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ストーカー
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愛車のフェラーリに乗り込みマンションの地下駐車場から車を出すと、向かい側のワンルームマンションから出てきた優を見つけた。
優を追い越し車を降りると和真に気づいたらしい優が駆けてきた。
「和真さん、おはようございます」
「おはよう」
肩にバックをかけた優は黒い半袖シャツに細身のデニムを履いた優が車を見てパッと目を輝かせた。
「オープンカーってはじめてみます!」
「良かった。乗って」
助手席のドアを開けると恐る恐る優が乗り込む。
特に香りがしないことにホッとしながらドアを閉めると運転席に乗り込んだ。
「海と山、どっちに行きたい?」
「そういえば海はしばらく行ってないです」
「じゃあ海に行こう」
エンジンをかけ車をスタートさせると心地よい風が吹き抜けいく。
「ワンルームマンションに住んでいるのか」
「はい。実は両親が事故で亡くなって……遠方に住む祖父母が後見人なんですが、俺が今の高校にもう行くことが決まっていたので、ひとりで住んでるんです」
こちらを向き話す優の表情は穏やかで、悲痛な声ではなかった。
「ひとりで住んで、困ったことはないのか?」
「ストーカーぐらいかな?ひとり暮らしなのは高校に広まってるので」
「部屋に?」
「来られたことありますよ。二階に住んでるからベランダにも」
「危ないな……」
思うより危険な状況に胸騒ぎがする。
車は高速を降り海岸沿いに差し掛かっていた。
適当なところで車を止めると優と共に海岸に出た。
「風が気持ちいいですね」
「ああ」
強すぎもなく弱すぎもない風は心地よく潮風が鼻を擽る。
「和真さん、座ってお昼ご飯にしませんか?」
鞄からシートを出した優が和真を見上げた。
「用意がいいな」
「狭いですが」
そう言いながら優が使い捨ての弁当箱を三つと水筒を出すと紙コップにお茶を注いだ。
「美味しいかどうかわからないですけど」
弁当箱を開くと握り飯と唐揚げ、卵焼き、ポテトサラダ、きんぴらごぼうが入っていた。
割り箸が渡され早速卵焼きに箸を伸ばす。
「ん、美味い……」
甘めのだし巻き卵は美味しく、唐揚げもきんぴらごぼうも好みの味で、ポテトサラダも滑らかで美味しかった。
「きちんと出汁を取ってるんだな」
「こっちの方が好きなんです。ひとりだから夕飯の時に使うだけですけど」
肩を竦め笑った優が安堵したような笑顔を見せた。
「和真さん、香水を作ってるんですね。名刺見て検索して知りました」
「ああ。調香師って言って作る仕事もしてるんだ。香りにさらされるからな、週末はこうして自然の香りを嗅いでリフレッシュしてるんだ」
「そうなんですね」
「鼻が敏感だから舌も同じぐらい敏感なんだ。だからこういう飯が食えるとホッとするよ」
紛れもない本心だった。
「なあ……バイトをしてみないか」
「バイト、ですか?」
「ああ、住み込みのバイトだ。優の住むマンションの正面の黒いデザイナーズマンション分かるか?」
「はい」
「そこは地下に警備室、一階にコンシェルジュもいる。廊下にもカメラがあって俺はその最上階に住んでいる。そこならベランダに侵入もされないだろ?」
「確かにそうですけど……でも、そんな知り合ったばかりの俺を家に入れていいんですか?」
おずおずと和真を見上げる優に和真が頷いた。
「俺は家事が全く出来ない。今は家政婦を雇っているが、香水を使っているのか部屋に戻ると不快なんだ」
「それは……困りますね」
眉を顰めた優に和真が畳み掛けた。
「君の安全は俺が守るから、俺の生活の面倒を見てくれないか?」
頭を下げると優がクスッと笑った。
「俺の方こそよろしくお願いします」
頭を下げた優の頭をそっと撫でると照れたような笑顔を向けられた。
「それじゃ、帰って引っ越しの準備しに帰るか」
「ドライブはもういいんですか?」
「ああ、早く帰り着けば、優の作る飯が食えるからな」
片目を閉じて笑うと優が頷き片付けはじめた。
夕方、帰り着くと優が冷蔵庫に出汁を取っているのだと言うので、駐車場に車を停めると優の住むワンルームマンションに向かった。
階段を昇り廊下を歩いて角部屋の前についた優がポケットから鍵を取り出す。その時ドアの向こうになにかの気配を感じた和真が人差し指に唇を当てた。
「ドアを開けたらドアの向こうに隠れてろ」
そう言うと優が頷き鍵を回して勢いよくドアを開けた。
その瞬間スタンガンが見えその手を掴んだ和真が引きずり出すと男が現れ和真を見るとギョッとした顔をしていた。
そのまま手を相手の背中に回し足を払って押し倒すと真っ青になっている優に「警察!」と和真が叫んだ。
「離せ!」
「も、もしもし……家の中に知らない人がいて……」
優が警察へ連絡する中、男は騒ぎ続ける。
「なんで男といるんだ!」
「うるせぇ!」
男の背中に馬乗りになったまま和真が怒鳴った。サイレンが聞こえ男がさらに暴れる中、警察が駆けつけ男を連れて行った。
「何が起きたか伺いたいので署までご同行願えますか?」
「その前に、もう他に誰もいないか確認してもらっていいですか?ここには彼しか住んでいないので」
和真がそう言うと、優の肩を抱いた。
不安そうな優の顔を見た警察官がふたり部屋に入っていった。
「警察で話をして、それからーー」
「おい!貴様!」
部屋の中から怒号が聞こえ、揉める音がしたかと思うと、もう一人出てきた。
「押し入れに隠れてました」
「やっぱりな……」
和真がそう言い、肩を竦めた。
「それでは行きましょう」
警察官に促され、優と和真がパトカーに乗り込む。
まだ震えている優の肩を抱き手を握ってやると優の頭が和真の肩に凭れかかった。
警察署に到着すると優は和真と別の部屋で話をすることになった。
「鍵を開けようとしたら和真さんからドアの向こうに隠れろって言われて……そしたら和真さんが飛び出してきた知らない人を押さえつけて……」
真っ青な顔で震える優に警察官が優しく問いかけた。
「なにか思い当たることとかある?」
「前からストーカーがいて、ベランダに人がいたりとかあったけど、今日の人たちじゃなかったし……」
「ストーカーとは別の人?」
優が頷くと警察官が分かりました、と言って調書に書くと優に確認を求めた。
部屋から出て廊下で踞る。
ちゃんと鍵は閉めた。なのになんで……もし和真がいなかったら、今頃自分はーーー
考えれば考えるほど怖くなる。
俯きしゃがむ優の視界に茶色の靴先が見え、抱き上げられた。
「和真さん……」
「今夜は真っ直ぐ俺の家に行く。ゆっくり湯に浸かって、早めに寝るといい」
落ち着いた和真の声に震えがゆっくりとおさまっていく。
和真の側なら安心できるかもしれない。
タクシーに乗り込み和真の膝の上に座りながらそう思う。
やがてタクシーが和真の住むデザイナーズマンションの前に到着すると、抱き上げられたままマンションの最上階に向かった。
最上階はワンフロア全てが和真のものでドアを開け部屋に入ると洗面所でおろされた。
「タクシーに乗った時に風呂を入れるよう設定したから、入れると思う」
そう言ってタオルとガウンを棚から出した。
「ゆっくり浸かるといい」
「ありがとうございます……」
礼を言うと和真が洗面所から出て行った。
広い洗面所は黒で統一されたモダンな作りで服を脱ぐと風呂場のドアを開く。
円形の風呂は広くそっと足から湯に浸かると緊張が解けていくのが分かった。
浴槽の縁に頭を預け正面を見ると大きな窓ガラスに夜景が見える。
最上階だから正面が見えなくて良かったと思いながら湯から上がった。
優を追い越し車を降りると和真に気づいたらしい優が駆けてきた。
「和真さん、おはようございます」
「おはよう」
肩にバックをかけた優は黒い半袖シャツに細身のデニムを履いた優が車を見てパッと目を輝かせた。
「オープンカーってはじめてみます!」
「良かった。乗って」
助手席のドアを開けると恐る恐る優が乗り込む。
特に香りがしないことにホッとしながらドアを閉めると運転席に乗り込んだ。
「海と山、どっちに行きたい?」
「そういえば海はしばらく行ってないです」
「じゃあ海に行こう」
エンジンをかけ車をスタートさせると心地よい風が吹き抜けいく。
「ワンルームマンションに住んでいるのか」
「はい。実は両親が事故で亡くなって……遠方に住む祖父母が後見人なんですが、俺が今の高校にもう行くことが決まっていたので、ひとりで住んでるんです」
こちらを向き話す優の表情は穏やかで、悲痛な声ではなかった。
「ひとりで住んで、困ったことはないのか?」
「ストーカーぐらいかな?ひとり暮らしなのは高校に広まってるので」
「部屋に?」
「来られたことありますよ。二階に住んでるからベランダにも」
「危ないな……」
思うより危険な状況に胸騒ぎがする。
車は高速を降り海岸沿いに差し掛かっていた。
適当なところで車を止めると優と共に海岸に出た。
「風が気持ちいいですね」
「ああ」
強すぎもなく弱すぎもない風は心地よく潮風が鼻を擽る。
「和真さん、座ってお昼ご飯にしませんか?」
鞄からシートを出した優が和真を見上げた。
「用意がいいな」
「狭いですが」
そう言いながら優が使い捨ての弁当箱を三つと水筒を出すと紙コップにお茶を注いだ。
「美味しいかどうかわからないですけど」
弁当箱を開くと握り飯と唐揚げ、卵焼き、ポテトサラダ、きんぴらごぼうが入っていた。
割り箸が渡され早速卵焼きに箸を伸ばす。
「ん、美味い……」
甘めのだし巻き卵は美味しく、唐揚げもきんぴらごぼうも好みの味で、ポテトサラダも滑らかで美味しかった。
「きちんと出汁を取ってるんだな」
「こっちの方が好きなんです。ひとりだから夕飯の時に使うだけですけど」
肩を竦め笑った優が安堵したような笑顔を見せた。
「和真さん、香水を作ってるんですね。名刺見て検索して知りました」
「ああ。調香師って言って作る仕事もしてるんだ。香りにさらされるからな、週末はこうして自然の香りを嗅いでリフレッシュしてるんだ」
「そうなんですね」
「鼻が敏感だから舌も同じぐらい敏感なんだ。だからこういう飯が食えるとホッとするよ」
紛れもない本心だった。
「なあ……バイトをしてみないか」
「バイト、ですか?」
「ああ、住み込みのバイトだ。優の住むマンションの正面の黒いデザイナーズマンション分かるか?」
「はい」
「そこは地下に警備室、一階にコンシェルジュもいる。廊下にもカメラがあって俺はその最上階に住んでいる。そこならベランダに侵入もされないだろ?」
「確かにそうですけど……でも、そんな知り合ったばかりの俺を家に入れていいんですか?」
おずおずと和真を見上げる優に和真が頷いた。
「俺は家事が全く出来ない。今は家政婦を雇っているが、香水を使っているのか部屋に戻ると不快なんだ」
「それは……困りますね」
眉を顰めた優に和真が畳み掛けた。
「君の安全は俺が守るから、俺の生活の面倒を見てくれないか?」
頭を下げると優がクスッと笑った。
「俺の方こそよろしくお願いします」
頭を下げた優の頭をそっと撫でると照れたような笑顔を向けられた。
「それじゃ、帰って引っ越しの準備しに帰るか」
「ドライブはもういいんですか?」
「ああ、早く帰り着けば、優の作る飯が食えるからな」
片目を閉じて笑うと優が頷き片付けはじめた。
夕方、帰り着くと優が冷蔵庫に出汁を取っているのだと言うので、駐車場に車を停めると優の住むワンルームマンションに向かった。
階段を昇り廊下を歩いて角部屋の前についた優がポケットから鍵を取り出す。その時ドアの向こうになにかの気配を感じた和真が人差し指に唇を当てた。
「ドアを開けたらドアの向こうに隠れてろ」
そう言うと優が頷き鍵を回して勢いよくドアを開けた。
その瞬間スタンガンが見えその手を掴んだ和真が引きずり出すと男が現れ和真を見るとギョッとした顔をしていた。
そのまま手を相手の背中に回し足を払って押し倒すと真っ青になっている優に「警察!」と和真が叫んだ。
「離せ!」
「も、もしもし……家の中に知らない人がいて……」
優が警察へ連絡する中、男は騒ぎ続ける。
「なんで男といるんだ!」
「うるせぇ!」
男の背中に馬乗りになったまま和真が怒鳴った。サイレンが聞こえ男がさらに暴れる中、警察が駆けつけ男を連れて行った。
「何が起きたか伺いたいので署までご同行願えますか?」
「その前に、もう他に誰もいないか確認してもらっていいですか?ここには彼しか住んでいないので」
和真がそう言うと、優の肩を抱いた。
不安そうな優の顔を見た警察官がふたり部屋に入っていった。
「警察で話をして、それからーー」
「おい!貴様!」
部屋の中から怒号が聞こえ、揉める音がしたかと思うと、もう一人出てきた。
「押し入れに隠れてました」
「やっぱりな……」
和真がそう言い、肩を竦めた。
「それでは行きましょう」
警察官に促され、優と和真がパトカーに乗り込む。
まだ震えている優の肩を抱き手を握ってやると優の頭が和真の肩に凭れかかった。
警察署に到着すると優は和真と別の部屋で話をすることになった。
「鍵を開けようとしたら和真さんからドアの向こうに隠れろって言われて……そしたら和真さんが飛び出してきた知らない人を押さえつけて……」
真っ青な顔で震える優に警察官が優しく問いかけた。
「なにか思い当たることとかある?」
「前からストーカーがいて、ベランダに人がいたりとかあったけど、今日の人たちじゃなかったし……」
「ストーカーとは別の人?」
優が頷くと警察官が分かりました、と言って調書に書くと優に確認を求めた。
部屋から出て廊下で踞る。
ちゃんと鍵は閉めた。なのになんで……もし和真がいなかったら、今頃自分はーーー
考えれば考えるほど怖くなる。
俯きしゃがむ優の視界に茶色の靴先が見え、抱き上げられた。
「和真さん……」
「今夜は真っ直ぐ俺の家に行く。ゆっくり湯に浸かって、早めに寝るといい」
落ち着いた和真の声に震えがゆっくりとおさまっていく。
和真の側なら安心できるかもしれない。
タクシーに乗り込み和真の膝の上に座りながらそう思う。
やがてタクシーが和真の住むデザイナーズマンションの前に到着すると、抱き上げられたままマンションの最上階に向かった。
最上階はワンフロア全てが和真のものでドアを開け部屋に入ると洗面所でおろされた。
「タクシーに乗った時に風呂を入れるよう設定したから、入れると思う」
そう言ってタオルとガウンを棚から出した。
「ゆっくり浸かるといい」
「ありがとうございます……」
礼を言うと和真が洗面所から出て行った。
広い洗面所は黒で統一されたモダンな作りで服を脱ぐと風呂場のドアを開く。
円形の風呂は広くそっと足から湯に浸かると緊張が解けていくのが分かった。
浴槽の縁に頭を預け正面を見ると大きな窓ガラスに夜景が見える。
最上階だから正面が見えなくて良かったと思いながら湯から上がった。
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