《完結》僕は棄てたのだ。

皇子(みこ)

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月明かりの中

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エレベーターが止まり、扉が開いた。
凄い…

 目の前に重厚な大きな扉がある。隼人さんが認証して開け、僕を連れて中に入った。


「凄い…広いです。モノトーンの世界に、紅が入り込んでしまったって感じの部屋ですね」


黒白紅を基調に、全てが完璧な配置で品良く佇んでいる、こんな部屋見た事が無い僕は落ち着かない。


「嫌か?余り明るい部屋は苦手でな、その代わり外は明るいぞ」


僕の手を引いて、隼人さんは落ち着きのある部屋をいくつか通り越して、スタスタ歩いて行くんだ。何処へ?と思うといきなり視界がひらけた。


「どうだ?今日は満月の夜だから綺麗だろ?」

「わぁー」


僕は言葉も出なかった…

 そこにあったものは空に満月とキラキラ光る星達…目の前には光り輝く満月を映し出しているプールがあった。

    隼人さんは、自分の服を全て脱ぎ、逞しい完璧な身体を惜しげも無く晒して、僕の方へ近づいて来た!

 僕は逃げたのだけど、笑顔の隼人さんに捕まり、問答無用で全て脱がされた。服は、近くのソファに投げ捨てられた。

     僕は、裸なんて見られた事など無く、人の裸も見た事が無い。

 恥ずかしいし、抱き上げられた時の暖かな肌の触れ合いが、ドキドキを通り越して心臓が止まりそうだ。隼人さんは僕を抱きしめ視線を合わせたまま光り輝くプールに飛び込んだ。

    思ったよりも暖かな水で、隼人さんの体温と心臓の音がダイレクトに伝わってきて、恥ずかしいのになんだか幸せな気分になった。


「楓はとても綺麗だ、自信を持てよ。会ったばかりなんてな関係無く、俺を信じろ。

 って俺は何を言ってるんだか、こんな臭い事なんてな……生きてきた中で一度も言った無いんだぞ。どうなってんだ俺は~」


隼人さんは、僕の顔に手をあてて真剣に話した後、叫びながら水に潜り綺麗なフォームで泳ぎだした。

 時々顔を出し僕の、周りを泳いでいると、ぽちゃんと音がして隼人さんが消えた……

 隼人さんかみえなくなり、急に心細くなった僕は、小さく名前を呼んだ。すると急に腰を引っ張られ水の中にトプンっと、連れこまれた。

   水の中に隼人さんが居た。隼人さんは素敵だ……

    2人水の中から出て、息を整えている僕に対して隼人さんは、笑いながら濡れた髪をかき上げている。

 なんだが色っぽい…男性なのに色気が……僕はそういう事には不慣れなので、どうしていいのか判らない。水の中でチャプチャプ浮きながら遊んでいると、隼人さんが話しかけてきた。


「楓は未成年だろ。家に帰りたく無いんだろうが、俺はなこれでも大人なんだ。お前の事はキチンと俺のモノにするから、それから楓を全て貰う」

「隼人さん」


僕は、隼人さんの見た目よりがっしり大きな身体で、包み込まれる様に抱きしめられ、産まれて初めて人の体温の暖かさと、信じられる安心感にこれが幸せというものなんだと感じられた。

 此処が僕の居場所なのだと信じられたんだ。


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