人間は敵ですか?うさぎ転生 

亜々流

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第一章 ウサギは強くなれるのか?

8、うさぎゲリラと冒険者達との戦いに決着がつきました うさぎ達のお葬式

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 その冒険者達は、油断していた。すでにグレードCの場所においてベテランであり、その地に真に危険な存在は居ないと思い込んでいた。
 
 草むらが不自然にゆれる。
 ブラッドは視線だけを動かし、それを見つけ息を呑む。一瞬で保護色に包まれたが、それは確かに虹色角のツノウサギだった。

「ニジイロツノ、オレノ、メノサキ、クサムラ」手で合図を送り、小声でささやく。

 仲間達は一瞬で、先ほどまでの軽口から一転してベテラン冒険者としての顔を見せる。探し回る必要が無いのなら、緊急依頼の納品には十分間に合うのだ。

「ブルース右から、ニック左から回り込め。ニコルは、俺と前から」

 包囲が完成する直前に、草むらから草のカタマリ(保護色付きウサギ)が駆け出した。ブラッドが指示を出す。

「追うぞ! ニコル、カタしてから頼む」

 ブラッドは、足の遅いニコルに、テントなどの片付けを託すと走り出した。村の両親に、仕送りを欠かさない貧乏所帯だ。装備品の紛失や損傷はひかえたい。

 10分くらい、12キロほどは走り続けた冒険者達……。

 

 パーティで一番足の速いニックに、やっとブラッドとブルースが追いついた。

 ニックは立ち止まっている。

「見失った。だが……」二人に向かって言う。

「「……?」」

「見つけた。w」ニックが、遠くを指差す。

 草地が散在する荒野の中で、ウサギはすでに3キロは先の草むらの中にいた。

「うん? お~っ。あれか……よく見つけたな」
「どこ、どこ? う~ん……、遠い。ウサギ早っ。もう、あんな所かよ」

「逃げ切ったつもりで、草でも食ってんのかね」
「うん、でも、うさぎ。バカで助かるわ。w」

「どうする? ニコル待つか?」
 
「いや、だが……。ニコルが来る方向を少し広めに開けて包囲する」 少し考えて、ブラッド。

「距離をとって、回り込む。1キロ……いや、2キロで」しゃがみこむと石で配置を示す。

「いい感じに囲んだら。合図するから、距離つめて行って」
「……で気付かれたら、あとは成り行きで」

「……ん」

「行きますか」

 冒険者達は、静かに走り出した。

 自分達は狩る側だと、思っていた。この場所で、狩られる側に回るとは夢にも思ってなかった。そして戦力を分散させた。



◇=====◇


 
 隠行を使わず、偽装も保護色レベルで、虹色の角を一瞬だけ見せる。耳を澄ましていると、引っかかった事を知る。
 予想外に早く、加護の言語理解が役に立っていた。

 オレは完全に囲まれる前に、耳をそばだてながらも走り出す。残っている者が一人、一人足が速いが、十分にバラけているとは言えない。

 不意に、追いかけてくる足が鈍る。見失いやがった……。

 偽装で、草の形をうさぎに変える。偽装+隠行で姿を隠しながら、不自然にならない様に気をつけて注意を引く。

 動きに変化があり、鼓動が安定する。よし、こちら(偽装の)を見ている。近づいていくと、3人が合流していた。
 どうやら、偽装された草むらを包囲するつもりのようだ……。

 誰から殺るべきか?
 3人から選ぶなら、足の速い人間だろう。二人が駆けつけるまで、1対1の状態を長く取れる。安全に行くなら、一人残ってる人間……。二人やれるか?

 距離をとり、足の速い人間のあとをつける事にする。やがて動きを止め、人間達のリーダーの方を注視している。
 背後から飛び込みざま、十分に魔力をこめた、全力のサンダーブレスを叩き込む。敵は気配に振り向くが、まともに受けた。

「グッワーッ!」

 そのまま突っ込んで、喉元に角を突き立てると崩れ落ちた。死んでいる。オレは、すでに様々な生き物を殺して来た筈なのに、始めて人を殺した事で放心していた。

 左肩をナイフが掠め、血が滲んでいる。

「ニッークッ!」

 人間の仲間が、叫んで駆けてくる。オレは、その場を全力で離れながら、偽装+隠行をかけなおす。

 距離をとると、野営地の場所を目指して加速する。


◇=====◇


 ニックとブルースの二人が、移動を止め合図をまっている。合図を送るのと同時に、ニックが光に包まれ小さな稲光を放つ。

「グッワーッ!」

 ニックが崩れるように倒れると、その上にウサギがいた。

「「ニッークッ!」」

 ブレッドは必死に駆けた。このままではニックが死んでしまう。駆けながらナイフを抜き、全力で投げる。
 ナイフがウサギを掠め、ウサギが逃げ出した。かまわない。死ぬな、死ぬなよ。そう思いながら、ブレッドはニックのところに向かう。

「ニッークッ!」

 ブレッドは、アイテムボックスから取り出して、ポーションを振りかけた。変化が無い。3本目を振りかけ、顔を上げるとブルースが側にたたずんでいた。

「ブルース、ポーション……」

「…………」

「ポーション、使い切っちまって……」

「……ブレッド」

「……なぁ、ポー……」
「ブレッド、ニックはもう死んでる」

「……」

 二人は呆然とニックを見つめていた。

 そしてまた、なすすべも無く悲鳴を聞く事になる。

「ウッワ~ッ!」


◇=====◇


 すぐに姿が見えて来た。遅れてくる足の遅い人間は、魔法使いタイプだったはずだ。回復役でもあるだろう。ここで、殺っておきたい。
 先の二人は、オレが殺した人間のそばから動いていない。いけそうだ。

 相手は、反応する間もなかった。正面からの一撃が腹に決まる。まだ意識があるようで、自らに治癒魔法をかけようとする。が、そこに止めを刺した。

「グボッ……」

 ようやく、残り二人の人間がこちらに来る。

 全力で動き続け、魔力が乏しくなっていたオレは、ひとまず逃げ出す事にする。
 
 
◇=====◇


 ニックとニコルの遺体をアイテムボックスに回収すると、ブラッドは言った。

「撤退する。あれは、B級以上の……化物だ」

「……ああ」

 驕っていた。4人で挑めば、被害はあっても倒せたかもしれない。だが、俺の判断が甘かったせいで、ニックとニコルが死んだ。
 あのウサギは、悪魔のように頭が良い。

 警戒しながら歩を進めるが、いきなり魔法が飛んでくる。敵は、その位置をつかませない。
 見えない敵に、一方的な消耗を強いられる。

「逃がすつもりは、ないようだな」

「夜になっても、交代で寝るって訳にはいかない」

「どうする?」

「昼夜問わずの強行軍で行くしかない」

「いいね、予定より早く着く」

「ブルース、……すまんな」

「ブラッドに任せてダメなら、仕方ないさ」

 何処からとも無く打たれる魔法を、すべて捌ききれる訳も無い。もともと少なかったポーションが尽きた。
 繰り返される一方的な攻撃に、やがて歩みが止まる。

「俺たち、ニコルがいたからな……」

「……ああ、ニックとニコルをつれて帰らなきゃ」

 すでに意識が朦朧としていた。疲れと睡眠不足に加え、怪我が動きを鈍らせる。それが更なる怪我を増やしていった。

 残り二人の冒険者が、三日目の朝を迎える事はなかった。


◇=====◇

 
 負け戦ってのは、疲れるものだ。さらに敗走して、見えない敵に一方的な追撃を受ける。休息もろくに取れない。
 攻撃側のオレは、短いがしっかりと休息している。

 繰り返すたびに、不意打ちブレス魔法の命中率が上がっていく。

 二人の冒険者が撤退を決めて、二日目の夜。すでに、二人はボロボロだ。決着をつけることにして、サンダーブレスを連発する。
 前日には、弾かれていたレベルのブレスでも効いて動けなくなった。

 止めに強めのブレスを放つ。

 鼓動が止まるのを捉えるつもりの耳が、冒険者の最期の声を聞いた。

「お、かあさ……ん……」

 ボロボロの、所どころ焼け焦げた冒険者の亡骸がある。
 
 戦いは終わった。

 緊張感から開放され、力が抜ける。

 先ほどの声が、心の中で何度も何度もリフレインする。

「お、かあさ……ん……」「お、かあさ……ん……」「お、かあさ……ん……」「お、かあさ……ん……」「お、かあさ……ん……」「お、かあさ……ん……」「お、かあさ……ん……」…………。

 気が付くと、吐いていた。固形物は無く、胃液だけが地面に吸われていく。

 苦くてすっぱい胃液が口の中に残る。


◇=====◇


 回収したアイテムボックスの中には、角を折られ皮をはがれたウサギ達、軽く100を超える亡骸があった。
 オレには、その中から家族の姿を確かめる勇気は無かった。

 ファイヤーブレスで火葬に出来るだろうか。使えるようになっていたが、森林火災などを考えると、あまり使わないでいた。
 それに日本で火葬するのに、1時間はかかった筈だ。とても火力が足りそうもない。

 新たなブレス魔法を試してみる事にする。
 風魔法で風化とか、土魔法で分解して大地に返すなんて出来そうだ。ファイヤーブレス、ウィンドブレス、アースブレス、三つのブレスを混ぜてみる。
 灰色のブレスになった。側に落ちていた木の枝に向けてみると、ボロボロと崩れ落ちていく。

 大きめの穴を掘ると、亡骸を出し灰色のブレスを吐き出す。ウサギ達がゆっくりと大地に返って行く。
 魔力を回復させながら、翌日までかかった。

 となりに、4人の冒険者を埋める。
 復讐は終わった。戦いが終わり、死んでしまえば、みんな仏さんだ。

 神様の話を信じるなら、みんな、輪廻転生して、生まれ変わっていく筈だ。来世の幸せを祈る。日本とか、平和で良い所ですよ。

 次は良い世界に、生まれ変わって幸せになってください。

 さようなら。

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