まだまだこれからだ!

九重

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第一章 異世界の住人はとても個性的でした。

疲れていたんです

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 その後、遠くに見えていた集落に歩いて移動して、うららはこじんまりとした家に連れて来られた。
 幸いにして、用意してもらった服は、ごく普通の服だった。
 頭から被る上着と紐で縛ってウエストで留めるタイプのパンツ。下着も、流石に可愛いリボンやフリルは付いていないものの、シンプルで見慣れた形のものだ。
 何はともあれ、騎士服や魔女服でないことにホッとする。

「生活様式は、それほど違わないのかしら」

 家の中を見ながら、そう呟いた。
 暖かそうな木の壁と木製家具。電化製品は見えないけれど、机や棚等に違和感は感じない。

「おとぎ話の中の挿し絵みたいな家よね」

 魔女や騎士がいるのだから、それでいいのかもしれない。
 集落の他の家も、まるでファンタジー映画に出てくるような家ばかりだった。

「ウララ、××、○○○」

 背を屈めながら扉をくぐって入ってきたウルフィアが、何か話しかけてきた。
 あきらかに、家のサイズと彼女の背の高さは合っていない。この家は彼女の家ではなく、もう一人の魔女のおばあさんの家なのだろう。
 暖は、この家に案内された時のおばあさんの仏頂面を思い出した。
 ウルフィアの方が、間違いなく暖に親切なのだが、実際に力になってくれるのは、どうやらディアナの方らしい。

(どうしてなのかしら?)

 そうは思ったが、そんな難しい質問を今の彼女の会話スキルで、できるはずがなかった。
 諦めた暖は、とりあえずウルフィアに向かい頭を下げる。

「ありがとうございます」

 騎士服のおばさんは、ニッコリ笑って、手を差し出してきた。
 反射的に手を伸ばせば、ギュッと握られる。
 そのままグイッと引っ張られて、歩かせられた。

「あ、あの? どこに行くんですか?」

 ニコニコ笑うばかりで、ウルフィアから返事は無い。
 まあ、返事があってもわからないのだが……
 戸惑いながらも導かれて家の外に出れば、

「×××!」

 そこで待っていたディアナに、開口一番怒鳴られた。
 ビクッとする暖を、忌々しそうに睨み付けて、ディアナは歩き出す。
 わずかに足を引きずる歩き方に、暖はディアナの足が悪いことに気づいた。
 そう言えば、空き地からこの家に来る時も、ずいぶんゆっくりと歩いてきた。
 溺れて死にかけ、ショックを受けていた暖は、二人の様子を気にかけることができなかったのだが――――

(おばあさんなんだもの。足が痛ければ移動はたいへんよね。……ひょっとして、私、ものすごく迷惑をかけている?)

 暖は、申し訳ない気持ちになった。
 とはいえ、右も左もわからない現状では、彼女たちの世話になるしか術はなく――――
 シュンとしたまま暖は、ウルフィアとディアナに連れられて、別の場所に移動した。
 そこは、この集落の中では、そこそこ大きい建物だ。
 建物の前には、剣と盾の描かれた大きな旗が翻っている。 

(何ていうか ……お役所?)

 暖の住んでいた町の町役場に雰囲気が似ているような気がした。
 もっとも、役所というには小さすぎる気もするが。
 中は、閑散としてひっそりしていた。
 ディアナがフンと鼻を鳴らし何かを呟く。
 おそらく「相変わらず陰気臭い」とかなんとかいう悪口を言ったのではないかな? と、暖は思う。
 言葉は通じなくとも、そういう雰囲気は伝わった。
 苦笑しながらウルフィアが奥へと導いてくれる。
 ドアに、象形文字みたいな模様の書かれた四角い板が打ち付けられた一室に、ノックもなしに入った。

 そこに居たのは30歳くらいに見えるあまり特徴のない男性だ。
 書きかけの書類から顔を上げた姿勢で、びっくりして小さな目を見開いた男性は、

「ディアナ! ウルフィア! ×××!」

 慌てて叫んだ。
 名前だけは、かろうじて聞き取れたが、あとはもちろんわからない。
 それから、暖を除いた三人は、早口で話し合いをはじめてしまった。
 何の意味もなさない音の羅列が、延々と続く。


 暖は、何もする事がなかった。
 キョロキョロ周囲を見回し見つけた椅子に、そっと座る。勧められてもいないのに座るのは悪いかなと思ったが、疲れには勝てなかった。
 そう、彼女はとっても疲れていたのだ。気づいたら見知らぬ場所だったのだから無理もない。
 
 いつの間にか、暖は眠ってしまっていた。
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