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第三章 魔族にもいろいろあるようです。
一つ目のお姫さまは死にそうでした
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いくらなんでも痩せすぎだ。間違いなく病気のレベルだと暖は思う。
「……シムスか?」
小さな声がベッドから聞こえた。
「はい。姫さま」
返事をした料理長が頭を下げる。
はじめて知ったが、どうやら彼女の名前はシムスというらしい。
「姫さま、お加減はいかがですか?」
「私など……死んだも同然だ」
料理長の問いかけに自嘲の言葉が返ってくる。
「何を仰います!」
料理長はバッと顔を上げた。
「陛下のお情けをいただけなくなった側妃に、どんな存在意義がある」
姫さまと呼ばれた女性の声は、血を吐くような悲哀に満ちていた。
「それは! ……モノアさまの体調が優れないからで、元気にさえなられれば陛下もきっと!」
料理長は彼女の姫さまを懸命に慰める。
しかしモノアと呼ばれた側妃は、首を横にふった。
「例え、陛下の御心がまだ私にあったとしても、既に私には陛下の寵愛を受ける資格がない」
うつむき涙を堪えるかのように唇を噛むモノア。
寵愛を受ける資格がないということは、どういうことだろう?
(ひょっとして、この姫さまも――――)
暖は彼女の細すぎる腰を見つめた。
これだけの細さではまともな生理があるとはとても思えない。
少なくとも暖にはそう思えた。
料理長は、膝をついたまま前に出る。
「姫さま。姫さまのその憂いを払うために、今日はこのシムス、無礼を承知でお目通りを願い出ました」
そう言いながら料理長は暖の手を握ると、彼女を前へと押し出す。
「姫さま。この者は私の配下。生理を失った侍女や下女を癒した者です!」
その言葉を聞いたモノアは、パッ!と顔を上げた。
彼女のたった一つの目が、ヒッシと暖を見つめてくる。
溺れる者が一本の藁に縋るかのような眼差しだった。
暖は思わずモノアの方に駆け出す。
控えていた三人の一つ目が慌てたように前に出て、暖を押し止めた。
三人に捕まりながら暖は大声でモノアを怒鳴りつける!
「モウ! 痩セスギデショウ! ソンナ痩セテ、ドウスル? 死ニタイ? 自殺ナノ? ……馬鹿デショ! 絶対!!」
怒鳴られたモノアはポカンと口を開けた。
あまりにも痩せ細ったその姿に、暖の心の奥から怒りが沸いてくる。
料理長が慌てて暖を引き下がらせた。
「ウララ、落ち着け!」
「死ニソウ人、見テ、落チ着ク、無理!」
暖に怒鳴り返された料理長は顔色を失った。
「……死にそう?」
「当タリ前! コノママ痩セル、絶対死ヌ!」
実際、モノアは今生きているのが不思議なくらい痩せていた。
魔族の強い生命力のおかげで生きているのだろうが、それだって限度があるだろう。
(何より、彼女は精神的に落ちているわ)
体の不調は心に繋がる。
今までのモノアの発言を聞く限り、彼女はうつ状態なのではないだろうか?
痩せて死ぬ前に自殺する可能性だってないとはいえなかった。
(私は精神科医じゃないから、確実とは言えないけれど)
それでも黙って見過ごすわけにはいかなかった。
「トモカク、早ク、コルセット緩メテ!」
暖の言葉に、料理長と他の一つ目たちが首を傾げる。
「コルセット?」
暖は大きく頷いた。
「アンマリ痩セル、身体、心、良クナイ! コルセット、シナイ一番、ケド、急ハ無理思ウカラ、トモカク緩メテ!」
一刻も早く締めすぎたコルセットを緩めてやりたくて暖は指示する。
彼女の勢いに押されるようにして護衛の一つ目の一人がモノアに近づいていった。
ところが、その瞬間モノアがものすごい勢いで暴れだす。
「嫌よ! コルセットを外すのだけは、絶対嫌!」
モノアは大声でそう叫んだ。
「……シムスか?」
小さな声がベッドから聞こえた。
「はい。姫さま」
返事をした料理長が頭を下げる。
はじめて知ったが、どうやら彼女の名前はシムスというらしい。
「姫さま、お加減はいかがですか?」
「私など……死んだも同然だ」
料理長の問いかけに自嘲の言葉が返ってくる。
「何を仰います!」
料理長はバッと顔を上げた。
「陛下のお情けをいただけなくなった側妃に、どんな存在意義がある」
姫さまと呼ばれた女性の声は、血を吐くような悲哀に満ちていた。
「それは! ……モノアさまの体調が優れないからで、元気にさえなられれば陛下もきっと!」
料理長は彼女の姫さまを懸命に慰める。
しかしモノアと呼ばれた側妃は、首を横にふった。
「例え、陛下の御心がまだ私にあったとしても、既に私には陛下の寵愛を受ける資格がない」
うつむき涙を堪えるかのように唇を噛むモノア。
寵愛を受ける資格がないということは、どういうことだろう?
(ひょっとして、この姫さまも――――)
暖は彼女の細すぎる腰を見つめた。
これだけの細さではまともな生理があるとはとても思えない。
少なくとも暖にはそう思えた。
料理長は、膝をついたまま前に出る。
「姫さま。姫さまのその憂いを払うために、今日はこのシムス、無礼を承知でお目通りを願い出ました」
そう言いながら料理長は暖の手を握ると、彼女を前へと押し出す。
「姫さま。この者は私の配下。生理を失った侍女や下女を癒した者です!」
その言葉を聞いたモノアは、パッ!と顔を上げた。
彼女のたった一つの目が、ヒッシと暖を見つめてくる。
溺れる者が一本の藁に縋るかのような眼差しだった。
暖は思わずモノアの方に駆け出す。
控えていた三人の一つ目が慌てたように前に出て、暖を押し止めた。
三人に捕まりながら暖は大声でモノアを怒鳴りつける!
「モウ! 痩セスギデショウ! ソンナ痩セテ、ドウスル? 死ニタイ? 自殺ナノ? ……馬鹿デショ! 絶対!!」
怒鳴られたモノアはポカンと口を開けた。
あまりにも痩せ細ったその姿に、暖の心の奥から怒りが沸いてくる。
料理長が慌てて暖を引き下がらせた。
「ウララ、落ち着け!」
「死ニソウ人、見テ、落チ着ク、無理!」
暖に怒鳴り返された料理長は顔色を失った。
「……死にそう?」
「当タリ前! コノママ痩セル、絶対死ヌ!」
実際、モノアは今生きているのが不思議なくらい痩せていた。
魔族の強い生命力のおかげで生きているのだろうが、それだって限度があるだろう。
(何より、彼女は精神的に落ちているわ)
体の不調は心に繋がる。
今までのモノアの発言を聞く限り、彼女はうつ状態なのではないだろうか?
痩せて死ぬ前に自殺する可能性だってないとはいえなかった。
(私は精神科医じゃないから、確実とは言えないけれど)
それでも黙って見過ごすわけにはいかなかった。
「トモカク、早ク、コルセット緩メテ!」
暖の言葉に、料理長と他の一つ目たちが首を傾げる。
「コルセット?」
暖は大きく頷いた。
「アンマリ痩セル、身体、心、良クナイ! コルセット、シナイ一番、ケド、急ハ無理思ウカラ、トモカク緩メテ!」
一刻も早く締めすぎたコルセットを緩めてやりたくて暖は指示する。
彼女の勢いに押されるようにして護衛の一つ目の一人がモノアに近づいていった。
ところが、その瞬間モノアがものすごい勢いで暴れだす。
「嫌よ! コルセットを外すのだけは、絶対嫌!」
モノアは大声でそう叫んだ。
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