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第8章 マッチングアプリ
心の傷を癒したい
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「ケビンさん、嫌じゃなければ、私に眼帯外した姿を見せてくださいますか?」
アリサの言葉に、右目を大きく見開くケビン。
しかし、アリサが冷やかしではなく真剣に自分に向き合ってくれていると感じた彼は、恐る恐る、眼帯を外す。
左眉から左目にかけて真っ直ぐに、痛々しい大きな傷が残っている。
以前冒険者として魔物と戦った際、仲間を守り負った傷だというそれは、彼にとってのコンプレックスとなっているようだ。
「……怖いだろう。醜いと、思うだろう?」
眼帯を外したケビンは、震える声で問いかけた。
アリサは首を横に振る。
(怖くはない。
傷があったって、いつもの優しいケビンさんに変わりはないわ)
心からそう思った。
「思いません。じゃあ逆に、私の顔に同じ傷があったら、ケビンさんは私を怖いと、醜いと思いますか?」
アリサの質問に、ケビンはハッとした。
ケビンは顎に手を当て、アリサの顔をまじまじと見つめる。
「それは……思わない。
ただ……何があったのか、なぜ怪我をしたのか、気になるかもしれない」
赤い髪に、大きな瞳、白い肌に形の良い唇。
アリサがゲームのヒロインとして設定した、可愛らしいルックス。
その左目に、自分と同じ大きな傷がることを想像したのだろう。
「きっと相手の女性も同じです。
どうして怪我をしたのかを知りたかったんです。
痛くて辛かったケビンさんの心に、寄り添いたいのです」
アリサの言葉に、ケビンが息を呑む。
怖がられている、蔑まれていると勝手に勘違いしていた、その傷を。
「次、素敵な女性だなと思う人に出会えたら、素直に伝えてあげてください」
「……わかった」
ケビンは頷くと、小さく微笑んだ。
「実は、マップフレンドの登録まではしてあるんだ。
非公開状態にしていただけで」
「あら、そうなんですか」
プロフィールと顔写真を登録し、公開というボタンを押すことで、マップにハートのボタンが表示される。
ケビンは、興味はあったが、前回の失敗を気に病み、非公開状態で止めていたようだ。
「俺も参加してみるよ、マップフレンド。
いい出会いがあるといいな」
「そう、その意気です!」
励ましがうまくいったようで、アリサはほっとしケビンを応援する。
「さ、店じまいして帰りましょう!
ケイトさんの店で、美味しいご飯でも食べに行きますか?」
結婚相談所の資料をしまった重いファイルを持って、本棚に入れようとしているアリサ。
必死に背伸びするアリサの後ろから、背の高いケビンが、ひょいとファイルを代わりに持ち上げた。
「重いだろう。危ないから、いつでも俺を呼んでくれ」
「あ、ありがとうございます」
本棚にファイルを戻してくれた。
その行動を、当たり前でなんとも思っていないような仕草に、アリサは微笑む。
「ケビンさんでしたら、きっと次は大丈夫ですよ」
「な、何だ急に。……気遣ってくれたのか、ありがとう」
頬を掻きながら照れて笑うケビン。
(クールで誤解されやすいけど、とても優しいケビンさんなら、結婚向きよ。
気がついてくれる女性もいるはず!)
アリサは確信する。
「店も閉めたし、飯でも食おう。
励ましてくれた礼に奢るよ」
「やった! ビーフシチューが食べたいです!」
ケビンの高い背を追って、アリサも夜の道を歩き出した。
アリサの言葉に、右目を大きく見開くケビン。
しかし、アリサが冷やかしではなく真剣に自分に向き合ってくれていると感じた彼は、恐る恐る、眼帯を外す。
左眉から左目にかけて真っ直ぐに、痛々しい大きな傷が残っている。
以前冒険者として魔物と戦った際、仲間を守り負った傷だというそれは、彼にとってのコンプレックスとなっているようだ。
「……怖いだろう。醜いと、思うだろう?」
眼帯を外したケビンは、震える声で問いかけた。
アリサは首を横に振る。
(怖くはない。
傷があったって、いつもの優しいケビンさんに変わりはないわ)
心からそう思った。
「思いません。じゃあ逆に、私の顔に同じ傷があったら、ケビンさんは私を怖いと、醜いと思いますか?」
アリサの質問に、ケビンはハッとした。
ケビンは顎に手を当て、アリサの顔をまじまじと見つめる。
「それは……思わない。
ただ……何があったのか、なぜ怪我をしたのか、気になるかもしれない」
赤い髪に、大きな瞳、白い肌に形の良い唇。
アリサがゲームのヒロインとして設定した、可愛らしいルックス。
その左目に、自分と同じ大きな傷がることを想像したのだろう。
「きっと相手の女性も同じです。
どうして怪我をしたのかを知りたかったんです。
痛くて辛かったケビンさんの心に、寄り添いたいのです」
アリサの言葉に、ケビンが息を呑む。
怖がられている、蔑まれていると勝手に勘違いしていた、その傷を。
「次、素敵な女性だなと思う人に出会えたら、素直に伝えてあげてください」
「……わかった」
ケビンは頷くと、小さく微笑んだ。
「実は、マップフレンドの登録まではしてあるんだ。
非公開状態にしていただけで」
「あら、そうなんですか」
プロフィールと顔写真を登録し、公開というボタンを押すことで、マップにハートのボタンが表示される。
ケビンは、興味はあったが、前回の失敗を気に病み、非公開状態で止めていたようだ。
「俺も参加してみるよ、マップフレンド。
いい出会いがあるといいな」
「そう、その意気です!」
励ましがうまくいったようで、アリサはほっとしケビンを応援する。
「さ、店じまいして帰りましょう!
ケイトさんの店で、美味しいご飯でも食べに行きますか?」
結婚相談所の資料をしまった重いファイルを持って、本棚に入れようとしているアリサ。
必死に背伸びするアリサの後ろから、背の高いケビンが、ひょいとファイルを代わりに持ち上げた。
「重いだろう。危ないから、いつでも俺を呼んでくれ」
「あ、ありがとうございます」
本棚にファイルを戻してくれた。
その行動を、当たり前でなんとも思っていないような仕草に、アリサは微笑む。
「ケビンさんでしたら、きっと次は大丈夫ですよ」
「な、何だ急に。……気遣ってくれたのか、ありがとう」
頬を掻きながら照れて笑うケビン。
(クールで誤解されやすいけど、とても優しいケビンさんなら、結婚向きよ。
気がついてくれる女性もいるはず!)
アリサは確信する。
「店も閉めたし、飯でも食おう。
励ましてくれた礼に奢るよ」
「やった! ビーフシチューが食べたいです!」
ケビンの高い背を追って、アリサも夜の道を歩き出した。
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