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六月二十七日月曜日 雨時間「友情と覚醒」
6/27雨①
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家についた頃には、空の色が変わり始めていた。
仄暗い色の雲が厚みを増している。
シバタ駄菓子店は閉まっていた。
そういえば今日は寄り合いだから少し遅いとか言ってたっけ、おばあちゃん。
そろそろ雨が降るかもしれないなあ。
裏口から家に入り、洗濯物を取り込んで、まとめてお山にしてリビングに置いた。
時間は、まだ十六時半、散歩までは後三十分あるけれど。
どんよりとした雲を見ていたら、早めに出ようかな、って思った。
「ノビル、散歩行こうか?」
普段は、キラと二人だからか、ノビルは首を傾げて私を見上げていて。
「たまには、いいでしょ? 私と二人だって」
ね? と尋ねたら、ノビルは急に悲しそうな声でキュウンと鳴いた。
私はその声を無視して、リードを掴むといつもの散歩道ではない方向に歩き出す。
いつもなら、海通りまで下がって砂浜を走り、帰りは山側のルートを散歩する。
ノビルもそれをわかっているせいか、私が駅の方に向かうのを引き留めるように立ち止まってしまう。
「ノビル、いい子。歩こうね?」
声をかけたら、やっぱりキュウンと切ない鳴き声で仕方なさそうについてくる。
「ねえ、ノビル。私はここにいたらダメなのかな?」
すれ違う人の目が怖い。
私の顔を覚えているのか、こんにちは、と声をかけてくれる人に少しだけお辞儀をしてそのまま立ち去る。
怖い、怖い、怖い。
心の底では皆、思ってるのかな?
桜庭さんが言っていたみたいに、私の存在がおばあちゃんの迷惑になってるって。
まだ泣いてもいないのに、頬を伝う雫に、空を見上げたら。
ポタッ、ポタッと大粒の雨が顔にぶつかってきた。
「ノビル、走るよ」
慌ててノビルのリードを引き、走る。
どこに行こう? 一体どこに?
小さな川沿いの陸橋下。
雨風をしのげて、ちょうど私とノビルが小さく丸まって入り込める場所を見つけ、滑り込んだ。
「ごめんね、ノビル。寒くない?」
声をかけたら濡れた体を震わせて雫を払うノビル。
「寒いよね、ごめん」
そっと手をのばして、ノビルの体を抱きしめた。
「ねえ、ノビル。私って、厄介者なのかな?」
ノビルは抱かれたまま真っすぐに私を見上げた。
「多分、三ヶ月くらいなら一人で何とかできると思うの。今までだってママが遅い日は一人で何とか留守番してたんだよ。朝だってママの方が早いから鍵もかけて出かけてたし。ちょっとしたご飯なら自分でも作れるし洗濯もできる。それに、もうすぐ夏休みだし」
ノビルだから。ノビルにだから、何でも話してしまえる。
「私ね、本当はちょっとだけ思ってたんだ。自分の着てる制服の方が、可愛いかもって。実はね、元々は私立の中学なんか受験したくなかったの、だけどママがそうしなさいって。だから、ママが持ってきたパンフレットの中から、制服だけで選んだの。ミントグリーンのシャツと白いジャケットが可愛くて。だから自慢に思ってたのは確か、それが態度に出ちゃってたのかも……」
桜庭さんはきっとそれに気づいてたんだ。
「それにここは田舎の学校だし、私は受験だってしてきたんだし、勉強だけなら絶対に全員に勝てるってどこかで自信があった。足だって、そう、今までかけっこで誰にも負けたことなくて。だけど、キラにはどっちも負けちゃった。負けて初めて、田舎とかそういうの関係ないんだってわかったけど。そう思ってた嫌な私に、ずっと気づいてたんだろうな、桜庭さんは」
言い返したいのに、自分の中にある後ろめたさで黙ってしまった。
「ママに捨てられたってのは絶対に違うけど、おばあちゃんは本当はどう思ってるんだろう? 桜庭さんの言う通り、町の人たちみたいに迷惑だって思ってるのかな? 私のこと引き受けるべきじゃなかった、って後悔してたりするのかなあ」
ノビルは私の肩に頭をのせて、クウウンと一鳴きした。
まるで私の不安な心の声みたいで悲しくなってくる。
「おばあちゃんにまで迷惑だって思われたくない。せっかく会えたのに嫌われたくなんかない。だったらもう東京に帰りたい、帰りたいよ」
ギュッとノビルの首筋を抱き寄せて堪えきれなくなった涙腺からボロボロと大粒の涙が落ちた時だった。
【真希ちゃんが、そんなこと思うわけないだろ? キラリに会えてから、一緒に暮らせる日まであんなに嬉しそうな顔してたんだから】
え? あれ? あれええええええ!?
仄暗い色の雲が厚みを増している。
シバタ駄菓子店は閉まっていた。
そういえば今日は寄り合いだから少し遅いとか言ってたっけ、おばあちゃん。
そろそろ雨が降るかもしれないなあ。
裏口から家に入り、洗濯物を取り込んで、まとめてお山にしてリビングに置いた。
時間は、まだ十六時半、散歩までは後三十分あるけれど。
どんよりとした雲を見ていたら、早めに出ようかな、って思った。
「ノビル、散歩行こうか?」
普段は、キラと二人だからか、ノビルは首を傾げて私を見上げていて。
「たまには、いいでしょ? 私と二人だって」
ね? と尋ねたら、ノビルは急に悲しそうな声でキュウンと鳴いた。
私はその声を無視して、リードを掴むといつもの散歩道ではない方向に歩き出す。
いつもなら、海通りまで下がって砂浜を走り、帰りは山側のルートを散歩する。
ノビルもそれをわかっているせいか、私が駅の方に向かうのを引き留めるように立ち止まってしまう。
「ノビル、いい子。歩こうね?」
声をかけたら、やっぱりキュウンと切ない鳴き声で仕方なさそうについてくる。
「ねえ、ノビル。私はここにいたらダメなのかな?」
すれ違う人の目が怖い。
私の顔を覚えているのか、こんにちは、と声をかけてくれる人に少しだけお辞儀をしてそのまま立ち去る。
怖い、怖い、怖い。
心の底では皆、思ってるのかな?
桜庭さんが言っていたみたいに、私の存在がおばあちゃんの迷惑になってるって。
まだ泣いてもいないのに、頬を伝う雫に、空を見上げたら。
ポタッ、ポタッと大粒の雨が顔にぶつかってきた。
「ノビル、走るよ」
慌ててノビルのリードを引き、走る。
どこに行こう? 一体どこに?
小さな川沿いの陸橋下。
雨風をしのげて、ちょうど私とノビルが小さく丸まって入り込める場所を見つけ、滑り込んだ。
「ごめんね、ノビル。寒くない?」
声をかけたら濡れた体を震わせて雫を払うノビル。
「寒いよね、ごめん」
そっと手をのばして、ノビルの体を抱きしめた。
「ねえ、ノビル。私って、厄介者なのかな?」
ノビルは抱かれたまま真っすぐに私を見上げた。
「多分、三ヶ月くらいなら一人で何とかできると思うの。今までだってママが遅い日は一人で何とか留守番してたんだよ。朝だってママの方が早いから鍵もかけて出かけてたし。ちょっとしたご飯なら自分でも作れるし洗濯もできる。それに、もうすぐ夏休みだし」
ノビルだから。ノビルにだから、何でも話してしまえる。
「私ね、本当はちょっとだけ思ってたんだ。自分の着てる制服の方が、可愛いかもって。実はね、元々は私立の中学なんか受験したくなかったの、だけどママがそうしなさいって。だから、ママが持ってきたパンフレットの中から、制服だけで選んだの。ミントグリーンのシャツと白いジャケットが可愛くて。だから自慢に思ってたのは確か、それが態度に出ちゃってたのかも……」
桜庭さんはきっとそれに気づいてたんだ。
「それにここは田舎の学校だし、私は受験だってしてきたんだし、勉強だけなら絶対に全員に勝てるってどこかで自信があった。足だって、そう、今までかけっこで誰にも負けたことなくて。だけど、キラにはどっちも負けちゃった。負けて初めて、田舎とかそういうの関係ないんだってわかったけど。そう思ってた嫌な私に、ずっと気づいてたんだろうな、桜庭さんは」
言い返したいのに、自分の中にある後ろめたさで黙ってしまった。
「ママに捨てられたってのは絶対に違うけど、おばあちゃんは本当はどう思ってるんだろう? 桜庭さんの言う通り、町の人たちみたいに迷惑だって思ってるのかな? 私のこと引き受けるべきじゃなかった、って後悔してたりするのかなあ」
ノビルは私の肩に頭をのせて、クウウンと一鳴きした。
まるで私の不安な心の声みたいで悲しくなってくる。
「おばあちゃんにまで迷惑だって思われたくない。せっかく会えたのに嫌われたくなんかない。だったらもう東京に帰りたい、帰りたいよ」
ギュッとノビルの首筋を抱き寄せて堪えきれなくなった涙腺からボロボロと大粒の涙が落ちた時だった。
【真希ちゃんが、そんなこと思うわけないだろ? キラリに会えてから、一緒に暮らせる日まであんなに嬉しそうな顔してたんだから】
え? あれ? あれええええええ!?
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