているのだよ。ほら、漫画やアニメでも必ず一人はこんなキャラいるでしょ? 人気あるでしょ? つまり私は、需要ありまくり人間なのだ。」

宇野宮「なに言ってんだ、お前は?」

泡切「ななぴーは、可愛いくしゃみしそうだよね~。「くちゅん♡」みたいな?」

井出島「いやいや、もっと可愛いよ。」

泡切「マジかよ!? ななぴーのくしゃみ、めちゃ楽しみなんだけど!!」

井出島「ハルっちは、どんなくしゃみするの?」

宇野宮「どんなって、普通だよ普通。」

泡切「うわぁ~普通のくしゃみとか、おもしろくなっ!」

宇野宮「くしゃみに面白さを求めるな。つーか、くしゃみなんて急に出るもんなんだから、どうこうできるもんじゃないでしょ。」

泡切「まぁ、確かに。くしゃみが来るって予知できたら「はっくちゅん♡」みたいなのするもんね。」

宇野宮「可愛さを求めすぎてキモい。」

泡切「キモいは言い過ぎでしょ、キモいは! はるぴーさっきから酷くな...なっ...ナイチンゲェェェルッ!! あーどっこらせぇい...。」

宇野宮「今のでよくわかった。あんたは、可愛いくしゃみとは無縁の女だ。」

井出島「女というか、おっさんだよね。」

泡切「誰がおっさんだ、こら! こちとら、まだ現役のJKじゃい!!」

井出島「いやいや、JKはナイチンゲールとかわけのわからないくしゃみはしないか...かっ...からぶぇぇいぃ!!」

宇野宮「七香、お前も豪快タイプだぞ。」

泡切「ぎゃははは!! ななぴー可愛さの欠片もないんですけどぉ~! 可愛い要素一ミリもないんですけど~!!」

井出島「ちくしょう、油断していた...。すみません、リテイクお願いします。」

泡切「やれやれ、仕方ないねぇ~。んじゃ、いくよー! よーい...アクションッ!!」

井出島「いやいや、JKはナイチンゲールとかわけのわからないくしゃみはしないか...く、くちゅんっ♡ うぅ...。」

泡切「かわいぃ~♡ くしゃみの後に「うぅ...。」とか言っちゃうところ、可愛さの塊~!」

井出島「まぁ、こんなもんですよ。」

宇野宮「一発目のくしゃみは、なかったことにできねぇぞ?」

泡切「あーあ、ななぴーも豪快タイプだし、こりゃはるぴーも豪快タイプだなぁ。」

井出島「ハルっちはクールでかっこいい系だから、豪快タイプの方が似合う気がする。」

宇野宮「どんな女も豪快なくしゃみは似合わねぇよ。」

泡切「ねぇ、はるぴー。」

宇野宮「なに?」

泡切「くしゃみして。」

宇野宮「言われてできるもんじゃねぇ。」

井出島「やれやれ、こんな時は私の出番ですよ。」

泡切「ななぴー!? 一体なにをする気だい!?」

井出島「知っているかい? マイペースなのんびりキャラって、不思議な力が使えるんだよ。」

泡切「な、なんだってぇぇ!?」

宇野宮「使えるわけないでしょ。」

井出島「今から、ハルっちにくしゃみをさせましょう。ハルっち、私を見つめて。」

宇野宮「いや、見つめてでるわけーーー」

井出島「じーーー。」

宇野宮「......。」

井出島「じーーー。」

宇野宮「......は、はっ...!」

泡切「おぉ!? マジかよ!?」

宇野宮「はっ......しゅん。あーホントにでた。七香、すごいな。」

泡切「......。」

井出島「......!?」

宇野宮「え? な、なに...?」

泡切「は? クールでかっこいい系なのに、くしゃみは静かで可愛いとか...なに、それ? なに、その高低差? 寒すぎて引くわぁ...。」

宇野宮「なんでくしゃみしただけで引かれなきゃいけないんだよ!?」

井出島「そ、そんなぁ...! 一発で静かな可愛いくしゃみができるなんて...! ま、負けた...!」

宇野宮「あんたは、なんの勝負してんだ!?」

泡切「なんか裏切られた気分だわー。自分だけ可愛いくしゃみしてさー。私たちがくしゃみしてた時、あんたは心の中で嘲笑っていたわけだ? うわー。」

井出島「クールなかっこいい系が可愛いくしゃみ...何というギャップ...! なんて強キャラだ...! わ、私の人気がぁ...!」

宇野宮「ただのくしゃみだろうがぁぁ!!」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ホロボロイド

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

梓山神社のみこ

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

憂鬱喫茶

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

メロカリで買ってみた

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:10

ラグナロク・ノア

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...