【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清

文字の大きさ
4 / 129
第一章 社畜と女子高生と湾岸タワマンルームシェア

4.女子高生と社畜料理

しおりを挟む


 常磐理瀬は大人っぽい雰囲気の女子高生で、制服を着ていた時はなんともいえない美しさがあった。

 女子高生らしい「かわいい」というイメージとは別の、落ち着いた美しさだ……

 アラサー社畜の俺が女子高生のかわいさを語るなんて、それだけで事案発生しそうだな。

 わざわざ語ったのは理由がある。休日の常磐理瀬は、全くそうではなかったのだ。

 土曜の午前中、俺は休日出勤で雑務を済ませ、常磐理瀬にSMSを打った。仕方がないので電話したら「……ああ、はい、はい」と明らかに寝起きの声で喋っていた。俺がわざわざタワーマンションの屋上階まで迎えに行くと、ぼさぼさ頭のジャージ姿で玄関から顔を出した。


「……調子悪いの?今日はやめとくか?」

「いえ……寝起きが悪いだけです。準備するので、中で待っていてください。私の部屋には入らないでくださいね」


 理瀬はあくびをしながら部屋に消え、しばらくして格好で出てきた。さすがに制服ではなく、パーカーにジーンズというアメリカ人みたいな格好だった。元が綺麗だから何を着ても似合うのだが、この格好なのは楽に着こなせるからに違いない。


「投資家なんだろ?休みの日も取引とかしないの?」

「土日はマーケット休みですよ。情報収集とかはしますけど」

「あっ……」


 同窓会で見栄張るために電話で大量の株を売るフリをしたら、今日は休みだよってみんなに失笑されたっていう2chのコピペあったよね。今の俺そんな気持ち。


「それに、投資はあくまで副業で、本業は女子高生ですから」

「投資で豊洲のタワマン買ったヤツが言っても説得力ないんだよなあ……」

「……ちょっと運が良かっただけです。そろそろ行きましょう」


 というわけで、俺は誰かに見られないかビクビクしながら理瀬と豊洲の街を歩いた。

 理瀬のマンションは有楽町線豊洲駅の近くにあり、まず向かったららぽーと豊洲のスーパーは全てのものが目が飛び出るほど高かった。俺が千葉で愛用している激安スーパーの三倍から五倍の価格だ。


「ここ、すごい高いんだけど、どうする?」

「……安いところがいいです。あまり食事にお金かけたくないので」


 一応理瀬に聞いてから、俺はスマホで近くのスーパーを検索した。都内と千葉ではスーパーの種類がだいぶ違ってわかりづらく、もっとも安全なイオンへ行くことにした。東雲のイオンだ。少し距離はあるが、理瀬は嫌がらなかった。

 俺たちはイオンのスーパーに行き、まず野菜売り場から順番に買い物をした。


「野菜って、スーパーで買うと安いんですね。コンビニだとサラダが二百円くらいするのに」

「ああ。特にキャベツともやしは異常に安い。しかも炒めるだけで食える。慣れればチャーハン作るのと同じだ」

「楽そうですね。これにしましょう」


 理瀬は迷わずキャベツともやしをかごに入れた。女の子ならもっと可愛らしい料理をしたくなるものじゃないのか。アラサー独身男の手抜き料理なんて覚えるもんじゃないぞ。

 とはいえ炒めものは火と調味料の使い方を覚えるのに最適だから、一応これでいこう。

 インスタント食品で身体を壊したのも、料理に時間と金をかけたくないのも俺の通った道だし、なんとなくだが、理瀬の思考回路は俺に似ているかもしれない。

 野菜のあとは適当に肉と調味料を買って、豊洲のマンションに戻った。ちょうど夕方で、俺たちはさっさと料理を始めることにした。料理つっても肉もやし炒めだけど。


「チャーハンみたいに炒めればいいんですか?」


 いきなり強火にして、フライパンに油ともやしと肉をぶち込もうとする理瀬。


「待て待て。まず強火は禁止だ」

「なんでですか?強火のほうが早くてよく火が通りますよ」

「強火でも熱が通るのは表面だけで、中まではなかなか加熱されない。そのうち表面だけ焦げてしまう。強火のほうがいいこともあるが、慣れるまで強火は禁止だ」

「なるほど」


 理瀬は料理センスのない人間の特徴を兼ね備えていたが、一方で素直に俺の言うことを聞いた。徹底して弱火を使い、塩も適量をゆっくりまぶして、一応まともな肉もやし炒めが出来上がる。

 俺と理瀬は、二人でできたての肉もやし炒めを食べた。


「そこそこいけるじゃないか」

「ちょっと塩味が足りない気がしますけど」

「若いからそうだろうなあ。現代人は、塩なんて自炊の時は入れなくてもいいくらい普段から塩分摂ってるんだよ。まあでも、少しずつ塩の量を増やしてみるといい。そのうち好きな味にできるよ」

「なるほど」


 理瀬は学習能力が高い子だと思う。

 お腹が痛かった時、自分で膵炎を推定するのも、俺の胃潰瘍の説明を理解するのも普通の女子高生にはなかなかできないことだ。

 それにチャーハンは下手だった(おそらく火が強すぎるせい)が、米はふっくらと美味しく炊けている。本当に料理センスがないやつはご飯を炊くといっておかゆを作ったりするもの。学習さえすれば、料理くらいなんともないだろう。


「ご飯はおいしいな。誰かに教わったのか?」

「お母さんが教えてくれました。私がここに住み始めたころ急に海外勤務になったので、ご飯の炊き方くらいしか教えてくれなくて」


 なら父親は、と俺は思ったが聞かないことにした。家族のことを自分から言わないのは、たいてい言いたくないからだ。

 理瀬の保護者が事実上不在なのは心配なことだが、あまり深入りして面倒なことに巻き込まれたくない、という気持ちもある。

 このへんで手を引くのがよさそうだ。


「今日の調子なら大丈夫そうだ。食材は三日ぶんくらいだから、しばらくこれで過ごしてみな」

「ありがとうございます。あの、お礼は」

「いいよ。ちゃっかりキミのお金で食材買って俺も食べてるし」


 俺はさっさと会話を打ち切り、食器を片付けてから理瀬の部屋を出た。


* * *


『キャベツの炒め方がわかりません。教えてください』


 翌日の日曜日、理瀬からSMSが来た。

 おいおい、なんでもやし炒めができてキャベツ炒めができないんだ、と呆れながらも、睡眠時間チャージ中で面倒だった俺は『また今度教える』とだけ返信した。

 それが、また教えに来てくれる、と解釈されたらしく、『月曜の夜はどうですか』と理瀬から返信。

 結局、俺はまた理瀬の家に行ってしまった。

 キャベツ炒めの失敗は簡単なことだった。理瀬はキャベツを一枚ずつむいて、そのまま炒めていたのだ。俺は理瀬に、火を通すため食材を適切に切り分けることを教えた。

 それからというもの、


『生姜焼きのたれをいつ入れればいいかわかりません』

『冷しゃぶを作りたいのですが、お湯を何度くらいにすればいいのかわかりません』

『炒めものだけじゃなくて、肉じゃがとかも作ってみたいです』


 などと、理瀬からはほぼ毎日、俺に料理教室のリクエストが来た。

 危険な関係だとわかっているのに理瀬を放っておけなかった俺は、毎日そのリクエストに答えていた。俺の目分量で買った食材は理瀬が食べきれない量だったので、ちゃっかり俺も食べて食費を節約していたのもある。

 おお俺よ、女子高生のヒモとは情けない……

 しかし肉じゃがのリクエストが来たところで、さすがにこれ以上はまずい、と思った俺は、冷しゃぶを教えて一緒に食べている時、理瀬に言うことにした。


「なあ常磐さん、肉じゃがくらいなら次の土曜に教えてあげるけど、もうそれで最後にしないか」

「えっ……?」


 理瀬は、俺が想像していたよりもずっと、寂しそうな顔をしていた。

 涙を流す一歩手前みたいな、しゅんとした顔だ。

 女子高生にそんな顔されたら、俺もたまったものではない。


「俺、仕事遅いから、あまり長い時間付き合えないんだ」

「そうですよね……宮本さん、家はどこですか?」

「千葉県の、千葉市だけど」


 俺はこの時、理瀬が家の場所を聞いてくる理由がよくわからなかった。

 次にきた言葉が、俺の想像をはるかに超える提案だったから。


「だったら、私の家に住みませんか?」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

学校1のイケメン♀️から逃げ出した先には地獄しかありませんでした

山田空
ライト文芸
ハーレムを目指していた主人公は転校してきたイケメンによってその計画を壊される。 そして、イケメンが実は女の子でありヤンデレであったことを知り逃げる。 逃げた途中でむかし付き合った彼女たちとの過去を思い出していく。 それは忘れたくても忘れられない悲しき記憶 この物語はヒロインと出会いそして別れるを繰り返す出会いと別れの物語だ。 そして、旅の最後に見つける大切で当たり前なものとは

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...