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ポケットに入れていたスマートフォン手に洗面所から出ると、廊下で待っていた和真が顔をあげた。
「大丈夫か?」
「はい。お腹、空きましたよね……部屋に戻って出汁を取ってきたらなにか作りましょうか?」
「いや、取りに行くのは明日の朝でいい。夕食はデリバリーを頼もう」
「すみません」
俯いた優に和真の大きな手が頭を撫でた。
「さあ、こっちに」
手を引かれリビングに行くとソファーに座らされた。
「食べたいものは?」
「なんでも大丈夫です」
優の言葉にデリバリーのアプリを開くと隣に腰をおろし、生パスタの店の画面を見せた。
「どれにする」
ジッと見ていた優が指でさしたものを見て選ぶと和真もひとつチョイスし送信した。
「一応、今回のこと、弁護士に頼んでいる。これで優は直接犯人と関わることはない」
「ありがとうございます」
ホッとした優の表情に守ってやりたい、と思った。
「明日荷物を運び出したら、生活をするうえでの取り決めをしよう」
「はい」
丁度インターホンが鳴った。立ち上がった和真が玄関に向かう。
そして戻ってくるとビニールの中から容器とフォークを出した。
「水でいいか?」
「はい」
冷蔵庫からペットボトルを一本と飲みかけのワインボトルを出すとグラスを二個持って戻った。
「食べよう」
「いただきます」
手を合わせ優がパスタを食べ始める。和真が頼んだのはフレッシュトマトのソースにモッツァレラチーズとバジルの乗ったパスタで、それを食べながらワインで流し込む。
「ワインですか?いい匂いですね」
「ああ、そうだな。バーボンも好きだがワインの香りも悪くない。だがアルコールは舌を麻痺させる。だから土曜だけ嗜むんだ」
「お仕事、大事にされているんですね」
「まあな。やりたくてしている仕事だから。そうだ」
あの時のクッキーを思い出して優の方を見た。
「あのクッキーもいい匂いだった。バニラだが、バニラをベースにしても再現出来ない」
「タヒチ産のバニラビーンズを使ったからだと思います。生クリームの中でゆっくり加熱して香りを出したんです」
「タヒチ産は香りが違うのか」
「そう言われてます。まだ余っているので、荷物を持ってきたら作ってみましょうか」
「ああ、ぜひ頼む」
あの香りをもう一度嗅げる。そう思うと楽しみだった。
優を客間に案内し、寝かせてから寝室に入ると村上に電話をかけた。
「どうした?」
「実はこの間話した子がストーカーに遭っていて、ウチで預かることにした」
「大丈夫なのか?」
村上の心配はもっともだろう。部屋には金目のものも多くある。
「大丈夫だ。それより、明日その子の荷物をウチに運びたいんだ。そっちの車で手伝いに来てくれないか?」
「構わないが」
「礼はムートシルトでどうだ?」
高級ワインの名前を出すと村上が喜んだ。
「任せておけ」
「じゃあ、九時にウチに来てくれ」
通話を切りベッドの脇にスマートフォンを置くとベッドに転がった。
思わぬ形で優と同居ということになってしまったが、案外悪くないことかもしれないなと思ってしまった。
「大丈夫か?」
「はい。お腹、空きましたよね……部屋に戻って出汁を取ってきたらなにか作りましょうか?」
「いや、取りに行くのは明日の朝でいい。夕食はデリバリーを頼もう」
「すみません」
俯いた優に和真の大きな手が頭を撫でた。
「さあ、こっちに」
手を引かれリビングに行くとソファーに座らされた。
「食べたいものは?」
「なんでも大丈夫です」
優の言葉にデリバリーのアプリを開くと隣に腰をおろし、生パスタの店の画面を見せた。
「どれにする」
ジッと見ていた優が指でさしたものを見て選ぶと和真もひとつチョイスし送信した。
「一応、今回のこと、弁護士に頼んでいる。これで優は直接犯人と関わることはない」
「ありがとうございます」
ホッとした優の表情に守ってやりたい、と思った。
「明日荷物を運び出したら、生活をするうえでの取り決めをしよう」
「はい」
丁度インターホンが鳴った。立ち上がった和真が玄関に向かう。
そして戻ってくるとビニールの中から容器とフォークを出した。
「水でいいか?」
「はい」
冷蔵庫からペットボトルを一本と飲みかけのワインボトルを出すとグラスを二個持って戻った。
「食べよう」
「いただきます」
手を合わせ優がパスタを食べ始める。和真が頼んだのはフレッシュトマトのソースにモッツァレラチーズとバジルの乗ったパスタで、それを食べながらワインで流し込む。
「ワインですか?いい匂いですね」
「ああ、そうだな。バーボンも好きだがワインの香りも悪くない。だがアルコールは舌を麻痺させる。だから土曜だけ嗜むんだ」
「お仕事、大事にされているんですね」
「まあな。やりたくてしている仕事だから。そうだ」
あの時のクッキーを思い出して優の方を見た。
「あのクッキーもいい匂いだった。バニラだが、バニラをベースにしても再現出来ない」
「タヒチ産のバニラビーンズを使ったからだと思います。生クリームの中でゆっくり加熱して香りを出したんです」
「タヒチ産は香りが違うのか」
「そう言われてます。まだ余っているので、荷物を持ってきたら作ってみましょうか」
「ああ、ぜひ頼む」
あの香りをもう一度嗅げる。そう思うと楽しみだった。
優を客間に案内し、寝かせてから寝室に入ると村上に電話をかけた。
「どうした?」
「実はこの間話した子がストーカーに遭っていて、ウチで預かることにした」
「大丈夫なのか?」
村上の心配はもっともだろう。部屋には金目のものも多くある。
「大丈夫だ。それより、明日その子の荷物をウチに運びたいんだ。そっちの車で手伝いに来てくれないか?」
「構わないが」
「礼はムートシルトでどうだ?」
高級ワインの名前を出すと村上が喜んだ。
「任せておけ」
「じゃあ、九時にウチに来てくれ」
通話を切りベッドの脇にスマートフォンを置くとベッドに転がった。
思わぬ形で優と同居ということになってしまったが、案外悪くないことかもしれないなと思ってしまった。
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