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ミナミくんと虎の店長さんの再会。
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(今回は2話分同時公開しています)
ピィイィイイィイイッッツ!!!
突然、耳を聾するばかりに鳴り響いた鋭い笛の音に驚いたのは呉凱だけではなかった。
「なんだ!?」
ゴーグルを嵌めた灰色の犬人も仰天したように慌てて辺りを見回す。だがちょうど犬人の死角になる真上の階に、そいつはいた。
(ミ、ミナミ……ッツ!?)
「呉凱さん!」
ミナミが腕を振りかぶって何かを投げる。その角度は子どもが水辺でやる石投げに似て浅く、呉凱は自分に向けて真っ直ぐに飛んで来る黒い物が何なのか、はっきりと見た。
「ミナミ、よくやった!」
呉凱は下半身に渾身の力を込めて飛び出し、それがコンクリートの床にバウンドする直前に掴み取る。
狗仔が手配できたのは昔呉凱が使っていたグロックの複製版だと言っていたが仕様は同じはずだ。呉凱は右手でグリップを握り、左手でマガジンが最後まで押し込まれているのを確認する。
「混蛋!」
犬人が叫んで銃を構え直すのと同時にコンクリートの床を踏みしめ、スライドを引きセーフティロックを外す。
「去死吧!!」
だが男が引き金を引くよりも呉凱の方が一瞬早かった。かつて嫌というほど聞いた発砲音が鼓膜に突き刺さる。目の前で犬人のゴーグルが割れて弾け飛ぶ。そして埃まみれの床に倒れて二度と動かなかった。
(あ、危ねぇ……、上に跳ねやがった)
やはりコピー物は癖がありすぎる。思わず呉凱は舌打ちをした。だが狙った場所より上に外れた弾丸は、それでも犬の頭を撃ち抜いたらしい。
「呉凱さん!」
上からミナミの声が降ってくる。それと同時にいくつかの足音と誰かが叫ぶ声も聞こえてきた。
「そこにいろ!」
呉凱はそう叫ぶとグロックのコピーをズボンのベルトにねじ込み、壁に立てかけられた建材を足場に二階の手すりに飛び移る。するとミナミがビックリしたような顔をしつつも急いで呉凱のところに走ってきた。
「呉凱さ……」
「シッ」
呉凱は人差し指を口に当てて遮ると、ミナミの腕を掴んで自分の首に回させた。
「在哪裡!?」
「那個人是誰!?」
下からオスたちの声が聞こえてくる。犬人がここに来るまであれだけ派手に撃ちまくっていたのだ。この円環大厦をシメる三幇に気づかれないはずがない。逆を言えばあのまま放っておけば死体もヤツが使っていた51式も、幇の獣人たちが闇から闇へと片付けるだろう。
「ミナミ、捕まってろ」
そう囁くと、ミナミを背負って一気に駆けだした。
ここで彼らに捕まれば相当面倒なことになる。階段を二段飛ばしで駆け上がり、途中麻雀を広げていた土竜のオヤジどもを飛び越えて隣の楼へと繋がる通路を目指す。すると耳元で「ひゃあっ!?」と情けない声が聞こえてきて、呉凱は思わず笑ってしまった。
ピィイィイイィイイッッツ!!!
突然、耳を聾するばかりに鳴り響いた鋭い笛の音に驚いたのは呉凱だけではなかった。
「なんだ!?」
ゴーグルを嵌めた灰色の犬人も仰天したように慌てて辺りを見回す。だがちょうど犬人の死角になる真上の階に、そいつはいた。
(ミ、ミナミ……ッツ!?)
「呉凱さん!」
ミナミが腕を振りかぶって何かを投げる。その角度は子どもが水辺でやる石投げに似て浅く、呉凱は自分に向けて真っ直ぐに飛んで来る黒い物が何なのか、はっきりと見た。
「ミナミ、よくやった!」
呉凱は下半身に渾身の力を込めて飛び出し、それがコンクリートの床にバウンドする直前に掴み取る。
狗仔が手配できたのは昔呉凱が使っていたグロックの複製版だと言っていたが仕様は同じはずだ。呉凱は右手でグリップを握り、左手でマガジンが最後まで押し込まれているのを確認する。
「混蛋!」
犬人が叫んで銃を構え直すのと同時にコンクリートの床を踏みしめ、スライドを引きセーフティロックを外す。
「去死吧!!」
だが男が引き金を引くよりも呉凱の方が一瞬早かった。かつて嫌というほど聞いた発砲音が鼓膜に突き刺さる。目の前で犬人のゴーグルが割れて弾け飛ぶ。そして埃まみれの床に倒れて二度と動かなかった。
(あ、危ねぇ……、上に跳ねやがった)
やはりコピー物は癖がありすぎる。思わず呉凱は舌打ちをした。だが狙った場所より上に外れた弾丸は、それでも犬の頭を撃ち抜いたらしい。
「呉凱さん!」
上からミナミの声が降ってくる。それと同時にいくつかの足音と誰かが叫ぶ声も聞こえてきた。
「そこにいろ!」
呉凱はそう叫ぶとグロックのコピーをズボンのベルトにねじ込み、壁に立てかけられた建材を足場に二階の手すりに飛び移る。するとミナミがビックリしたような顔をしつつも急いで呉凱のところに走ってきた。
「呉凱さ……」
「シッ」
呉凱は人差し指を口に当てて遮ると、ミナミの腕を掴んで自分の首に回させた。
「在哪裡!?」
「那個人是誰!?」
下からオスたちの声が聞こえてくる。犬人がここに来るまであれだけ派手に撃ちまくっていたのだ。この円環大厦をシメる三幇に気づかれないはずがない。逆を言えばあのまま放っておけば死体もヤツが使っていた51式も、幇の獣人たちが闇から闇へと片付けるだろう。
「ミナミ、捕まってろ」
そう囁くと、ミナミを背負って一気に駆けだした。
ここで彼らに捕まれば相当面倒なことになる。階段を二段飛ばしで駆け上がり、途中麻雀を広げていた土竜のオヤジどもを飛び越えて隣の楼へと繋がる通路を目指す。すると耳元で「ひゃあっ!?」と情けない声が聞こえてきて、呉凱は思わず笑ってしまった。
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