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第四章 選んだ先の未来へ向かいます!
魔界の成人は五十歳!?
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(な! なんで、ブラット? 後宮って、魔王以外の男性は入れないんじゃなかったの!?)
暖は心の中でパニックをおこす。
しかし正妃も、そしてモノアでさえもブラットの存在を不思議に思っていないようだ。
正妃は落ち着いているし、モノアも顔をしかめてはいても驚いている風はない。
「なぜブラットさまが、この場に?」
声を荒げずにそう聞いていた。
モノアの問いへの答えは、正妃の後ろから返ってくる。
「私の愛し子が、あなたが連れてきたその女性を知っていると言うからよ」
部屋の奥にあった衝立の影から一人の人物が歩み出てきた。
見た目は人間で、正妃には及ばないがたいへん大きな胸を持っている美人だ。
言うまでもないだろが腰は折れそうなほど細い。
「イノト!?」
モノアが驚きの声をあげた。
どうやら彼女が噂のイノトらしい。
「愛シ子?」
「ブラットさまは、イノトさまの御子よ。まだ成人前でいらっしゃるから、後宮への出入りを許されておられるの」
暖の質問にモノアが答えてくれた。
暖は目を丸くする。
「成人前?!」
(成人って、あの成人?)
ブラットがイノトの子供だという話にも驚いたが、それより何より『成人前』という言葉の方に暖は驚愕する。
ブラットの外見は角はあるが、他は二十代の立派な青年。
言動は軽いけど、どう見ても十代には思えない。
その感覚は間違いではなく――――
「俺は、三十歳だからね」
あっけらかんとブラットはそう言った。
魔界の成人は五十歳。三十歳なんてまだまだひよっこなのだそうだ。
子をなすこともできず……しかし、それゆえに後宮へ入ることは許される。
「いったい、どういう感覚なのっ?!」
暖は思わず日本語で叫んでしまった。
三十歳にもなって未成年などと、どの面下げて言うのだと思ってしまう。
ブラットのどうにもならないダメダメな性格は、まだ子供だという甘えからきているのかもしれなかった。
彼の今までの行動も、わがままな子供のものだと思えばそれほど不思議なことではない。
(でも、そんなこと、許されるはずがないでしょう!)
それを言うなら、暖だってまだ二十代だった。
確実にブラットより若い自信がある。
(そんな理由で、今までの暴言をなかったことになんてしないわよ!)
遠慮するものか! と、暖は強くブラットを睨む。
そんな彼女の内心を知るはずもない男は、ヒョコヒョコと軽い様子で近づいてきた。
「いやぁ、まさか子豚ちゃんが、後宮――――それも、正妃さまのお側にいるなんてね。……意外だよねぇ?」
親しそうに話しかけてくるブラット。
彼の頭の中からは暖に苦しめられた記憶などすっかり抜け落ちているのだろう。
ニヤリと笑うと、なんのためらいもなく暖の耳元に顔を寄せた。
声をひそめ、囁いてくる。
「正妃さまは、ダンケルが誰よりお嫌いだ。奴の恋人だって知られたくなかったら、俺と話を合わせた方がいいよ」
そう脅してきた。
(誰が、恋人よ!!)
まず暖はそちらに怒る。
その後、キッ! とブラットを睨みつけた。
「人、子豚、呼ブ男、合ワセル話、ナイ!」
こんなところでブラットに屈してなんてなるものか! と暖は思う。
だいたい暖を後宮に送り込んだのはダンケルではなく魔王の方だ。暖に後ろ暗いところは何もない。
それに後宮に放り出された当初と違い、今の暖にはモノアのように味方となってくれる存在がたくさんいた。
問答無用で襲われるような心配は、もうないだろう。
(言いたいなら言いなさいよ! 私はきちんと説明をして、正妃さまにわかってもらうから!)
そんな思いを込めて、暖はブラットを睨み続ける。
思いもよらない彼女の反応に、ブラットはポカンと口を開けた。
モノアも驚き、我が子を怒鳴られたイノトは眼差しをきつくする。
赤い唇から、牙の先端がチラッとのぞいた。
丁度そのタイミングで、その場に朗らかな笑い声が響く。
「ホホホ! ……元気の良い娘だこと」
笑ったのは正妃だった。
圧倒的な存在感を持つ美貌の女性が、暖の方へと視線を向ける。
「モノアをここまで変えた者が、いったいどんな存在か気になったのだけれど。……フフ、思った以上に元気の良いお嬢さんだったようね?」
正妃は上機嫌でそう言った。キラリと光る瞳が暖を映す。
「ウララと、いったかしら? ある日突然後宮に現れて、いつの間にか後宮の下女や侍女を癒した者。身元は不詳で片言の言葉を話し、なんの種族かもわからない――――不思議な娘よねぇ?」
クスクスと笑いながら話す正妃は、とっくに暖の調査を済ませているようだ。
さすが、後宮ナンバー1の地位を持つ女性である。
モノアが、焦ったように暖の前に飛び出してきた。
「正妃さま。ウララは決して怪しいものではありません! 彼女の身元は私が保証します!」
懸命に暖を庇うモノア。
その優しさに暖は感動する。
正妃は、困ったように苦笑した。
「善良なモノア。私は、ウララを責めているわけではないわよ。むしろ、彼女が行ったことには感謝しているの。……ただ、この後宮の中に私の知らない者がいることは、あまり好ましいことではないのよ。わかるでしょう?」
そう言って正妃は暖を見る。
暖は覚悟を決めた。
(ここまで調べられているのなら、下手に隠し立てをしない方がいいわ)
そう思う。
心配そうなモノアを制して前に出た。
「正妃サマ。私、ウララ。……人間デス」
暖は、はっきりとそう告げた。
暖は心の中でパニックをおこす。
しかし正妃も、そしてモノアでさえもブラットの存在を不思議に思っていないようだ。
正妃は落ち着いているし、モノアも顔をしかめてはいても驚いている風はない。
「なぜブラットさまが、この場に?」
声を荒げずにそう聞いていた。
モノアの問いへの答えは、正妃の後ろから返ってくる。
「私の愛し子が、あなたが連れてきたその女性を知っていると言うからよ」
部屋の奥にあった衝立の影から一人の人物が歩み出てきた。
見た目は人間で、正妃には及ばないがたいへん大きな胸を持っている美人だ。
言うまでもないだろが腰は折れそうなほど細い。
「イノト!?」
モノアが驚きの声をあげた。
どうやら彼女が噂のイノトらしい。
「愛シ子?」
「ブラットさまは、イノトさまの御子よ。まだ成人前でいらっしゃるから、後宮への出入りを許されておられるの」
暖の質問にモノアが答えてくれた。
暖は目を丸くする。
「成人前?!」
(成人って、あの成人?)
ブラットがイノトの子供だという話にも驚いたが、それより何より『成人前』という言葉の方に暖は驚愕する。
ブラットの外見は角はあるが、他は二十代の立派な青年。
言動は軽いけど、どう見ても十代には思えない。
その感覚は間違いではなく――――
「俺は、三十歳だからね」
あっけらかんとブラットはそう言った。
魔界の成人は五十歳。三十歳なんてまだまだひよっこなのだそうだ。
子をなすこともできず……しかし、それゆえに後宮へ入ることは許される。
「いったい、どういう感覚なのっ?!」
暖は思わず日本語で叫んでしまった。
三十歳にもなって未成年などと、どの面下げて言うのだと思ってしまう。
ブラットのどうにもならないダメダメな性格は、まだ子供だという甘えからきているのかもしれなかった。
彼の今までの行動も、わがままな子供のものだと思えばそれほど不思議なことではない。
(でも、そんなこと、許されるはずがないでしょう!)
それを言うなら、暖だってまだ二十代だった。
確実にブラットより若い自信がある。
(そんな理由で、今までの暴言をなかったことになんてしないわよ!)
遠慮するものか! と、暖は強くブラットを睨む。
そんな彼女の内心を知るはずもない男は、ヒョコヒョコと軽い様子で近づいてきた。
「いやぁ、まさか子豚ちゃんが、後宮――――それも、正妃さまのお側にいるなんてね。……意外だよねぇ?」
親しそうに話しかけてくるブラット。
彼の頭の中からは暖に苦しめられた記憶などすっかり抜け落ちているのだろう。
ニヤリと笑うと、なんのためらいもなく暖の耳元に顔を寄せた。
声をひそめ、囁いてくる。
「正妃さまは、ダンケルが誰よりお嫌いだ。奴の恋人だって知られたくなかったら、俺と話を合わせた方がいいよ」
そう脅してきた。
(誰が、恋人よ!!)
まず暖はそちらに怒る。
その後、キッ! とブラットを睨みつけた。
「人、子豚、呼ブ男、合ワセル話、ナイ!」
こんなところでブラットに屈してなんてなるものか! と暖は思う。
だいたい暖を後宮に送り込んだのはダンケルではなく魔王の方だ。暖に後ろ暗いところは何もない。
それに後宮に放り出された当初と違い、今の暖にはモノアのように味方となってくれる存在がたくさんいた。
問答無用で襲われるような心配は、もうないだろう。
(言いたいなら言いなさいよ! 私はきちんと説明をして、正妃さまにわかってもらうから!)
そんな思いを込めて、暖はブラットを睨み続ける。
思いもよらない彼女の反応に、ブラットはポカンと口を開けた。
モノアも驚き、我が子を怒鳴られたイノトは眼差しをきつくする。
赤い唇から、牙の先端がチラッとのぞいた。
丁度そのタイミングで、その場に朗らかな笑い声が響く。
「ホホホ! ……元気の良い娘だこと」
笑ったのは正妃だった。
圧倒的な存在感を持つ美貌の女性が、暖の方へと視線を向ける。
「モノアをここまで変えた者が、いったいどんな存在か気になったのだけれど。……フフ、思った以上に元気の良いお嬢さんだったようね?」
正妃は上機嫌でそう言った。キラリと光る瞳が暖を映す。
「ウララと、いったかしら? ある日突然後宮に現れて、いつの間にか後宮の下女や侍女を癒した者。身元は不詳で片言の言葉を話し、なんの種族かもわからない――――不思議な娘よねぇ?」
クスクスと笑いながら話す正妃は、とっくに暖の調査を済ませているようだ。
さすが、後宮ナンバー1の地位を持つ女性である。
モノアが、焦ったように暖の前に飛び出してきた。
「正妃さま。ウララは決して怪しいものではありません! 彼女の身元は私が保証します!」
懸命に暖を庇うモノア。
その優しさに暖は感動する。
正妃は、困ったように苦笑した。
「善良なモノア。私は、ウララを責めているわけではないわよ。むしろ、彼女が行ったことには感謝しているの。……ただ、この後宮の中に私の知らない者がいることは、あまり好ましいことではないのよ。わかるでしょう?」
そう言って正妃は暖を見る。
暖は覚悟を決めた。
(ここまで調べられているのなら、下手に隠し立てをしない方がいいわ)
そう思う。
心配そうなモノアを制して前に出た。
「正妃サマ。私、ウララ。……人間デス」
暖は、はっきりとそう告げた。
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