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第10章 対面デート
そなたの一日を
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(お城でゆっくりさせてもらったおかげで、体調も回復した。ルビオ王子のおかげね)
王宮で看病をして、上げ膳据え膳でもてなされてから一晩経ち、すっかり元気になったアリサは身支度を整えてギルドに出勤しようと立ち上がる。
ピピピピ、ピピピピ。
すると、コール音が聞こえた。
マップを開いてみると、自宅にいるらしきケビンからだった。
「おはようございますケビンさん。
どうしました?」
『おはよう。アリサ、君のことだから一日休んで今日出勤しようとしていただろ』
「ええ、そうですが……」
『倒れた時にはびっくりしたんだ。仕事中で看病できなくてすまなかった。
今日も無理せず休んだらどうだ。会員たちには俺から伝えておく』
すぐさま医者を呼んでくれたケビンだったが、ルビオにアリサを預けてしまったのを気に病んでいたのかもしれない。
(まあ、前世では週休2日だったし、もう1日ぐらい休んでもいいかしら)
無理をしたらまた倒れるので休暇を勧めるケビンのお言葉に甘えて、アリサも休むことにした。
マッチングアプリと相席居酒屋が人気の二大婚活システムになっていたため、イベントの無い日は積極的に休暇を取るほうがいいのかも知れない。
(異世界でも、働き方改革やリフレッシュ休暇は大事よね)
そうと決まればゆっくりしようと、ミルクティーを淹れて飲みながら図書館で借りた本を読んだり、観葉植物に水やりをしたり、鏡の前でヨガやストレッチをしたりと久々に自分時間を過ごしていた。
休暇を満喫していたところ、昼過ぎに家の扉がノックされる音が聞こえた。
「はーい、誰ですか……って」
扉を開けると、見慣れた金髪碧眼のルビオが、私服を着て立っていた。
「ルビオ王子、どうしたんですか」
ルビオはアリサの顔を見ると、パッと表情を明るくしたが、すぐにいつもの無表情に戻る。
何かを言おうと思案しながら口ごもった後、
「そなたの時間を一日、私にくれないか」
と目を伏せながら言ってきた。
馬も馬車も無いことから、わざわざ歩いてきたのだろうか。
アリサは王子の意図が読めず、首を傾げる。
恋しい相手の体調は良くなったか気になり、顔が見たくなっただけのルビオの気持ちになど、気がつかない。
(……何か婚活の相談かしら。最近根を詰めてイベントをやりすぎだったかもしれないし、王子もゆっくりする時間は大事かもね)
きっと婚活に疲れたんだわ、と勝手に納得したアリサは、半日は自分時間を満喫したし、と承諾する。
「いいですよ。じゃあ準備するのでちょっとリビングで待っててくださいね」
アリサはルビオを自分の部屋へと招き入れる。
庶民の家になど滅多に来ないのだろう。
キョロキョロと辺りを見渡す王子に、椅子に座るよう促し、アリサは隣の部屋で着替えて支度をした。
(いつもは足を組み踏ん反り返って悪態をついているルビオさんが、何やら神妙な顔をしてる。
悩みがあるかしら、心配だわ)
何やら普段とは様子の違うルビオを心配しつつ、準備を終えて向かいの椅子に座る。
「お待たせしました。今日はどうしましたか?」
何か悩みがあるならじっくり聞こうと微笑みかけるが、
「そなた、普段休みの日は何をしている」
と意図しなかった問いかけをされた。
「えー、そうですね、休みの日はショッピングしたり、甘いものが好きなのでカフェやスイーツ屋さん巡りしたり……ですか?」
前世での休日を思い返す。
(それはまだアクティブな方で、ゴロゴロしてパジャマのままゲームか動画見ているだけの日も多いけどね)
少しカッコつけて、若い女子風に過ごせた日の休日を伝えてみた。
「そうか、では出かけるぞ」
「え?」
ルビオは頷くと立ち上がり、アリサに目配せする。
アリサが以前ルビオにした婚活セミナーの中でのアドバイス、『女性に休みの日にしていることを聞き、デートに誘え』というのをルビオなりに実践しているのだった。
王宮で看病をして、上げ膳据え膳でもてなされてから一晩経ち、すっかり元気になったアリサは身支度を整えてギルドに出勤しようと立ち上がる。
ピピピピ、ピピピピ。
すると、コール音が聞こえた。
マップを開いてみると、自宅にいるらしきケビンからだった。
「おはようございますケビンさん。
どうしました?」
『おはよう。アリサ、君のことだから一日休んで今日出勤しようとしていただろ』
「ええ、そうですが……」
『倒れた時にはびっくりしたんだ。仕事中で看病できなくてすまなかった。
今日も無理せず休んだらどうだ。会員たちには俺から伝えておく』
すぐさま医者を呼んでくれたケビンだったが、ルビオにアリサを預けてしまったのを気に病んでいたのかもしれない。
(まあ、前世では週休2日だったし、もう1日ぐらい休んでもいいかしら)
無理をしたらまた倒れるので休暇を勧めるケビンのお言葉に甘えて、アリサも休むことにした。
マッチングアプリと相席居酒屋が人気の二大婚活システムになっていたため、イベントの無い日は積極的に休暇を取るほうがいいのかも知れない。
(異世界でも、働き方改革やリフレッシュ休暇は大事よね)
そうと決まればゆっくりしようと、ミルクティーを淹れて飲みながら図書館で借りた本を読んだり、観葉植物に水やりをしたり、鏡の前でヨガやストレッチをしたりと久々に自分時間を過ごしていた。
休暇を満喫していたところ、昼過ぎに家の扉がノックされる音が聞こえた。
「はーい、誰ですか……って」
扉を開けると、見慣れた金髪碧眼のルビオが、私服を着て立っていた。
「ルビオ王子、どうしたんですか」
ルビオはアリサの顔を見ると、パッと表情を明るくしたが、すぐにいつもの無表情に戻る。
何かを言おうと思案しながら口ごもった後、
「そなたの時間を一日、私にくれないか」
と目を伏せながら言ってきた。
馬も馬車も無いことから、わざわざ歩いてきたのだろうか。
アリサは王子の意図が読めず、首を傾げる。
恋しい相手の体調は良くなったか気になり、顔が見たくなっただけのルビオの気持ちになど、気がつかない。
(……何か婚活の相談かしら。最近根を詰めてイベントをやりすぎだったかもしれないし、王子もゆっくりする時間は大事かもね)
きっと婚活に疲れたんだわ、と勝手に納得したアリサは、半日は自分時間を満喫したし、と承諾する。
「いいですよ。じゃあ準備するのでちょっとリビングで待っててくださいね」
アリサはルビオを自分の部屋へと招き入れる。
庶民の家になど滅多に来ないのだろう。
キョロキョロと辺りを見渡す王子に、椅子に座るよう促し、アリサは隣の部屋で着替えて支度をした。
(いつもは足を組み踏ん反り返って悪態をついているルビオさんが、何やら神妙な顔をしてる。
悩みがあるかしら、心配だわ)
何やら普段とは様子の違うルビオを心配しつつ、準備を終えて向かいの椅子に座る。
「お待たせしました。今日はどうしましたか?」
何か悩みがあるならじっくり聞こうと微笑みかけるが、
「そなた、普段休みの日は何をしている」
と意図しなかった問いかけをされた。
「えー、そうですね、休みの日はショッピングしたり、甘いものが好きなのでカフェやスイーツ屋さん巡りしたり……ですか?」
前世での休日を思い返す。
(それはまだアクティブな方で、ゴロゴロしてパジャマのままゲームか動画見ているだけの日も多いけどね)
少しカッコつけて、若い女子風に過ごせた日の休日を伝えてみた。
「そうか、では出かけるぞ」
「え?」
ルビオは頷くと立ち上がり、アリサに目配せする。
アリサが以前ルビオにした婚活セミナーの中でのアドバイス、『女性に休みの日にしていることを聞き、デートに誘え』というのをルビオなりに実践しているのだった。
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