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第四章 選んだ先の未来へ向かいます!
魔王の選択は?
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魔王は、わざとらしく目を見開いて見せる。
「人間の王は、交渉で得られる利益よりも、人の子一人の解放が早まることを選ばれるか? それは執政者として失格なのでは?」
アルディアは、フンと鼻を鳴らした。
「利益を渡すつもりもないくせに、よく仰る。……得られるかどうかもわからぬ利益にかける時間よりも、私自身の“大切なもの”を優先するのは当た有り前でしょう? それくらいのメリットがなければ、王なんてやってられませんよ」
身も蓋もないアルディアの言葉に、魔王は「ハハッ!」と笑い出した。
「これはいい! 新しい人間の王は我ら魔族に思考回路がよく似ている。わけのわからぬ正義や規則なぞに縛られる輩より、よほど話が通じやすい。……しかし、そんなに正直に自分の望みを話してしまってよいのかな? あなたが“大切なもの”に執着すればするほど魔族はそこにつけこむぞ?」
魔族に似ていると言われたアルディアは、嫌そうに眉をひそめた。
一緒にするなとばかりに、ジロリと魔王を睨みつける。
「つけこませるはずなどないでしょう? なんのためにディアナや他の者たちを連れてきたのだと思っているのです? この引きこもりの老人たちを、ここまで引っ張ってくるのはたいへんだったのですよ」
アルディアの言葉に、ディアナはチッと舌打ちした。
そんな老婆の後ろから、
「……自分も引きこもりだったくせに」
「あらあら、ずいぶんな言い草ねぇ?」
「人間の使節団などと面倒な。ギオルと一緒におれば瞬時に移動できるものを」
青い髪、青い瞳のエルフと、気だるげな雰囲気の絶世の美女、もさもさな白髪と長いひげのドワーフが現れた。
言わずと知れたリオールとラミアー、そしてネモである。
辺境の村で、ディアナ共々暖に呼ばれるのを待っていた彼らの前に、王となったアルディアが現れたのはつい先日のことだ。
そこから彼らは、問答無用で使節団に組み込まれた。
「私の留守に、よくも好き勝手してくれましたね。……今後もこの村でウララと一緒に暮らしたいのなら、私に従ってもらいますよ」
その時そう告げたアルディアの美しい顔は、真夏の怪談話よりよほど怖かったという。
巨大すぎて一緒に移動できなかったギオルを残し、彼らはアルディアに従った。
暖との暮らしを盾に取られてしまえば、否やの言えない彼らだ。
姿を現し、隠していた力の波動を表に出したリオールたちに、魔王は顔色を変える。
ディアナはともかく、他の面々までは把握していなかった様子だ。
「なっ!?」
ディアナは、ニィーッと笑った。
「おぬし一人の相手なら、わし一人でも余裕じゃが、他にも魔族が大勢いてはな。力加減を誤って今度こそ世界を滅亡させてしまうやもしれぬ。さすがにそれは寝覚めが悪いからのぉ」
物騒なディアナのセリフを気にもせず、アルディアは他の面々を前に出す。
「改めて紹介する必要もないかもしれませんが、――――"エルフの失われた王"と、"神を堕落させた吸血姫"、“ドワーフの狂戦士”です。……"世界を二度滅ぼしかけた魔女"と仲の良い魔王さまには、紹介などせずともおわかりでしょうがね」
アルディアの言葉に、魔王の周囲にいた魔族たちに動揺が走る。
「仲など良くないわい!」
「仲が良いはずないだろう!」
ディアナと魔王は、またピッタリ息を合わせ怒鳴った。
フン! と顔を背けるタイミングも、やっぱり同じだ。
「最後通告です。……さっさとその平和条約にサインして暖を解放しなさい。さもなければ彼らをけしかけますよ」
アルディアは、冷たくそう宣した。
「まあ、ひどいわ。私たちを番犬かなにかのように言うなんて」
ラミアーが、ツンと唇を尖らせて見せる。
「仕方ありません。全てウララのためです」
リオールは、拳をギュッと握りしめ我慢する。
「グルルル……」
本当に番犬みたいに、ネモが唸り出した。
いまだかつて、魔王に対しここまで高飛車な態度に出た人間の王はいないだろう。
魔王は、唇をかみしめる。
本来なら多少業腹でも、ここは人間の王の要求をのむべきだ。
平和条約は魔界にとって大きなデメリットにならず、それに反して目の前の二つ名の持ち主たちと争うのは、こちらの被害が大きすぎる。
どうするべきかは火を見るより明らかだ。
しかし、今の魔王――――魔界にとって、暖を手放すことはどうあってもできないことだった。
暖の力で、後宮の女性たちは癒されはじめている。
その効果はゆっくりではあるが着実に表れていて、最初に後宮を出た魔族女性が無事妊娠したという報告も受けている。
(まだ、あの娘を手放すわけにはいかぬ!)
魔王は、そう決意する。
だとすれば、どうするべきか?
こちらの事情を話し、説得するか?
それとも――――
グッ! と、魔王が両手を握り締めた、その時、
『ガァォォォオォォォッ――――!!』
と、大地を揺るがす咆哮が、魔界に響き渡った。
「人間の王は、交渉で得られる利益よりも、人の子一人の解放が早まることを選ばれるか? それは執政者として失格なのでは?」
アルディアは、フンと鼻を鳴らした。
「利益を渡すつもりもないくせに、よく仰る。……得られるかどうかもわからぬ利益にかける時間よりも、私自身の“大切なもの”を優先するのは当た有り前でしょう? それくらいのメリットがなければ、王なんてやってられませんよ」
身も蓋もないアルディアの言葉に、魔王は「ハハッ!」と笑い出した。
「これはいい! 新しい人間の王は我ら魔族に思考回路がよく似ている。わけのわからぬ正義や規則なぞに縛られる輩より、よほど話が通じやすい。……しかし、そんなに正直に自分の望みを話してしまってよいのかな? あなたが“大切なもの”に執着すればするほど魔族はそこにつけこむぞ?」
魔族に似ていると言われたアルディアは、嫌そうに眉をひそめた。
一緒にするなとばかりに、ジロリと魔王を睨みつける。
「つけこませるはずなどないでしょう? なんのためにディアナや他の者たちを連れてきたのだと思っているのです? この引きこもりの老人たちを、ここまで引っ張ってくるのはたいへんだったのですよ」
アルディアの言葉に、ディアナはチッと舌打ちした。
そんな老婆の後ろから、
「……自分も引きこもりだったくせに」
「あらあら、ずいぶんな言い草ねぇ?」
「人間の使節団などと面倒な。ギオルと一緒におれば瞬時に移動できるものを」
青い髪、青い瞳のエルフと、気だるげな雰囲気の絶世の美女、もさもさな白髪と長いひげのドワーフが現れた。
言わずと知れたリオールとラミアー、そしてネモである。
辺境の村で、ディアナ共々暖に呼ばれるのを待っていた彼らの前に、王となったアルディアが現れたのはつい先日のことだ。
そこから彼らは、問答無用で使節団に組み込まれた。
「私の留守に、よくも好き勝手してくれましたね。……今後もこの村でウララと一緒に暮らしたいのなら、私に従ってもらいますよ」
その時そう告げたアルディアの美しい顔は、真夏の怪談話よりよほど怖かったという。
巨大すぎて一緒に移動できなかったギオルを残し、彼らはアルディアに従った。
暖との暮らしを盾に取られてしまえば、否やの言えない彼らだ。
姿を現し、隠していた力の波動を表に出したリオールたちに、魔王は顔色を変える。
ディアナはともかく、他の面々までは把握していなかった様子だ。
「なっ!?」
ディアナは、ニィーッと笑った。
「おぬし一人の相手なら、わし一人でも余裕じゃが、他にも魔族が大勢いてはな。力加減を誤って今度こそ世界を滅亡させてしまうやもしれぬ。さすがにそれは寝覚めが悪いからのぉ」
物騒なディアナのセリフを気にもせず、アルディアは他の面々を前に出す。
「改めて紹介する必要もないかもしれませんが、――――"エルフの失われた王"と、"神を堕落させた吸血姫"、“ドワーフの狂戦士”です。……"世界を二度滅ぼしかけた魔女"と仲の良い魔王さまには、紹介などせずともおわかりでしょうがね」
アルディアの言葉に、魔王の周囲にいた魔族たちに動揺が走る。
「仲など良くないわい!」
「仲が良いはずないだろう!」
ディアナと魔王は、またピッタリ息を合わせ怒鳴った。
フン! と顔を背けるタイミングも、やっぱり同じだ。
「最後通告です。……さっさとその平和条約にサインして暖を解放しなさい。さもなければ彼らをけしかけますよ」
アルディアは、冷たくそう宣した。
「まあ、ひどいわ。私たちを番犬かなにかのように言うなんて」
ラミアーが、ツンと唇を尖らせて見せる。
「仕方ありません。全てウララのためです」
リオールは、拳をギュッと握りしめ我慢する。
「グルルル……」
本当に番犬みたいに、ネモが唸り出した。
いまだかつて、魔王に対しここまで高飛車な態度に出た人間の王はいないだろう。
魔王は、唇をかみしめる。
本来なら多少業腹でも、ここは人間の王の要求をのむべきだ。
平和条約は魔界にとって大きなデメリットにならず、それに反して目の前の二つ名の持ち主たちと争うのは、こちらの被害が大きすぎる。
どうするべきかは火を見るより明らかだ。
しかし、今の魔王――――魔界にとって、暖を手放すことはどうあってもできないことだった。
暖の力で、後宮の女性たちは癒されはじめている。
その効果はゆっくりではあるが着実に表れていて、最初に後宮を出た魔族女性が無事妊娠したという報告も受けている。
(まだ、あの娘を手放すわけにはいかぬ!)
魔王は、そう決意する。
だとすれば、どうするべきか?
こちらの事情を話し、説得するか?
それとも――――
グッ! と、魔王が両手を握り締めた、その時、
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