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第三章 魔族にもいろいろあるようです。
懲りない魔族
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(美味そう?)
暖が首を傾げた次の瞬間、青年魔族が「うっ」と唸って蹲る。
その顔色はみるみる内に青ざめて、蒼白になった。
「バカ! お前、今本気でこいつを食べようと思っただろう! 直ぐに止めろ! 死ぬぞ!」
焦ったダンケルが、青年魔族を怒鳴りつける。
「な、何で、……こんなっ?」
「いいから、言う通りにしろ! 命令だ!」
ダンケルの命令に、青年魔族は必死の表情で頷いた。
「俺は、あの人間を食べない、食べない、食べない……」
念仏のように「食べない」を唱え続ける魔族。
「くそっ! あの吸血鬼の仕業だな」
ダンケルが忌々しく呟いた。
突然の出来事に、暖はびっくりしたが、どうやら彼女に邪な思いで触れる者を干からびさせるラミアーの術が、触れる前から発動したようだ。
「性欲だけじゃなく食欲もダメなのか? ……本当に本気でやり過ぎだろう!」
ダンケルは思いっきり叫んだ。
先ほどから何度も叫んだ彼の声は、悲しいくらいかすれている。
暖も流石にダンケルが可哀想になってきた。
とはいえ彼女にできることはない。
心配しながら見守っていれば、青年魔族はなんとか立ち上がる。
彼の視線は、あからさまに暖から逸らされた。
「うっ、なんて拷問なんだ。……こんなに美味そうな人間を目の前に、俺が食欲を抑えなければならないなんて」
フラフラしながら額を押さえ、魔族は嘆く。
「……ハッ! そうか、これはダンケル、お前の罠だな! 魔王の後継者争いのライバルである俺を抹殺するためにこんな罠を仕掛けたんだろう!?」
終いにはそんなことを言い出した。
「誰がライバルだ!」
かすれた声でダンケルが怒鳴りつける。
「え? 俺だけど」
「そんなはずがあるか! 魔王の嗣子はこの俺で決定している。末子のお前に出る幕など何もない」
バカにしたようにダンケルは、鼻を鳴らした。
その様子を見れば、彼がこの魔族を本気で相手にしていないのが、よくわかる。
「末子?」
暖の質問に、ダンケルは嫌そうに頷いた。
「このバカは俺の弟だ。――――四六時中腹を減らしている餓鬼で、後継者争いの敵にもならなかったから生き延びている」
ダンケルの言葉に、青年魔族は「……酷いなぁ」と、あまりそう思ってもいなさそうな軽い調子でぼやいた。
「弟?」
暖はびっくりして青年魔族に目を向ける。
「そうだよ。俺はダンケルの弟だ。俺って彼にそっくりだろう?」
自分とダンケルの顔を指さしながら聞いてくる魔族だが、どこをそう見ても、全くそうは見えない。
確かに角の形だけは似ているが、他はダンケルとは似ても似つかない軟派男に見えた。
ブンブンと首を横にふれば、「酷いなぁ」と言いながら、彼は性懲りもなく暖を覗き込んでくる。
「あぁ、やっぱり美味そうだ……ッて! 痛テテ! た、食べない、食べないって!」
魔族はまたまたラミアーの術をくらい、頭を押さえ蹲った。
なんとかやり過ごすと、大きなため息をつく。
「……いったいこの反応はどうなっているんだい?」
不思議そうにジロジロ見てくる視線から、暖は顔を背け体を反らせた。
「本当に懲りない奴だな、見るな!」
そんな暖をダンケルは弟から隠すように抱え込んでくる。
思ったより厚い胸板や長くてガッシリした腕に、すっぽり包まれた。
「そんなに大切にしているのに、花嫁じゃないのかい?」
不思議そうな魔族の声が耳に聞こえて、暖は急に恥ずかしくなる。
(まるで小さな女の子が抱っこされているみたいな態勢よね?)
思わず顔を隠したくなり、ダンケルの胸に頭を擦りつけてしまう。
ダンケルの体は、ピクッと震えた。
途端、青年魔族がプッと吹き出す。
「ハハ、ダンケルのそんな顔、はじめて見た。……まぁ、イイや。俺はブラット。よろしくね」
「うるさい! お前とよろしくする理由はない!」
なんだか焦ったみたいなダンケルの声が聞こえて、ブラットはケラケラと笑った。
いったいダンケルはどんな顔をしたのだろう?
ものすごく気になるが、しっかり抱きかかえられている暖は顔を上げることができない。
「ダンケルのこんな様子が見られただけでも、今日はイイ日だったな。こんなに美味しそうな”子豚ちゃん”にも会えたし――――ッテ! イタタ……」
再び『美味そう』と考えたブラットが、またまた頭痛を起こす。
本当に、心底懲りない男だった。
暖が首を傾げた次の瞬間、青年魔族が「うっ」と唸って蹲る。
その顔色はみるみる内に青ざめて、蒼白になった。
「バカ! お前、今本気でこいつを食べようと思っただろう! 直ぐに止めろ! 死ぬぞ!」
焦ったダンケルが、青年魔族を怒鳴りつける。
「な、何で、……こんなっ?」
「いいから、言う通りにしろ! 命令だ!」
ダンケルの命令に、青年魔族は必死の表情で頷いた。
「俺は、あの人間を食べない、食べない、食べない……」
念仏のように「食べない」を唱え続ける魔族。
「くそっ! あの吸血鬼の仕業だな」
ダンケルが忌々しく呟いた。
突然の出来事に、暖はびっくりしたが、どうやら彼女に邪な思いで触れる者を干からびさせるラミアーの術が、触れる前から発動したようだ。
「性欲だけじゃなく食欲もダメなのか? ……本当に本気でやり過ぎだろう!」
ダンケルは思いっきり叫んだ。
先ほどから何度も叫んだ彼の声は、悲しいくらいかすれている。
暖も流石にダンケルが可哀想になってきた。
とはいえ彼女にできることはない。
心配しながら見守っていれば、青年魔族はなんとか立ち上がる。
彼の視線は、あからさまに暖から逸らされた。
「うっ、なんて拷問なんだ。……こんなに美味そうな人間を目の前に、俺が食欲を抑えなければならないなんて」
フラフラしながら額を押さえ、魔族は嘆く。
「……ハッ! そうか、これはダンケル、お前の罠だな! 魔王の後継者争いのライバルである俺を抹殺するためにこんな罠を仕掛けたんだろう!?」
終いにはそんなことを言い出した。
「誰がライバルだ!」
かすれた声でダンケルが怒鳴りつける。
「え? 俺だけど」
「そんなはずがあるか! 魔王の嗣子はこの俺で決定している。末子のお前に出る幕など何もない」
バカにしたようにダンケルは、鼻を鳴らした。
その様子を見れば、彼がこの魔族を本気で相手にしていないのが、よくわかる。
「末子?」
暖の質問に、ダンケルは嫌そうに頷いた。
「このバカは俺の弟だ。――――四六時中腹を減らしている餓鬼で、後継者争いの敵にもならなかったから生き延びている」
ダンケルの言葉に、青年魔族は「……酷いなぁ」と、あまりそう思ってもいなさそうな軽い調子でぼやいた。
「弟?」
暖はびっくりして青年魔族に目を向ける。
「そうだよ。俺はダンケルの弟だ。俺って彼にそっくりだろう?」
自分とダンケルの顔を指さしながら聞いてくる魔族だが、どこをそう見ても、全くそうは見えない。
確かに角の形だけは似ているが、他はダンケルとは似ても似つかない軟派男に見えた。
ブンブンと首を横にふれば、「酷いなぁ」と言いながら、彼は性懲りもなく暖を覗き込んでくる。
「あぁ、やっぱり美味そうだ……ッて! 痛テテ! た、食べない、食べないって!」
魔族はまたまたラミアーの術をくらい、頭を押さえ蹲った。
なんとかやり過ごすと、大きなため息をつく。
「……いったいこの反応はどうなっているんだい?」
不思議そうにジロジロ見てくる視線から、暖は顔を背け体を反らせた。
「本当に懲りない奴だな、見るな!」
そんな暖をダンケルは弟から隠すように抱え込んでくる。
思ったより厚い胸板や長くてガッシリした腕に、すっぽり包まれた。
「そんなに大切にしているのに、花嫁じゃないのかい?」
不思議そうな魔族の声が耳に聞こえて、暖は急に恥ずかしくなる。
(まるで小さな女の子が抱っこされているみたいな態勢よね?)
思わず顔を隠したくなり、ダンケルの胸に頭を擦りつけてしまう。
ダンケルの体は、ピクッと震えた。
途端、青年魔族がプッと吹き出す。
「ハハ、ダンケルのそんな顔、はじめて見た。……まぁ、イイや。俺はブラット。よろしくね」
「うるさい! お前とよろしくする理由はない!」
なんだか焦ったみたいなダンケルの声が聞こえて、ブラットはケラケラと笑った。
いったいダンケルはどんな顔をしたのだろう?
ものすごく気になるが、しっかり抱きかかえられている暖は顔を上げることができない。
「ダンケルのこんな様子が見られただけでも、今日はイイ日だったな。こんなに美味しそうな”子豚ちゃん”にも会えたし――――ッテ! イタタ……」
再び『美味そう』と考えたブラットが、またまた頭痛を起こす。
本当に、心底懲りない男だった。
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