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六月二十七日月曜日 雨時間「友情と覚醒」
6/27雨②
しおりを挟む「ノビル?」
【なんだよ?】
!!!!
「いや、なんだよ、じゃなくて!」
【ん? まさかな? 聞こえてるなんてことは】
「うん、あの、聞こえてる……、聞こえてるんだよ、ノビル」
【なんだと!?】
「こっちの台詞だよ、なんで?」
ノビルの顔を両手で挟んで、グイッと自分の顔を寄せたら。
ノビルの目があちこちに泳ぎ、それからまるでわざとらしく。
【わんわん】
人間が犬の真似するみたいに鳴いてみせる。
「なーんだ、やっぱり気のせいか」
【おお、焦った。聞こえてるのかと思ったぜ】
「おお、焦った。聞こえてるのかと思ったぜ、そう言ったよね? ノビル」
【嘘だろ、なんでだ!?】
落ち着きなく足踏みをするノビルに、私だって不安になる。
「私、おかしくなっちゃった? なんで、ノビルの言葉がわかるの?」
【……、キラリ。本当に俺の言葉が聞こえてるのか?】
「うん、聞こえてる」
【なあ、俺と話せることは真希ちゃんには言うなよ】
「おばあちゃんどころか、キラやカノンちゃんにもママにも言えないよ」
どこかおかしくなったと病院に連れて行かれると思う。
それを想像してぶるるっと身震いをした。
【キラリは幾つになった?】
「もうすぐ十三歳」
【ああ、九月生まれだっけな】
「すごいね、ノビル。私の誕生日まで知ってるんだ」
【ま、まあな、任せておけ。おまえさ、魔法って使えなかったの?】
ま、ほ、う?
魔法って、魔法? マッホー? うんん?
【真希ちゃんの血筋だよ、お前が魔法を使えるのは。いずれ、真希ちゃんみたいな大魔女になるかはわからんけど】
「オー! 魔女?」
【ふざけてるわけじゃない! 大魔女だ、魔法使いの中でも位の高い魔女のことだ!】
ノビルと話せるってだけで頭がおかしくなりそうだってのに、魔女とか本当に意味が分からない。
けれど、何かが引っかかる。
『キラリは、どんな魔法が得意なんだい?』
おばあちゃんの言葉を思い出したのだった。
「たとえば、ノビルの話が本当だとして」
【おまえ、俺を疑ってるのか?】
「う、だって、突然魔女って言われても信じられないし」
【だったら真希ちゃんに聞いてみな?】
「ノビルから聞いたんだけどって?」
【だから俺と話せるってことは真希ちゃんには言うな! キラリと俺だけの秘密だ、いいな?】
ガルルとばかりに鼻柱に皺をよせて、私を威嚇するノビル。
【明日の朝、真希ちゃんが畑に水を撒くところを見に行け。そしたら、真希ちゃんがすごい魔女だってことがわかるはずだ】
「なんで、水撒きでわかんのよ」
【見てのお楽しみだ】
「あ、」
【あ?】
「ママは? うちのママも魔法を使えるの? それにしちゃ今までそんなの見たことも感じたこともない。大体霊感みたいなものだってママにはないはずだし」
【霊感と魔法を一緒にするな。お前のママのことはわからん、それは真希ちゃんに聞け】
「おじいちゃんはどうだったのかな?」
【あるわけないだろ、あれは真希ちゃんの血筋にしか伝わらないんだから】
「ノビル、なんでも知ってるんだね」
【まあな、真希ちゃんと何年一緒にいると思ってんだ】
「三年でしょ? おじいちゃんが亡くなってから、すぐに飼ったって言ってたし」
ノビルがじーっと私を見上げて、クンっと鼻を鳴らした。
返事をするのも説明すらも面倒になったのか、普通の犬のようにしばらくじっと雨の様子を伺って。
【真希ちゃん、心配してるぞ】
「わかってる、でも」
【桜庭ファミリアちゃんに言われたことが気になってんのか】
「桜庭杏さんね、ノビルが言うと笑いそうになる」
【キラリがいつもそう言ってるからだろ】
「そうだっけ」
雨足が少しずつ静かになっていた。
さっきまで、東京に帰りたいって、そればっかりだったのに、ノビルと話していたらそれが薄れてきている。
それでもまだグズグズと歩き出せないでいるのは怖いからだ。
町の人の目が、私のことを桜庭さんみたいに迷惑だって思ってるんじゃないだろうか、って。
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