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七月一日金曜日 晴天「優しさ日和」
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「あー! キラリちゃん!!」
通学路の途中で後ろから走ってきた人に抱きつかれた。
振り向かなくても声でわかる、カノンちゃんだ!
「おかえりー、キラリちゃん! もう元気になった?」
「ただいま、カノンちゃん! 元気になりすぎたよ」
私の隣に並んできたカノンちゃんに、ピースサインで元気をアピールするとホッとしたように微笑む。
「キラリちゃんがいないと、何だかね、教室が静かだったの。アンもキラも大人しくてさ」
「ええ? なんで?」
「アンとキラにとっては、キラリちゃんは大好きなライバルだから寂しいんだよね、きっと」
「「大好き、は余計!」」
重なる声に振り向いたら、顔を真っ赤にしたアンちゃんと不機嫌そうなキラが立っていた。
きっと二人が近くにいたから、カノンちゃんはわざと大好きって言ったんだろうな。
「おはよう、アンちゃん。あと、キラ」
朝に一度会ってるけど、一応付け加えるように挨拶したら、フンっと鼻息を鳴らして一足先に歩いていく。
可愛くないなあ、キラってば。
「ノート、わかりづらいとこがあれば苦情受付中」
「なかった、字キレイだよね、アンちゃんって」
「そうなの? アン、今度私が休んだ時もお願いしていい?」
「しゃあないな、でもカノンってば、いつも皆勤賞じゃん」
私を真ん中にして、学校に向かって歩き出す。
「もう具合大丈夫なの?」
「平気だよ、心配かけてごめんね」
カノンちゃんは良かったと微笑み、アンは別に心配してなかったし、と顔を赤くした。
「今日の帰り、二人とも暇?」
「まあ、夕方十七時くらいまでに帰られれば」
アンちゃんからの質問に正直に答える。
だってノビルの散歩があるし。
「私もそれぐらいなら大丈夫」
「じゃあ、放課後! 家に来てよ! ママがケーキ作りすぎたの。食べに来てくれない?」
仕方なく呼んでます、みたいなアンちゃんを見て、カノンちゃんと顔を合わせて必死に笑みを堪える。
「私、ケーキ大好きなんだ! 楽しみにしてるね、アンちゃん」
「じゃあ、お邪魔しちゃう! アンの作ったケーキ、私も食べたい」
「カノン! 違うってば! ママが作りすぎたって言ってるでしょ!!」
怒ったような口調だけど、今までとは違うのがわかる。
放課後が楽しみで仕方なかった。
アンちゃんの部屋は想像通りの部屋だった。
ザ・女子の部屋、そのもの。
東京の私の部屋だって、少しは女の子っぽかったと思うけれど。
このお部屋はお城か、というほど、ピンクとフリルと小花柄の世界で。
制服から私服に着替えたアンちゃんも、薄い紫に白のストライプが入った袖口と襟部分がレースになっているワンピースだった。
いつもTシャツと短パン姿の私は、もうちょっと女の子らしくしような、と反省した。
「あなたが、柴田さん家のキラリちゃん? いつもアンがお世話になっています。カノンちゃんも家に来てくれるの久しぶりよね、すっかり美人になっちゃって」
アンちゃんのママは、彼女がそのまま大人になったような可愛らしい人だった。
いつもパンツスーツで髪は一纏め、化粧もあまりしないママとは正反対のタイプ。
つまり、ファッションセンスは、お互いの母親からの遺伝なのかもしれない。
「アンがね『キラリちゃん、今日も休みだった』と不貞腐れて帰ってきてはお菓子を作るの。月曜日はクッキーで火曜日がアイスクリームよね? で、水曜日には紅茶マフィンで、昨日はチーズケーキでしょ」
ママさんはおしゃべりしながら、トレイに載せた目にも鮮やかなそれらのおやつを、三人分ずつアンのお部屋の真ん中に置かれた猫足テーブルにセッティングしてくれる。
すごい、ネットとかやってるわけじゃないけど、後で写真撮ろう。
これは映えるってやつだ!
「べ、べつに、キラリのためじゃないし!」
「なんだ、キラリちゃんのためだったんだ。私帰ろうか?」
「誰もそんなこと言ってないでしょ! カノンも食べてよ、なんなら余ったクッキーは兄弟に持って帰って? あ、キラリもよ? 真希さんにあげて」
真っ赤になって弁解すればするほど、どんどんアンちゃんの可愛さが露見していく。
「アンってば、お友達にそんな口の利き方しないのよ。二人とも、こんな子だけど仲良くしてあげて。あ、玄関に二人分のお土産お菓子置いておくわね?」
ごゆっくり~と部屋の扉を閉めて階段を降りていく音が遠ざかってから。
私とカノンちゃんは顔を合わせて笑い出す。
通学路の途中で後ろから走ってきた人に抱きつかれた。
振り向かなくても声でわかる、カノンちゃんだ!
「おかえりー、キラリちゃん! もう元気になった?」
「ただいま、カノンちゃん! 元気になりすぎたよ」
私の隣に並んできたカノンちゃんに、ピースサインで元気をアピールするとホッとしたように微笑む。
「キラリちゃんがいないと、何だかね、教室が静かだったの。アンもキラも大人しくてさ」
「ええ? なんで?」
「アンとキラにとっては、キラリちゃんは大好きなライバルだから寂しいんだよね、きっと」
「「大好き、は余計!」」
重なる声に振り向いたら、顔を真っ赤にしたアンちゃんと不機嫌そうなキラが立っていた。
きっと二人が近くにいたから、カノンちゃんはわざと大好きって言ったんだろうな。
「おはよう、アンちゃん。あと、キラ」
朝に一度会ってるけど、一応付け加えるように挨拶したら、フンっと鼻息を鳴らして一足先に歩いていく。
可愛くないなあ、キラってば。
「ノート、わかりづらいとこがあれば苦情受付中」
「なかった、字キレイだよね、アンちゃんって」
「そうなの? アン、今度私が休んだ時もお願いしていい?」
「しゃあないな、でもカノンってば、いつも皆勤賞じゃん」
私を真ん中にして、学校に向かって歩き出す。
「もう具合大丈夫なの?」
「平気だよ、心配かけてごめんね」
カノンちゃんは良かったと微笑み、アンは別に心配してなかったし、と顔を赤くした。
「今日の帰り、二人とも暇?」
「まあ、夕方十七時くらいまでに帰られれば」
アンちゃんからの質問に正直に答える。
だってノビルの散歩があるし。
「私もそれぐらいなら大丈夫」
「じゃあ、放課後! 家に来てよ! ママがケーキ作りすぎたの。食べに来てくれない?」
仕方なく呼んでます、みたいなアンちゃんを見て、カノンちゃんと顔を合わせて必死に笑みを堪える。
「私、ケーキ大好きなんだ! 楽しみにしてるね、アンちゃん」
「じゃあ、お邪魔しちゃう! アンの作ったケーキ、私も食べたい」
「カノン! 違うってば! ママが作りすぎたって言ってるでしょ!!」
怒ったような口調だけど、今までとは違うのがわかる。
放課後が楽しみで仕方なかった。
アンちゃんの部屋は想像通りの部屋だった。
ザ・女子の部屋、そのもの。
東京の私の部屋だって、少しは女の子っぽかったと思うけれど。
このお部屋はお城か、というほど、ピンクとフリルと小花柄の世界で。
制服から私服に着替えたアンちゃんも、薄い紫に白のストライプが入った袖口と襟部分がレースになっているワンピースだった。
いつもTシャツと短パン姿の私は、もうちょっと女の子らしくしような、と反省した。
「あなたが、柴田さん家のキラリちゃん? いつもアンがお世話になっています。カノンちゃんも家に来てくれるの久しぶりよね、すっかり美人になっちゃって」
アンちゃんのママは、彼女がそのまま大人になったような可愛らしい人だった。
いつもパンツスーツで髪は一纏め、化粧もあまりしないママとは正反対のタイプ。
つまり、ファッションセンスは、お互いの母親からの遺伝なのかもしれない。
「アンがね『キラリちゃん、今日も休みだった』と不貞腐れて帰ってきてはお菓子を作るの。月曜日はクッキーで火曜日がアイスクリームよね? で、水曜日には紅茶マフィンで、昨日はチーズケーキでしょ」
ママさんはおしゃべりしながら、トレイに載せた目にも鮮やかなそれらのおやつを、三人分ずつアンのお部屋の真ん中に置かれた猫足テーブルにセッティングしてくれる。
すごい、ネットとかやってるわけじゃないけど、後で写真撮ろう。
これは映えるってやつだ!
「べ、べつに、キラリのためじゃないし!」
「なんだ、キラリちゃんのためだったんだ。私帰ろうか?」
「誰もそんなこと言ってないでしょ! カノンも食べてよ、なんなら余ったクッキーは兄弟に持って帰って? あ、キラリもよ? 真希さんにあげて」
真っ赤になって弁解すればするほど、どんどんアンちゃんの可愛さが露見していく。
「アンってば、お友達にそんな口の利き方しないのよ。二人とも、こんな子だけど仲良くしてあげて。あ、玄関に二人分のお土産お菓子置いておくわね?」
ごゆっくり~と部屋の扉を閉めて階段を降りていく音が遠ざかってから。
私とカノンちゃんは顔を合わせて笑い出す。
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