もふもふメイドは魔王の溺愛に気づかない

美雨音ハル

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第4章 魔王様は脱力系?

決着

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「さて、ミル&メルは審査対象外ということで話はまとまりましたが」

「ひどーい!」

「まとまってない!」

「今夜の晩御飯はニンジンステーキでいいですか?」

 リリィが微笑みながらそういうと、二人は押し黙ったのだった。
 こほんと咳をして、話を進める。

「さて、最後はルーチェ選手ですね」

「ふふふっ。ようやくあたしの番が来たわねっ!」

 ルーチェは自信満々で、胸に手を当てて言った。

「今ここにあるものの中で一番美しいもの。何かわかるかしら?」

「どうやらプレゼンから入るようですね」

 リリィに冷静な解説に、ルーチェは怒る。

「いいから答えなさいよ! ほら、そこのあほんだら犬!」

「しょ、ショコラですか?」

 ショコラはいきなり指名されて驚いた。

「えっと……綺麗なもの……この景色ですかね?」

「ちがう! もっと具体的に! ほら、この辺り!」

 そう言って、ルーチェは自分を指す。
 ショコラは困惑した。

「え……? ルーチェさんのコートの赤ボタンとかですか……?」

「もういいわよ!」

 まったく、センスがないんだから、とブツクサ言いながら、ルーチェは自らが作った雪だるまの前にたった。
 ルーチェの雪だるまはかなり巨大で、ショコラが見上げるほどもある。
 ルーチェは布を手に持ち、自信満々に笑った。

「美しいもの。それはこのあた……うひゃああっ!?」

「っ!?」

 布を引いたと同時くらいだっただろうか。
 いきなりルーチェのワイバーン、チビがどこからか飛んできて、ルーチェの巨大な雪だるまに突っ込んだ。
 雪煙が立ち、みんなげほげほと咳をする。

「がるる♪」

 チビはご機嫌にルーチェのほっぺたを舐めた。

「ちょ、チビ、何やって……ってうほぎゃああ!? あたしの顔が!!!」

 ルーチェの雪だるまは、半分崩れていた。

【タイトル:美の権化《ごんげ》】

 どうやらそれは、ルーチェの顔を模ったものだったらしい。
 しかしチビが突っ込んできたせいで、顔面は半分崩壊し、チビが食べていたと思われる鹿か何かの足が片目から飛び出していた。
 おまけに血が雪に散らばり、とんでもないことになっている。

 ショコラは恐怖で震え上がった。
 ホラーすぎる。
 
「うーん、これは減点ですねぇ」

 リリィが立ち上がって、顎に手を当てる。
 シュロも悲しそうな顔をして言った。

「もともとはとてもよかったのかもしれませんが……」

 ラグナルもショコラと一緒に震えていた。

「え、嘘!? 審査続行してんの!?」

「それでは、審査の結果を発表します!」

「ちょ、待ちなさいよー!」

 ルーチェの言う事も聞かず、審査員はおのおの札をあげる。

「やはり鹿の足はちょっと……」
 
 シュロ:一点

「血がよくありませんわ」
 
 リリィ:一点

「怖い……」

 ラグナル:一点

「合計三点です!」

 リリィがにこやかに宣言する。

「ちょっとーーー!!?? あんたら、身内に甘すぎでしょ!! 八百長じゃないのよ!!!」

「いいえ、残念ながら、これはれっきとした公平な審査ですわ。ね、魔王さま?」

 リリィがラグナルを見る。
 魔王であるその男は、厳かに頷いてみせた。

「ほら、魔王様がこう言っているのですから、この勝負、これで決着がつきましたわ」

 シュロがすかさず、順位を持っていたボードに書いて掲げた。

一位 二十九点 ヤマト
二位 二十八点 ショコラ
三位   三点 ルーチェ

審査対象外 ミル&メル

「っということで、優勝はヤマト選手です!」

 ぱちぱちぱちと拍手が起こった。
 チビも嬉しそうに鹿の足を食べている。 

「な、なんなのよこの勝負ぅ……」

 ルーチェが疲れたようにがっくりする。
 するとニコニコと笑ったヤマトが、その肩をとんとんと叩いた。

「勝ったやつは、なんでも好きなこと、命令できるんだよな?」

「へっ? あ、」

 そんなこと言ったっけ、とルーチェは目を白黒させる。

「だったらよォ」

 ヤマトがニヤァと意地の悪い笑みを浮かべた。  

 ◆

 夕方。
 館の庭で、大きな白い雪の塊に向かう二人の影があった。

「ううう、なんでまたあたしがこんなことぉ」

 ルーチェは泣き言を言いながら、雪をどんどん積んでいく。

「いいじゃないですか。ショコラは楽しいですよ」

「あたしは楽しかないわよ!」

 ショコラはあはは、と笑って、小さなシャベルで雪をペンペンと叩いた。
 こうやって外側を固めていけば、丈夫なカマクラができるのだ。

「カマクラを一人で作れ、なんて、鬼畜すぎじゃないかしら」

 文句をブツクサ言うルーチェ。
 ヤマトは、一位の命令として、ルーチェにカマクラを夜までに作るように命じたのだった。
 ラグナルの世話を終えたショコラも、カマクラ作りは大好きだったので、手伝っている。

「あの男、今に見てなさいよ……」

 文句を言うルーチェを見てショコラが笑っていると、さらに怒鳴り散らされてしまったのだった。

「けほっ……」

 しばらく経ってから、ショコラは軽く咳き込んだ。
 冷たい風が、肺をくすぐっている。

「あんた、風邪ひいてるの?」

「えっと、多分さむいからだと思います」

「ちょっと、やーよ。あたしに移さないでよね! しっしっ」
 
 ルーチェは汚いものでも見るかのような目でショコラを見た。
 それから眉をひそめる。

「……ねえ、あんた、熱があるんじゃないの?」

「え?」

「顔、随分赤いけど」

 ショコラは首を傾げた。
 確かに少し眠いような気はするのだが、全然しんどくない。
 きょとんとするショコラを見て、ルーチェは首を振った。

「気のせいか。それよりあんた、もっと木の枝を拾ってきなさいよ! 中の支えにするんだから!」

「はい」

 ショコラはルーチェに言われるがまま、木の枝を拾いに行ったのだった。

 ◆
 
 夜。
 ラグナルの館の庭には、大きなカマクラが完成していた。
 オレンジ色の幻想的な光が、氷から滲み出るように透けている、素敵なカマクラだった。

「ふわぁ~。あったかいです」

 その中で、ショコラたちはみんなでお餅を焼いて食べた。
 遊んだ後に食べるお餅は最高においしいと、ショコラは思ったのだった。
 
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