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第二章 平穏な日々ばかりではないようです。
返品は可能ですか?
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「グゥォッ! ……俺を殺す気か!?」
飛ばされながらも直ぐに復活したスゥェンが怒鳴る。
「殺しても死なないくせに、図々しい」
ギオルは心底忌々しそうにそう言った。
暖は思わず吹き出してしまう。
「プフ……凄イ、仲良シ」
「違う!」
「そうだろう?」
ギオルは即座に否定し、スゥェンは勢い良く頷いた。
暖はもう一度笑い声をあげる。
そんな彼女を、スゥェンが大きな丸い目を見開いて凝視した。
「ひょっ、ひょっとして! に、人間か!?」
驚愕して叫ぶ。
「ア、ハイ」
人間以外の何に見えるのだろう?
暖の答えを聞いたスゥェンは、目を三角に吊り上げた。
ものすごい勢いで、ギオルに迫る。
「ギオル! 貴さま何を考えている! よりによってお前の契約者が人間だと! ……貴さま、命を無駄に捨てるつもりなのか!?」
命を無駄に捨てるとは、聞き捨てならない言葉だった。
暖はびっくりしてギオルを見上げる。
ギオルは呆れたようにスゥェンを見ていた。
「そんな訳があるか。わしは、わしが生きるためにウララに竜玉を預けたんだ。……もっともあの時は、そんな事はわからずに無意識だったがな」
思い出しているのかギオルの目は遠い。
確かに、暖に竜玉をくれた時のギオルにそんな判断力があったとは思えない。
(尻尾で弾き飛ばされたんだものね)
まかり間違えれば死ぬところだった暖だ。
あの時のギオルと今のギオルは本当にまるで違う。別人ならぬ別竜のようだとさえ思う。
(しっかりしてきて良かったわ)
単純に暖はギオルの回復を喜んだ。
それが、自分のせいだと思われているなどとは考えてもみない。
「ウララと会う前のわしがどんな状態だったか。……スゥェン、お前は良く知っているだろう? 竜の里に置いておけず、稀代の魔女ディアナの結界があるこの場所にわしを押し込めたのは、他ならぬお前たち竜の仲間だからな」
スゥェンが辛そうに顔を背ける。
ギオルはフッと笑った。
「今更それをどうこう言うつもりはない。お前たちの判断は正しいと、わしは思う。それ以外の方法はなかっただろう。それにそのおかげでわしはウララに会えた。ウララに竜玉を預けられた幸運は何にもかえがたい」
ギオルは、本当に満足そうにそう言った。
「――――竜玉を預け契約した竜は、その相手と生死を共にするのだぞ! 他の竜や寿命の長いエルフならまだしも、人間のような一瞬の内に老いて死んでしまう者と契約する事のどこが幸せだ!?」
そんなギオルにスゥェンが怒鳴った。
話を聞いた暖も、びっくりする。
という事は、暖と契約したギオルはずいぶん寿命を縮めてしまったのではないだろうか?
「竜と人間の区別もつかず長く生き続けるよりも、竜玉を預けた相手と、短くとも満ち足りて生きる方を、わしは選ぶ。もっともこれはわしの自分勝手な考えだ。それをわかって欲しいとは言わない」
きっぱりとギオルは言い切った。
何か言いたげに口を開いたスゥェンは、しかし何も言わずに黙って口を閉じる。
そんな二頭の竜を見上げた暖は、思いきって声をかけた。
「ア、アノ? …… 竜玉ッテ、返品不可デスカ?」
ギオルとスゥェンは、キョトンとした。
「返品?」
「まさかっ! 全ての種族の垂涎のまとである竜玉を?」
いやいや別に暖は欲しくて竜玉をもらったわけではない。
返せるものなら返したいと、心から思う。
しかし暖の言葉を聞いたギオルは、ものすごく情けなさそうな顔をした。
可能不可能も何も、竜玉を返された竜などいまだかつていないだろう。
暖は、慌てて両手を左右に振った。
「ア、ア、違ウ! 今スグ返ス、ジャナクッテ、私ガ、死ヌ前ニ!」
暖が死ぬ前に竜玉を返してしまえば、ギオルは長生きできるのではないかと暖は思う。
本当は直ぐにでも返したいが、あんまりギオルの顔が情けなくて言い出せなかった。
せめて自分が死ぬ直前には返して、ギオルの寿命が自分のせいで縮まるような事態は避けたいと思う。
「そんな例は今までないが……そうだな、そうできればギオルは生き残れる!」
スゥェンは、嬉しそうにそう言った。
反対にギオルは渋い表情だ。
「竜玉を預けた唯一無二の契約者が死した後も、わしに生きろと言うのか ……」
「当タリ前! 生キラレルノニ死ヌ、絶対ダメ!」
暖は大声でギオルを叱りつけた。
ギオルはしょぼんと長い尻尾を垂れる。
スゥェンはそんな暖とギオルの様子にびっくりして目をみはった。
「ギオル、長生キシテ。ソノ方ガ、私、嬉シイ」
「ウララ……」
暖は項垂れたギオルの頭に手を伸ばす。
ギオルの大きな頭が暖の方に差し出され、ゴツゴツとした頬を力一杯撫でてやる。
「お前が、竜であれば良かったのに――――」
それは嫌だなと、暖は笑みをひきつらせた。
飛ばされながらも直ぐに復活したスゥェンが怒鳴る。
「殺しても死なないくせに、図々しい」
ギオルは心底忌々しそうにそう言った。
暖は思わず吹き出してしまう。
「プフ……凄イ、仲良シ」
「違う!」
「そうだろう?」
ギオルは即座に否定し、スゥェンは勢い良く頷いた。
暖はもう一度笑い声をあげる。
そんな彼女を、スゥェンが大きな丸い目を見開いて凝視した。
「ひょっ、ひょっとして! に、人間か!?」
驚愕して叫ぶ。
「ア、ハイ」
人間以外の何に見えるのだろう?
暖の答えを聞いたスゥェンは、目を三角に吊り上げた。
ものすごい勢いで、ギオルに迫る。
「ギオル! 貴さま何を考えている! よりによってお前の契約者が人間だと! ……貴さま、命を無駄に捨てるつもりなのか!?」
命を無駄に捨てるとは、聞き捨てならない言葉だった。
暖はびっくりしてギオルを見上げる。
ギオルは呆れたようにスゥェンを見ていた。
「そんな訳があるか。わしは、わしが生きるためにウララに竜玉を預けたんだ。……もっともあの時は、そんな事はわからずに無意識だったがな」
思い出しているのかギオルの目は遠い。
確かに、暖に竜玉をくれた時のギオルにそんな判断力があったとは思えない。
(尻尾で弾き飛ばされたんだものね)
まかり間違えれば死ぬところだった暖だ。
あの時のギオルと今のギオルは本当にまるで違う。別人ならぬ別竜のようだとさえ思う。
(しっかりしてきて良かったわ)
単純に暖はギオルの回復を喜んだ。
それが、自分のせいだと思われているなどとは考えてもみない。
「ウララと会う前のわしがどんな状態だったか。……スゥェン、お前は良く知っているだろう? 竜の里に置いておけず、稀代の魔女ディアナの結界があるこの場所にわしを押し込めたのは、他ならぬお前たち竜の仲間だからな」
スゥェンが辛そうに顔を背ける。
ギオルはフッと笑った。
「今更それをどうこう言うつもりはない。お前たちの判断は正しいと、わしは思う。それ以外の方法はなかっただろう。それにそのおかげでわしはウララに会えた。ウララに竜玉を預けられた幸運は何にもかえがたい」
ギオルは、本当に満足そうにそう言った。
「――――竜玉を預け契約した竜は、その相手と生死を共にするのだぞ! 他の竜や寿命の長いエルフならまだしも、人間のような一瞬の内に老いて死んでしまう者と契約する事のどこが幸せだ!?」
そんなギオルにスゥェンが怒鳴った。
話を聞いた暖も、びっくりする。
という事は、暖と契約したギオルはずいぶん寿命を縮めてしまったのではないだろうか?
「竜と人間の区別もつかず長く生き続けるよりも、竜玉を預けた相手と、短くとも満ち足りて生きる方を、わしは選ぶ。もっともこれはわしの自分勝手な考えだ。それをわかって欲しいとは言わない」
きっぱりとギオルは言い切った。
何か言いたげに口を開いたスゥェンは、しかし何も言わずに黙って口を閉じる。
そんな二頭の竜を見上げた暖は、思いきって声をかけた。
「ア、アノ? …… 竜玉ッテ、返品不可デスカ?」
ギオルとスゥェンは、キョトンとした。
「返品?」
「まさかっ! 全ての種族の垂涎のまとである竜玉を?」
いやいや別に暖は欲しくて竜玉をもらったわけではない。
返せるものなら返したいと、心から思う。
しかし暖の言葉を聞いたギオルは、ものすごく情けなさそうな顔をした。
可能不可能も何も、竜玉を返された竜などいまだかつていないだろう。
暖は、慌てて両手を左右に振った。
「ア、ア、違ウ! 今スグ返ス、ジャナクッテ、私ガ、死ヌ前ニ!」
暖が死ぬ前に竜玉を返してしまえば、ギオルは長生きできるのではないかと暖は思う。
本当は直ぐにでも返したいが、あんまりギオルの顔が情けなくて言い出せなかった。
せめて自分が死ぬ直前には返して、ギオルの寿命が自分のせいで縮まるような事態は避けたいと思う。
「そんな例は今までないが……そうだな、そうできればギオルは生き残れる!」
スゥェンは、嬉しそうにそう言った。
反対にギオルは渋い表情だ。
「竜玉を預けた唯一無二の契約者が死した後も、わしに生きろと言うのか ……」
「当タリ前! 生キラレルノニ死ヌ、絶対ダメ!」
暖は大声でギオルを叱りつけた。
ギオルはしょぼんと長い尻尾を垂れる。
スゥェンはそんな暖とギオルの様子にびっくりして目をみはった。
「ギオル、長生キシテ。ソノ方ガ、私、嬉シイ」
「ウララ……」
暖は項垂れたギオルの頭に手を伸ばす。
ギオルの大きな頭が暖の方に差し出され、ゴツゴツとした頬を力一杯撫でてやる。
「お前が、竜であれば良かったのに――――」
それは嫌だなと、暖は笑みをひきつらせた。
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