魔法少女はまだ翔べない

東 里胡

文字の大きさ
30 / 53
七月九日土曜日 晴れ時々曇り「魔法見習いと恋バナ」

7/9②

しおりを挟む
 土日の日課は他にもある。
 おばあちゃんのお店「シバタ駄菓子店」はこの辺りの子供たちの憩いの場のため、ほぼ年中無休だった。
 だから土日は私が店番を買って出たのだ。
 だけど、土日の午前中なんてほとんど人が来ない。
 たまに、小さな子供を連れたお母さんとかが訪れて来るくらい。
 私は店の奥の椅子に腰かけて、緑色の羽の扇風機の前でラムネを飲みながら、キラに借りた少年漫画を読む。
 すっかり漫画に没頭していて存在に気づくのが遅れた。

「キーラリ! 来たよ~!」

 自分の名を呼ぶ声に驚いて顔をあげたら、アンとカノンが立っていた。

「い、いらっしゃい」

 なんとなく後ろ手にキラから借りた本を隠しながら二人に愛想笑い。

「どうしたの? 二人して。どこか行くの?」
「やだな、前に言ったでしょ? イカクンセイやハムカツが食べたくなるんだって。それと、キラリのとこに遊びに来たの! それも前に言ったはず!」

 そういえば、アンの家に招待された時、そんな話をしたような。
 だけど私、今日はお店番だし、と戸惑っていたら。

「いいじゃないか、上がってもらいな。アンちゃんにカノンちゃんだよね。二人とも見る度に大きくなってキレイになって」
「お久しぶりです、真希さん」
「またハムカツ食べにきました」

 ニッコリ笑った二人を見て。

「なにボサッとしてんの? キラリ。部屋は片付いてるのかい?」
「あ、ちょっと待って。布団畳んでない!! あと、二分だけ待って」

 慌てて部屋に戻ったきっかり二分後、二人はやってきた。
 手には三人分のお菓子やジュース、おばあちゃんが持たせてくれたと。
 ちゃんとアンの好きなイカクンセイやハムカツもあって、嬉しくなった。
 ここ二週間二人と一緒にいるようになって、気づけばお互いのことを名前で呼び合うようになっていた。

「そういえばさ、なんで町の人たち、皆おばあちゃんのこと真希さんって言うの?」
「わかんない、でもおばあちゃんって感じもしないでしょ? いつも若々しいし、駄菓子やのおばあちゃんって呼ぶにはちょっと。それに、うちらの親も皆真希さんって呼ぶからかな?」
「そうそう、気づけば真希さん、だったよね。真希さんのこと、おばあちゃんて呼ぶのは孫のキラリだけだよ」

 もう一人の孫も真希さんって呼んでたしなあ、とカラーボックスの上に、置いた漫画本をチラリと見た。

「めっちゃ好き、これ!」

 梅ジャムせんべいをパリパリ食べるカノンと。

「やっぱりハムカツには敵わないって」

 と私の分のハムカツにまでいつの間にか手を出しているアン。
 この二人は何をしに来たんだろうか、とイカクンセイを噛みながら考えていたら。

「ねえ、キラリってさ? 彼氏いるの?」
「ぐほ!?」

 危うく、イカが喉に引っかかりかけて慌ててラムネで流し込んだ。

「い、いるわけないじゃん」
「そうなの? 東京の子って、小学校の時に彼氏できるんじゃないの?」
「どこからそんな情報を!? 少なくとも私の周りにはいなかったなあ、隣のクラスの子では一人か二人いた気もするけど」
「私もキラリには既に彼氏くらいいるって思ってたんだけどなあ」
「カノンまで。私は告白したこともされたこともないよ」

 ふーん? と二人とも腑に落ちないかのような顔をしている。

「じゃあ、好きな人もいなかった?」
「いないよ」
「え? 一人も? 本当に?」

 しつこく聞かれて、考えて考えて。

「幼稚園の時にいたかもしれない、そんな気がしてきた」

 そう言ったら二人は爆笑をし始めた。
 なんだかバカにされているみたいで面白くない!

「そ、そんな笑うことないでしょ! カノンだっていないでしょ?」
「え? いるよ、私。一個上に彼氏」

 初めて聞いた話に、時が止まった。
 多分またアホみたいに口をあんぐり開けていたのだろう。
 アンにより、ポッキーを一本口につっ込まれた。
 なんでだろう? なんか、ショックだ。
 だって、カノンって確かに大人っぽいし、けど真面目な子で、でも彼氏がいるって?

「クラスにも他に彼氏持ちの子、二人いるよ? 知らなかった?」

 コクンと頷いたらカノンに頭をなでなでされた。

「いつかキラリにも好きな人ができたら紹介してね?」

 子ども扱いされているようで何だか悲しい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

今、この瞬間を走りゆく

佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】  皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!  小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。  「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」  合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──  ひと夏の冒険ファンタジー

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

【運命】と言われて困っています

桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。 遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。 男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。 あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。 そんな彼が彩花にささやいた。 「やっと会えたね」 初めましてだと思うんだけど? 戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。 彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。 しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。 どういうこと⁉

突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ
児童書・童話
 動画配信を視聴するのが大好きな市山ひなは、みんなより背が高すぎることがコンプレックスの小学生。  周りの目を気にしていたひなは、ある日突然お隣さんに預けられることになってしまった。  そこは幼なじみでもある志水蒼太(しみずそうた)くんのおうちだった。  どうやら蒼太くんには秘密があって……!?  身長コンプレックスもちの優しい女の子✖️好きな子の前では背伸びをしたい男の子…を見守る愉快なメンバーで繰り広げるドタバタラブコメ!  

限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 現代日本と不釣り合いなとある山奥には、神社を中心とする妖討伐の一族が暮らす村があった。その一族を率いる櫛田八早月(くしだ やよい)は、わずか八歳で跡目を継いだ神職の巫(かんなぎ)である。その八早月はこの春いよいよ中学生となり少し離れた町の中学校へ通うことになった。  妖退治と変わった風習に囲まれ育った八早月は、初めて体験する普通の生活を想像し胸を高鳴らせていた。きっと今まで見たこともないものや未体験なこと、知らないことにも沢山触れるに違いないと。  この物語は、ちょっと変わった幼少期を経て中学生になった少女の、非日常的な日常を中心とした体験を綴ったものです。一体どんな日々が待ち受けているのでしょう。 ※外伝 ・限界集落で暮らす専業主婦のお仕事は『今も』あやかし退治なのです  https://www.alphapolis.co.jp/novel/398438394/874873298 ※当作品は完全なフィクションです。  登場する人物、地名、、法人名、行事名、その他すべての固有名詞は創作物ですので、もし同名な人や物が有り迷惑である場合はご連絡ください。  事前に実在のものと被らないか調べてはおりますが完全とは言い切れません。  当然各地の伝統文化や催事などを貶める意図もございませんが、万一似通ったものがあり問題だとお感じになられた場合はご容赦ください。

あいつは悪魔王子!~悪魔王子召喚!?追いかけ鬼をやっつけろ!~ 

とらんぽりんまる
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞、奨励賞受賞】ありがとうございました! 主人公の光は、小学校五年生の女の子。 光は魔術や不思議な事が大好きで友達と魔術クラブを作って活動していたが、ある日メンバーの三人がクラブをやめると言い出した。 その日はちょうど、召喚魔法をするのに一番の日だったのに! 一人で裏山に登り、光は召喚魔法を発動! でも、なんにも出て来ない……その時、子ども達の間で噂になってる『追いかけ鬼』に襲われた! それを助けてくれたのは、まさかの悪魔王子!? 人間界へ遊びに来たという悪魔王子は、人間のフリをして光の家から小学校へ!? 追いかけ鬼に命を狙われた光はどうなる!? ※稚拙ながら挿絵あり〼

転んでもタダでは起きないシンデレラ

夕景あき
児童書・童話
ネズミから人の姿に戻る為には、シンデレラに惚れてもらうしかないらしい!? 果たして、シンデレラはイケメン王子ではなくネズミに惚れてくれるのだろうか?·····いや、どう考えても無理だよ!というお話。

処理中です...