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第四章 選んだ先の未来へ向かいます!
王子さまが王さまになって魔界に乗り込んできました!
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時は少し遡る。
暖と正妃が出会った頃、魔王は謁見の間で不本意な再会を果たしていた。
「………………何故、人間の王の使節団に、お前がいる?」
「望まれたのじゃから仕方あるまい。おぬしと違い、わしには人望があるからの」
フォッフォッと笑いながら、使節団とは思えない小さな老婆がふんぞり返る。
思わず握り締めた拳の中に、魔王は一撃必殺の攻撃魔法を溜めた。
「相変わらず短気なバカじゃの。……おぬしがその魔法を放てば、この会談は水泡に帰すぞ」
フンと鼻で笑いながら、老婆が魔王をバカにする。
ギリギリと歯軋りした魔王は、それでも拳の中の魔法を消し去った。
「――――ディアナ、懐かしいのでしょうが、じゃれ合いはそのくらいにしてしてくれませんか? 私たちはここに遊びに来たわけではないのですから」
睨み合う魔王と老婆の横から涼やかな声がかかる。
声を発したのは、妖精かと見紛うほどに美しい人間の男性だ。
透きとおるような白い肌と整い過ぎた顔、深い紫の瞳が真っ直ぐ魔王に向けられている。
魔王の居城で怯みもせず凛として立つ彼は、言わずと知れたアルディアだ。
相変わらずの美貌だが、ただ一つ金冠を戴く白銀の髪が肩ほどの長さに切られていた。
まあそれはまたそれで、長髪とは別種のキリリとした美しさであるのだが。
「ハ? 誰がじゃれ合っておる! 懐かしくなんぞあるはずがないじゃろう!」
「ハ? 誰がじゃれ合っている! 冗談でも笑えぬぞ。――――人間の王よ」
ディアナと魔王は、ピッタリ同じタイミングでアルディアに怒鳴り返した。
二人睨み合い、同時にフンと横を向く。
さすが長年の因縁の中。一糸乱れぬ息の合いようである。
『人間の王』と呼ばれたアルディアは、動じた風もなく二人に目を向けた。
「では、さっさと平和条約を結んでしまいましょう。無駄口に付き合うほど私は暇ではありません」
相変わらずの高飛車。傲岸不遜の王子さま――――いや、王さまだった。
さすがの魔王も呆れたような視線を返す。
「――――翻訳魔法は完璧か。人間は王を見失っていると聞いたが……どうやら正しき王が即位されたようだな。お祝い申し上げよう」
魔王の言葉に、アルディアはキレイな顔をしかめた。
「めでたくなどあるはずがないでしょう。王なんて面倒なモノ私はなりたくありませんでしたよ。……それでも王にならなければ“大切なもの”を奪い返すこともできない。……苦渋の決断です」
心底嫌そうにアルディアは話す。
彼の後ろに控える使節団の端っこにいたサーバスは、顔色を悪くした。
「アルディアさま……そんな、バカ正直に」
仕える主君に対して『バカ』などと、彼もたいがいにたいがいな側近である。
隣にいたウルフィアが、困ったように苦笑した。
「王の言う“大切なもの”とは、我が魔界にお招きしている治癒魔法の使い手殿かな?」
白々しく魔王が問う。
「自分で攫うように命令しておきながら『招く』などと、相変わらず面の皮が厚い男じゃの」
ディアナが、呆れかえって肩をすくめた。
アルディアは平然としている。
「その通りですよ。だからこそ今回の平和条約も、有り得ないくらいあなた方に有利にしてありますでしょう? 無駄な交渉に割く時間はありません。さっさとそれにサインして、暖を返してください」
あっさりと魔王の言葉を認めた。
勝手に人間界に介入し戦争を起こして、引っ掻き回すだけ引っ掻き回した魔族。
あげく彼らは、自分の都合で途中で引き上げた。
魔族の身勝手な行いは、戦争の相手国トクシャの証言で全て明らかになっている。
つまり今回の戦争の責任は八割方魔族にあり、その事実は誰もが認めるところなのだ。
しかし今から結ぼうとしている平和条約は、その割には魔族に賠償責任を問わないものとなっていた。
領地の没収は一切なく賠償金も必要最低限。責任者の処罰も求めていない。
「そちらは、それで良かったのかな?」
魔王は面白そうに聞いてくる。
「魔族は証拠を残しませんでしたからね。捕虜はもちろん、遺体の一部さえ戦場に残さなかった。魔力の痕跡も消し去っている。……こちらにあるのはトクシャの言い分と目撃証言だけ。多少強引でも、そちらにでっち上げだと言い張られてしまえば交渉は長引きます。そんな暇は、ないのだと言いましたでしょう?」
柳眉を上げながら、アルディアは魔王に冷たい視線を投げた。
暖と正妃が出会った頃、魔王は謁見の間で不本意な再会を果たしていた。
「………………何故、人間の王の使節団に、お前がいる?」
「望まれたのじゃから仕方あるまい。おぬしと違い、わしには人望があるからの」
フォッフォッと笑いながら、使節団とは思えない小さな老婆がふんぞり返る。
思わず握り締めた拳の中に、魔王は一撃必殺の攻撃魔法を溜めた。
「相変わらず短気なバカじゃの。……おぬしがその魔法を放てば、この会談は水泡に帰すぞ」
フンと鼻で笑いながら、老婆が魔王をバカにする。
ギリギリと歯軋りした魔王は、それでも拳の中の魔法を消し去った。
「――――ディアナ、懐かしいのでしょうが、じゃれ合いはそのくらいにしてしてくれませんか? 私たちはここに遊びに来たわけではないのですから」
睨み合う魔王と老婆の横から涼やかな声がかかる。
声を発したのは、妖精かと見紛うほどに美しい人間の男性だ。
透きとおるような白い肌と整い過ぎた顔、深い紫の瞳が真っ直ぐ魔王に向けられている。
魔王の居城で怯みもせず凛として立つ彼は、言わずと知れたアルディアだ。
相変わらずの美貌だが、ただ一つ金冠を戴く白銀の髪が肩ほどの長さに切られていた。
まあそれはまたそれで、長髪とは別種のキリリとした美しさであるのだが。
「ハ? 誰がじゃれ合っておる! 懐かしくなんぞあるはずがないじゃろう!」
「ハ? 誰がじゃれ合っている! 冗談でも笑えぬぞ。――――人間の王よ」
ディアナと魔王は、ピッタリ同じタイミングでアルディアに怒鳴り返した。
二人睨み合い、同時にフンと横を向く。
さすが長年の因縁の中。一糸乱れぬ息の合いようである。
『人間の王』と呼ばれたアルディアは、動じた風もなく二人に目を向けた。
「では、さっさと平和条約を結んでしまいましょう。無駄口に付き合うほど私は暇ではありません」
相変わらずの高飛車。傲岸不遜の王子さま――――いや、王さまだった。
さすがの魔王も呆れたような視線を返す。
「――――翻訳魔法は完璧か。人間は王を見失っていると聞いたが……どうやら正しき王が即位されたようだな。お祝い申し上げよう」
魔王の言葉に、アルディアはキレイな顔をしかめた。
「めでたくなどあるはずがないでしょう。王なんて面倒なモノ私はなりたくありませんでしたよ。……それでも王にならなければ“大切なもの”を奪い返すこともできない。……苦渋の決断です」
心底嫌そうにアルディアは話す。
彼の後ろに控える使節団の端っこにいたサーバスは、顔色を悪くした。
「アルディアさま……そんな、バカ正直に」
仕える主君に対して『バカ』などと、彼もたいがいにたいがいな側近である。
隣にいたウルフィアが、困ったように苦笑した。
「王の言う“大切なもの”とは、我が魔界にお招きしている治癒魔法の使い手殿かな?」
白々しく魔王が問う。
「自分で攫うように命令しておきながら『招く』などと、相変わらず面の皮が厚い男じゃの」
ディアナが、呆れかえって肩をすくめた。
アルディアは平然としている。
「その通りですよ。だからこそ今回の平和条約も、有り得ないくらいあなた方に有利にしてありますでしょう? 無駄な交渉に割く時間はありません。さっさとそれにサインして、暖を返してください」
あっさりと魔王の言葉を認めた。
勝手に人間界に介入し戦争を起こして、引っ掻き回すだけ引っ掻き回した魔族。
あげく彼らは、自分の都合で途中で引き上げた。
魔族の身勝手な行いは、戦争の相手国トクシャの証言で全て明らかになっている。
つまり今回の戦争の責任は八割方魔族にあり、その事実は誰もが認めるところなのだ。
しかし今から結ぼうとしている平和条約は、その割には魔族に賠償責任を問わないものとなっていた。
領地の没収は一切なく賠償金も必要最低限。責任者の処罰も求めていない。
「そちらは、それで良かったのかな?」
魔王は面白そうに聞いてくる。
「魔族は証拠を残しませんでしたからね。捕虜はもちろん、遺体の一部さえ戦場に残さなかった。魔力の痕跡も消し去っている。……こちらにあるのはトクシャの言い分と目撃証言だけ。多少強引でも、そちらにでっち上げだと言い張られてしまえば交渉は長引きます。そんな暇は、ないのだと言いましたでしょう?」
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