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四人台本↓
「Revive」(比率:男3・女1)約35分
しおりを挟む・登場人物
ワン:♂ 26歳。死なない能力を持つ人間。名前は捨てたと言って教えてくれないので、ワンと呼ばれている。
ニプロ・レッシュ:♂ 26歳。対特殊犯罪課に所属する男。触れたものの能力を無効化する力を持っている。
ピアータ・キングズ:♂ 48歳。対特殊犯罪課に所属する男。そこそこえらい。
ノア・リアム:♀ 22歳。金色のロングの髪が美しい女性。対特殊犯罪課の新人。
ペパー・イーサン:♂33歳。金髪の女性をターゲットに殺しをしている犯罪者。
・役表
ニプロ:♂
ワン:♂
ノア、女:♀
ペパー、キングズ:♂
*所要時間:約35分
ーーーーー
深夜のとある路地裏。金髪ロングの女が、慌てた様子で息を切らし、何かから逃げている。
女「はぁ、はぁ、はぁ...! も、もういないわよね...?」
女「もう、なんなのよ...なんなのよぉ...! 一体なんなのよ、あいつは...! どうして...どうして、私にしか見えてないの...?」
ペパー「どうしてだと思います?」
女「え...?」
女の背後に突然現れた男ーーーペパー・イーサンは、スタンガンを女の腰あたりにあてる。
女「あがぁぁ!?」
ペパー「すみませんね。騒がれると困りますので...少しの間、寝ていてください。」
ペパーはしゃがみ込み、倒れた女の髪へと手を伸ばす。
ペパー「素晴らしい...とても綺麗だ...。月夜の下で輝く、金色の髪...。僕の視線を、心を奪っていく、美しい金の髪...。あぁ...美しい...美しいよ...。」
ペパー「んふふふ...あははは...! 本当に綺麗だ...ずっと見ていられるよ...。愛してるよ、僕は君を愛しているんだ...。愛しているから...だから...。」
ペパーは、懐からハサミを取り出す。
ペパー「今すぐに、切り刻んであげる...。」
とあるマンションの一室。リビングの机一杯に資料が並べられており、ニプロ・レッシュは難しい顔でそれらを見つめている。
ワンは、ソファーに深々と腰掛け、のんびりとテレビを視聴している。隣に置かれた小さなテーブルの上のカップを手にし、口に運ぼうとするが、中身が空なことに気づく。
ワン「んぁ? おい坊ちゃん、飲みもんが無くなった。」
ニプロ「......。」
ワン「おい、聞いてんのか?」
ニプロ「......。」
ワン「耳、ついてる? もしくは、耳の中でクソの塊が通せんぼしてんの?」
ニプロ「......。」
ワン「おい、クソ野郎のうんこマン。」
ニプロ「次、その名前で呼んだら殺すからな。」
ワン「耳クソ開通おめでとう。開通記念のプレゼントだ、これにコーヒー注いできて。」
ニプロ「自分でやれ。」
ワン「キッチン汚すから二度と入るなって言ったのはお前だろ? なに、汚してもいいの?」
ニプロ「はぁ...。」
ニプロは嫌々立ち上がると、ワンからカップを受け取りキッチンへと歩んでいく。
ワン「あーあ、なんで俺はこんなクソ野郎と一緒に住んでいるのやら?」
ニプロ「それはこっちのセリフだ。」
ワン「ってか、坊ちゃんはさっきから何見てんの? 仕事の資料です? まぁ、大変だこと。」
ニプロ「おい、勝手に触るな。」
ワン「えっと、なになに...? ワァーオ、めちゃくちゃ美人なネェちゃんじゃん。これ、坊ちゃんの彼女?」
ニプロ「違う。」
ワン「だよね。彼女だったら、嫉妬で撃ち殺してるわ。ん~いいねぇ~顔は100点。あとは身体、特に胸だな。このネェちゃんの顔以外の写真はないの?」
ニプロ「お前には見せん。」
ワン「意地悪すんなって。まぁでも、見たところでこの子はもういないんだろ?」
ニプロ「あぁ。昨日の夜に殺された。」
ワン「かぁ~! これだから、神様ってのは信じられねぇ。なんでこんな可愛い子ちゃんを殺して、あそこにいるいけすかねぇ男は生かしておくんだ?」
ニプロ「お前みたいな人間が生きていることも、疑問だな。」
ワン「俺は神より、すんごい男だから。疑問解決、おめでとう。んで、この子金髪ってことは...例の事件か?」
ニプロ「そうだ。今朝、バレンバーグ市の路地裏で発見された。他の被害者と同じく、髪を切り裂かれていたそうだ。」
ワン「金髪美人ばっかり狙って...いい趣味してるよ、ホント。このままほっとけば、世界中の金髪美人がいなくなっちまうな。」
ニプロ「先月は6人。今月は12人も殺している。早く犯人を捕まえないと、お前の言った通りになるな。」
ワン「犯人の目星はついてんのか?」
ニプロ「怪しい奴は、数人上がっている。」
ワン「その中で、とびきり怪しい奴は?」
ニプロ「右の資料。」
ワン「右? どれどれ...ペパー・イーサン、こいつか?」
ニプロ「33歳の元会社員だ。」
ワン「元?」
ニプロ「あぁ。三ヶ月ほど前、連絡も無しに消えたらしい。おまけに、会社から消える数週間前まで付き合っていた彼女が、金髪の女だったそうだ。」
ワン「もうそれ、犯人じゃん。事件解決おめでとう。んで、こいつはどこにいんの?」
ニプロ「どこにいるのかわかっていたら、金髪美人たちは今頃、楽しげに外を歩いているさ。」
ワン「どこにいるのかわかんねぇのか?」
ニプロ「生きているのかも、な。会社から消えて以降、目撃情報が全くない。」
ワン「ふーん。つまり、ペパー・イーサンは、すでに死んでいる。もしくは、対特殊犯罪課の連中を欺ける、すんごい犯罪者、ってことか。」
ニプロ「後者でないことを願っているが、間違いなく後者だろうな。」
ワン「でもこいつ、資料を見る限り、無能力者なんだろ? そんな一般人が、対特殊犯罪課の連中から逃げられるとは思えねぇけどなぁ? 坊ちゃんはそこんところ、どう思ってんの?」
ニプロ「前から思っていたが、その坊ちゃんって呼び方はなんなんだ?」
ワン「お前、ボンボン金持ちのお坊ちゃんみたいな顔してるから。」
ニプロ「黙れ、犯罪者顔。」
ワン「元な、元。今は一般人顔よ。」
リビングの扉が、ガチャリと開く。
キングズ「レッシュ、いるか?」
ワン「おっ、キングのおっさんじゃん! 元気してた~?」
キングズ「お前は相変わらずだな、ワン。」
ニプロ「あの、キングズさん...来るのは構いませんが、一言連絡をしてから来てくれませんか?」
ワン「おっさんはお呼びじゃないとよ。ぎゃははは!」
キングズ「お前は細かいことを気にしすぎだぞ、レッシュ。それに、俺たちの仲じゃないか?」
ニプロ「部下と上司という関係ですよ。それで、どうしたんですか? わざわざこちらに顔を出すほどの要件ですか?」
ワン「厄介ごとなら、持ち帰れよ~。俺は忙しいんだからな。」
ニプロ「お前は何もしてないだろうが。」
ワン「お前もな。さっさとコーヒー持ってこいよ。」
キングズ「ニプロはともかく、ワンは喜ぶだろうと思ってきたんだが...歓迎されてないようなら、このまま帰るか。」
ワン「おっ? なになに? 俺様が喜ぶことって、もしかして女?」
キングズ「入ってこい。」
キングズに呼ばれ、部屋に入ってきたのは、金色の長い髪が美しい女性ーーーノア・リアムは、ビシッとワンたちに敬礼する。
ノア「こんにちは、初めまして! 私、本日から対特殊犯罪課でお世話になります。ノア・リアムと申します!」
ワン「ワァーオ! いい女じゃん! 顔、身体、胸、100点満点! ちなみに歳は?」
ノア「22歳です! よろしくお願いします!」
ワン「オーケーオーケー! 君は120点だ。合格おめでとう。」
ニプロ「......。」
キングズ「どうした、レッシュ? お前は喜ばないのか?」
ワン「おい、てめぇ? こんな可愛い子ちゃんを見て、なにも感じないのか? 男として死んでんな、お前は。とっととそのお粗末なもんをちょん切れ。」
ニプロ「喜べるわけないでしょ。キングズさん...あなた、厄介ごと押し付けようとしているでしょ?」
キングズ「はっはっは! さすがレッシュ、勘がいい男はモテるぞ。」
ワン「はいぃ? こいつがモテる? クッセェ冗談はやめろよ、キングのおっさん。臭すぎて吐くわ。」
ノア「というか、厄介ごととは? キングズさん、一体何をーーー」
キングズ「詳しいことは、あそこにいるレッシュに聞け。じゃあな、頑張れよ。」
ノア「え? あっ、ちょっ!? キングズさん!?」
ニプロ「はぁ...。」
ワン「んで、なんなの? 厄介ごとって、なに? あの子、可愛い以外になんかあんの?」
ニプロ「お前、今まで何を見てたんだ?」
ワン「何って、金髪事件の資料。」
ニプロ「あの子の髪色は?」
ワン「金髪。...あぁ、そういうこと?」
ノア「あ、あの...どういうことですか?」
ニプロ「君、金髪事件のことは知っているな?」
ノア「あ、は、はい。」
ニプロ「話を先延ばしにするのは嫌いだから、サクッと言わせてもらうぞ。君は、金髪事件の犯人を釣り出すエサとしてここに呼ばれたんだ。」
ノア「...え?」
ワン「ノアちゃん、なにも聞いてないの?」
ノア「な、なにも聞いてませんよ! キングズさんに「とりあえずついて来い」って言われて、ただついてきただけです! それなのに...あぁ、初日からなんでこんな...!」
ニプロ「とりあえず、適当に座れ。僕はニプロ・レッシュだ。」
ワン「俺は、ワンってんだ。よろしくね、ノアちゃん。」
ノア「は、はい! よろしくお願いします!」
ワン「ちなみになんだけど...ノアちゃん、対特殊犯罪課に勤務するってことは、能力持ちでしょ? ノアちゃん、能力なに?」
ノア「え、えっと...少し地味かもしれませんが...「嘘がわかる」んです。」
ニプロ「便利な能力だな。」
ノア「便利じゃないですよ。この力のせいで、色々と苦労させられてきましたから...。」
ワン「うーん、俺はまだ信用できないな~。つーことで、今から俺が言うことが、嘘かホントか当ててみてよ。」
ノア「は、はい。わかりました。」
ワン「ではでは...「俺は、ノアちゃんのことが好き。」」
ノア「...え?」
ワン「「俺は、ノアちゃんのことが好き。」これは、嘘かホントか...どっちだ?」
ノア「...う、嘘...じゃないです。」
ワン「おぉ~正解。んじゃ、次の質問ーーー」
ニプロ「やめろ。もうわかっただろ。」
ワン「俺の気持ちはわかったかもしれないけど、まだノアちゃんの気持ちがわかんねぇだろうが。邪魔すんな、坊ちゃんが。」
ニプロ「ノアさん。」
ノア「は、はい。」
ニプロ「ウザかったら、無視していいからな。」
ノア「は、はぁ...。」
ワン「ノアちゃん、そいつの言うことも無視していいからね。」
ニプロ「今日の夜に、犯人を探しにいく。それまでに、机に置いてある資料を読み込んでおけ。わかったな?」
ノア「わ、わかりました!」
ワン「おい、どこ行くんだよ?」
ニプロ「今、うちには客人をもてなす物が何もない。だから来る時は連絡をと言っているのに...!」
ノア「あ、あの、お構いなく...って、行っちゃった...。」
ワン「真面目だねぇ、あの坊ちゃんは。ノアちゃんは、あんなカチカチになっちゃダメだよ。」
ノアは、ワンをジッと見つめている。
ノア「......。」
ワン「ん? どったの、そんな見つめて? 俺様のカッコ良さに今更気づいたの?」
ノア「...あなたが、ワンさんなんですね。」
ワン「ワンでいいよ。何も聞かされてないって言ってたけど、それは今後のことについてでしょ? 俺たちのことは、多少なりとも聞いてきてはいるでしょ?」
ノア「は、はい。変なことされそうになったらすぐに連絡してと、ルルさんに言われました。」
ワン「あらら~ルルちゃんってば、厳しいお人なんだから~。俺様が他の女の子に手を出すのが、そんなに嫌なのかしら~? 今度会ったら聞いてみよ~。」
ノア「......。」
ワン「そんな警戒しなくてもいいって。あんたが何もしてこない限りは、こっちも手は出さねぇよ。まぁ、男女のことは何かしらするかもだけどな~。だははは、冗談冗談。」
ノア「......。」
ワン「そんな怖い顔しないでよ~。俺様が犯罪者だったのは、昔の話よ。今は善良な一般市民だから、ね? あんたには噛みつきゃしないから、可愛い可愛い笑顔で俺を見ててよ。」
深夜。三人は固まって人通りの少ない街の中を歩いている。
ノア「あぁ...やっぱり、深夜はちょっと肌寒いですね...。」
ワン「寒いなら、俺様が温めてーーー」
ニプロはワンの頭を叩く。
ニプロ「黙れ。」
ワン「あだっ!? っつぅ...! お前、最近よく手を出してくるよな? 手を出すなら俺じゃなくて女に手を出してこい!」
ニプロ「黙れ。」
ワン「つーかよ、これなに? なんなの、これ?」
ニプロ「なにがだ?」
ワン「俺たち、金髪事件の犯人をあぶり出すために、こんな夜遅くに街を歩いてんだよな?」
ニプロ「そうだ。」
ワン「んじゃ、なんで三人くっついて歩いてんの? 犯人が美味しそうな金髪美女を見つけても、周りにカッコいい男と気持ち悪い男がいたんじゃ、近づいてこねぇだろ?」
ニプロ「18人も殺しているんだぞ? しかもこっちはまだ相手のことがよくわからない。そんな状態でノアさんを一人歩かせるわけにはいかないだろう。」
ワン「じゃあ、なんで外に連れてきたんだよ? お前、たまに思うけどバカだよな?」
ニプロ「奴の犯行時間は毎回決まって深夜だ。行動しているとしたら、今だ。そして、ノアさんの綺麗な髪を犯人が見れば、遠目からでも見ることだろう。」
ワン「あーね? 俺に見つけろと?」
ニプロ「周りには、人一人いない。お前なら見つけられるだろ?」
ワン「はいはい、悪者の気配は嫌でも気付いちゃいますからねぇ。ただし、報酬はきっちり払ってもらうぜ。例えば、ノアちゃんとデートできる権利をくれるとかな。」
ノア「え...?」
ワン「そんな嫌そうな顔しないでくれる? 俺、泣いちゃうよ?」
ノア「あぁ、えっと...ごめんなさい。」
ワン「どっちのゴメン? さっきのことについて? それとも、デートの件?」
ニプロ「無駄話をするな。」
ワン「かぁ~! お前はマジで真面目でつまらん男だな。もうちっとなんとか...。」
ワン「......。」
ニプロ「どうした?」
ワン「...なーんか、嫌な感じする。」
ノア「え?」
ニプロ「各自、警戒しろ。もしかしたら、近くにーーー」
ワン「あだっ!?」
ノア「ひぃ!?」
ニプロ「なんだ、いきなり!?」
ワン「誰かに殴られた...。」
ニプロ「何を言っている? 俺たち以外は、誰もーーー」
ワン「がはっ!?」
ワンは突然、前方へドサリと倒れる。
ノア「ワ、ワンさん!?」
ニプロ「おい、どうした!? しっかりしろ!」
ノア「きゃぁ!?」
ニプロ「ノアさん!?」
ノアは、一人でジタバタしている。まるで背後から誰かに口を塞がれているかのように、声も出せなくなっている。
ノア「んーー! んーんーー!」
ニプロ(な、なにが起こっている...!? ワンは突然倒れ、ノアさんは誰かに捕まえられているよう...でも、周りには俺たち以外誰もいない!)
ノア「んーー! んーんーんー!」
ニプロ「ノアさん、今助けーーー」
突如、ニプロの全身に強烈な痛みが走る。
ニプロ「がはぁ!?」
ノア「んーんー!」
ニプロの意識が薄れていく。うっすらと閉じていく瞼から、バチバチと音を鳴らすスタンガンが見える。
ニプロ(くそっ...! スタンガンか...。やばい...意識...が......。)
ノア「ーーーさん! レッシュさん! 起きてください、レッシュさん!」
ニプロがノアの声に応え、うっすらと瞼を開ける。三人は縄で手足を縛られ身動きが取れない状態になっている。
ノア「レッシュさん! よかった...!」
ワン「やっと起きたのかよ、お寝坊さん。」
ニプロ「ここは...?」
ワン「どっかの古屋だな。おいおいおい、俺たちがついていながら、このザマかよ。恥ずかしすぎて、このまま死にたいぜ。」
ニプロ「縁起でもないことを言うな。おい、お前たちは犯人の顔をーーー」
ペパー「おやおや、ようやくお目覚めですか。」
ニプロ「お前は...!」
ワン「ようよう、写真で見たよりだいぶ老けてんなぁ...ペパー・イーサンよぉ。」
ペパー「あなた、自分の置かれている立場がわかっていないのですか? あなたたちの命は、僕の手の中だということをお忘れなく。」
ワン「転がすなら、優しく転がしてね。痛いのは嫌よ。」
ニプロ「おい、お前は黙っていろ!」
ワン「へーへー。」
ニプロ「ペパー・イーサン、お前は今までどこにいたんだ?」
ペパー「どこって? 僕は街の中でずっと生活していましたよ。初めて人を殺した時から、変わらずにずっと...。」
ニプロ「やはり、金髪事件はお前の仕業か...!」
ワン「つーか、ずっと街の中とか嘘吐いちゃダメよ。嘘吐く男は、モテねぇぞ。」
ノア「ワンさん...この方は、嘘を吐いてません。」
ワン「え? マジ?」
ペパー「ふふふ...知りたいですか? 何人も人を殺している僕が、どうして捕まりもせず、街の中で生活し続けられるのか...?」
ワン「さっさと教えろ、老け顔犯罪者。」
ペパー「...いいでしょう。あなたたちには、特別に教えてあげますよ。よーく、見ていてくださいね?」
ペパーの身体が、少しずつ色素を無くしていく。
ノア「う、嘘...!? 身体が、消えて...!?」
ニプロ「透明になる力か...。そりゃ見つからないわけだ。」
ワン「でも、あいつは無能力って話じゃなかったのか? 一体どこでーーー」
ワンの腹部から、血がぼたぼたと流れ始める。
ワン「...ん?」
ニプロ「なっ!?」
ノア「ワンさん!」
ワン「おいおいおい、消えてる間に攻撃するのは、卑怯じゃない?」
ペパー「姿を見せて攻撃すれば、卑怯者ではなくなりますね。では...。」
ワンの目の前に、切先を赤く染めたハサミを握りしめたペパーが現れる。
姿を見せると同時に、ハサミを大きく振り上げ、ワンの腹部へと突き刺す。
ワン「っ!?」
ペパー「あなたね、さっきから人を怒らせるようなことばかり言って...悪い子には、お仕置きしなきゃいけないんですよ...?」
ワン「あれで怒るとか、心狭すぎかよ? そんなんだから、金髪彼女に振られちゃうのよ。」
ニプロ「ワン、これ以上刺激するな!!」
ワン「別に、刺激してるつもりは全くない。本当のこと言ってるだけだから。ねぇ、彼女に振られた可哀想なペパーちゃん?」
ペパー「...どうやら、君は死にたいみたいだね? いいですよ、お望み通り...殺してあげますよ。」
ノア「や、やめて!!」
ペパー「では、さようなら...!」
ペパーはハサミを振り上げ、何度も何度もワンの身体に刃を突き立てる。
ペパー「っ! っ! っ! っ!」
ノア「いやぁぁぁぁ!?」
ニプロ「ワン!!」
ペパー「あははっ! あはははっ! バカなっ! 男だっ! この僕にっ! 勝てるとでもっ! 思っていたのかっ!? このっ! このっ! このっ!!」
ワンは床を真っ赤に染め上げ、身動き一つとらずに静かに横たわっている。
ペパー「はぁ、はぁ...! あははは...! 本当にバカな男だ...。こんなバカと一緒にいる君たちに、同情してしまうよ。」
ノア「そ、そんな...!」
ペパー「さてと...そろそろメインディッシュをいただこうか?」
ニプロ「やめろ! 彼女に近づくな!」
ペパー「うるさくするなら、君もコイツと同じようになるよ? そうなりたくないなら、黙って見ていなさい。」
ニプロ「くっ...!」
ペパー「あぁ...君の髪は本当に美しい...。キラキラと輝く金色の髪...。この髪を見ているとね...思い出すんだよ...彼女のことを。」
ノア「こ、こないで...!」
ペパーは、血に染まったハサミでノアの髪を少しずつ切っていく。
ノア「あ、あぁぁ...!」
ペパー「あぁ...僕は君のことを愛していたのに...君は僕の元から離れていってしまった...。僕を残して、どこかへと行ってしまった...。愛は憎しみに変わり、悲しみに変わり、どんどんと膨れ上がっていった...。」
ペパー「こうやって、髪を切っているとね...彼女に復讐できているような気がして、すごくすごく気持ちがいいんだよ...。君の怯えてる顔が、彼女に見えて仕方ないんだよ...。僕の手で、彼女をズタズタに引き裂けているようで、気持ちよくて気持ちよくてたまらないんだよ...!」
ペパー「ふふふ...! 今頃、彼女もこんなふうに怯えてるって思ったら...楽しくて楽しくてたまらないよ...。次は私の番かもしれない、殺されるのは私かもしれないって怯えながら毎日生きて...毎日僕のことを考えて生きて...! あぁ...あははは...! あははは!! あの大嫌いな彼女に! 憎い彼女に! 僕は復讐できているんだ! 気持ちいい! 最高に気持ちがいい! 最高にーーー」
ノア「嘘...ですよね?」
ペパー「...はい?」
ニプロ「ノアさん、何を...?」
ノア「彼女のことが、大嫌いだって...憎いって...嘘ですよね?」
ペパー「...何を言っている?」
ノア「本当は彼女のことを、今でも愛しているんでしょ? 好きで好きでたまらないんでしょ? 今すぐにでも、彼女に会いたくて会いたくてたまらないんでしょ?」
ペパー「......。」
ノア「彼女と別れた後も、彼女のことが忘れられなくて...何をしても忘れられなくて、会えないって思えば思うほど、愛が溢れて、会いたくなって! 行き場のない気持ちをどうしようも出来なくて、苦しくて苦しくて仕方ないんでしょ!?」
ペパー「...やめてくれ。」
ノア「好きならば、もう一度伝えればいいじゃないですか!? どうしてこんなことするんですか!? こんなことしたって、彼女は喜ばないって、あなたが一番わかっているでしょ!? 彼女のことを、すごく愛しているのなら、こんなことしないで彼女にーーー」
ペパー「やめろ!! 黙って聞いていれば、ありもしないことをベラベラと...! 僕は彼女を愛してはいない! あんなやつ、死んでしまえばいい!」
ノア「これ以上、自分を傷つけないで! これ以上、思ってもいないことをいって、自分を苦しめるのはやめてあげて!」
ニプロ「ノア、もうやめろ!!」
ペパー「嘘なんて吐いていない...! 僕は彼女を憎んでいる...! 彼女を殺したい気持ちでいっぱいだ...! 愛してなどいない! あんなやつのこと、愛してなんかいない!!」
ペパー「君と話していると、不愉快だ...。二度とその口を開けないように...ズタズタに引き裂いてやる!!」
ワン「おいおい、女の子には優しくしなきゃだぜ?」
ペパー「...え?」
ノア「ワ、ワンさん...? ど、どうして...?」
ペパー「な、なんで...!? お前は、僕が...!」
ワン「俺様、結構有名人だと思ってたんだけど...あんた、知らないの? だったら今教えてやるから、耳クソほじくり出して、よーく聞いとけ。」
ワン「俺様「不死身」なのよん。」
ペパー「不死身...だと...!? そんなバカな...!」
ワン「いや~アンタがハサミでザックザク刺しまくってくれたおかげで、縄も切れて自由になれました。ありがとさん。お詫びとして、一発ぶん殴ってやるよ。受け取ってくれや。」
ペパー「くそーーー」
ワンは、力任せにペパーの顔に向かって拳を振り切る。
ペパー「あがぁ!?!?」
ワン「さてさて...お姫様、もう大丈夫ですよ~。王子様が縄を解いて、愛の口づけをしてあげますからね~。」
ノア「ワ、ワンさん...どうして...? あなたは、さっき...!」
ワン「あれ? ノアちゃんは、俺のこと知ってたんじゃないの? あっ、もしかして恐怖のあまり記憶飛んじゃってる? そういうところ、とってもかわいいね~!」
ニプロ「いいからサッサと縄を解け!」
ワン「うるせぇ猿が。キーキー喚くな。にしても、お前の演技はなかなかだったぜ? あの焦った顔、今思い返しても笑える。お笑いコンテスト出てきたら? 爆笑かっさらえるよ?」
ニプロ「サッサと仕事しろ!」
ワン「へいへいっと。」
ワンはハサミを拾い、ニプロとノアの縄を切る。
ペパー「くそっ...! なんなんだよ...なんなんだよ、お前は!?」
ワン「ん? 俺のこと? んじゃまぁ、改めまして自己紹介だ。俺様は、対特殊犯罪課に所属しております、ワンと申します。元犯罪者で、死ねない力を持ったイケてる男です。以後、よろしく~。」
ノア「死ねない...あの話は、本当だったんだ...!」
ニプロ「おい、ペパー・イーサン以外に誰かいるか?」
ワン「いや~な感じはしないから、コイツ一人だけじゃない。」
ニプロ「そうか。なら、サッサと片すぞ。」
ワン「りょうか~い。」
ペパー「片す...? 僕を捕まえる気ですか...? 残念ですが、無理ですよ。なぜなら、僕は姿を消すことができる...! 腹立たしいですが、一度ここはーーー」
ニプロ「逃がすわけないだろ、犯罪者。」
ペパー「なっ!? は、早ーーー」
ニプロは、ペパーの背後へと素早く回り込むと、腕をガッチリと押さえつけ、床に組み敷く。
ペパー「がはっ!?」
ニプロ「大人しくしていろ。」
ノア「す、すごい...。一瞬で組み敷いた...。」
ワン「おっと? いいところに拳銃が...さてさて、ペパーちゃ~ん? 死ぬ準備はできた~?」
ペパー「や、やめろ...! やめてくれ!」
ワン「アンタには聞きたいことがあるんだけども...こんな危なっかしいところにいつまでもいるわけにもいかないし、ノアちゃんの安全が第一なわけよ。つーことで、アンタは連行せずに、ここで殺す。」
ペパー「ま、待て...! 待ってくれ!!」
ワン「俺様の彼女になるかもしれなかった金髪美女たちを殺した罪は、死ぬ以外じゃ償えないぜぇ?」
ワン「じゃあな、ペパー・イーサン...地獄で、届かねぇ愛を叫んでな。」
古屋に、銃声が響き渡る。
数日後、ワンたちの部屋。ワンは、ソファーに深々と腰掛け、のんびりとテレビを視聴している。
ワン「んぁ? おい坊っちゃん、コーヒーおかわり。」
ニプロ「自分で淹れろ。」
ワン「コーヒー淹れるか、汚いキッチンを掃除するか、どっちがお好み?」
ニプロ「...はぁ...。」
ワン「最初から素直に言うこと聞きゃいいのに。」
ニプロ「黙れ。」
ワン「お前の命令には従いません。わーわーぎゃーぎゃー。」
ニプロ「なぁ、どうしたらお前と離れられると思う?」
ワン「俺を殺して、自由の身となる。」
ニプロ「名案だな。今すぐに実行してみるか。」
ワン「殺せるもんなら殺してみやがれ。」
リビングの扉がガチャリと開く。髪を短く切りそろえたノアが入ってくる。
ノア「失礼します。」
ワン「ん? おぉ、ノアちゃんじゃ~ん!」
ノア「ワンさん、こんにちわ。」
ワン「髪、切ったんだ。いいねいいね~短い君も、俺は好きだよ。」
ノア「ありがとうございます。」
ワン「それで、ノアちゃんは何しにきたの? もしかして、俺とデート?」
ノア「あ、えっと...。」
ニプロ「ソファーにかけて待っていてください。資料があるのであれば、机の上に用意しておいてください。」
ノア「あははは...お見通しですね...。」
ワン「ん? なになに? なんのこと? 二人だけで通じあわないでくれる? おーい、坊っちゃん~? ムカつくから、お前のこと殺してもいい?」
ニプロ「やれるもんならやってみろ。」
ワン「おーけーおーけー。自分の言葉には責任を持てよ?」
ノア「うふふ...! お二人は、仲が悪いように見えてーーー」
ニプロ「ノアさん、それ以上は言うな。」
ワン「鳥肌立つからやめて。うわぁ、もう立ってたわ。最悪。責任とって死ね、坊っちゃん。」
ニプロ「お前が死ね。」
ノア「あ、あははは...。」
ワン「ノアちゃんがデートしにきたんじゃないってことは、お仕事?」
ノア「はい、そうです。」
ワン「次は何?」
ノア「えっとですね...アルガン市内で起こっている、連続殺人なんですけども...。」
ワン「わぁお。まためんどくさそうな仕事。」
ニプロ「あの人は、なんでこうもめんどくさい仕事ばかり押し付けてくるんだ...?」
ワン「あれだな? どんな仕事でも、ノアちゃんに頼ませればOKするって思っでやがるな? 全くその通りだ、俺の負け。さぁ、仕事の話、詳しく聞かせてちょ。」
ワン「この俺様...不死身のワンちゃんが、どんな仕事も解決しちゃうよん。」
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