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*再会は突然に*
恋をしました1
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「花菜、どう? いる?」
今年は暖かかったせいか、入学式よりも前に桜の花は散ってしまった。
新しい始まりは新緑の匂いと、五月の空みたいな澄んだスカイブルー。
丘の上にある市立春日丘高校一年D組、本日より私のクラス。
教室の入り口から顔だけを覗かせて、キョロキョロとこれから三年間お世話になるクラスメートたちを見回した。
「う~ん……、いない気がする」
――あの日、優しい笑顔で私を助けてくれた人。
探し人が見つからないことに、肩を落とす。
もしかしたら、同じクラスだったりして。
そうしたら、あの出会いは『運命』なんじゃないかって。
わかってる、『運命』なんて、そんなお手軽で都合の良いものではないってこと。
まして彼がこの高校に受かっているかどうかすら、わかってはいない。
名前も知らない、一度しか会ったことのない、あの人――。
一学年五クラスもある中で、幼馴染の琉伽と同じクラスになったことだけでも奇跡だもの。
ん? もしかしたら、そこでもう今年の運は使い果たしたのかもしれないけれどね。
……もう一度、彼に会いたいな。
あの時のお礼を伝えたかった。
あまりにもわかりやすく、私の心の声は、顔に漏れ出てしまっていたようだ。
「後で違うクラスも探してみようよ、ハナ」
めげるなと言うように私の背中をポンポンと叩き、はげましてくれるルカに頷く。
そうだね、諦めが悪いのが私だもの。
もしかしたら他のクラスにいる可能性だってあるし、その確率の方がきっと高いもん。
ポケットの中のお守りを握りしめて、もう一度気合を入れ直したその時だった。
「あのさ、そこ邪魔なんだけど?」
背中からかかる声に、振り向く。
声の主の顔を確認した瞬間に、時間が止まってしまったような気がした。
癖のある毛先の跳ねた黒髪、少しつり上がった猫のような目、その右側にある小さな泣きぼくろ。
あの時と同じように私を見下ろす、その視線。
あの人だ――。
感動のあまり彼の顔を食い入るように見上げていた私を、聞こえていないのか? と怪訝な顔で見下ろしていることにハッとした。
今年は暖かかったせいか、入学式よりも前に桜の花は散ってしまった。
新しい始まりは新緑の匂いと、五月の空みたいな澄んだスカイブルー。
丘の上にある市立春日丘高校一年D組、本日より私のクラス。
教室の入り口から顔だけを覗かせて、キョロキョロとこれから三年間お世話になるクラスメートたちを見回した。
「う~ん……、いない気がする」
――あの日、優しい笑顔で私を助けてくれた人。
探し人が見つからないことに、肩を落とす。
もしかしたら、同じクラスだったりして。
そうしたら、あの出会いは『運命』なんじゃないかって。
わかってる、『運命』なんて、そんなお手軽で都合の良いものではないってこと。
まして彼がこの高校に受かっているかどうかすら、わかってはいない。
名前も知らない、一度しか会ったことのない、あの人――。
一学年五クラスもある中で、幼馴染の琉伽と同じクラスになったことだけでも奇跡だもの。
ん? もしかしたら、そこでもう今年の運は使い果たしたのかもしれないけれどね。
……もう一度、彼に会いたいな。
あの時のお礼を伝えたかった。
あまりにもわかりやすく、私の心の声は、顔に漏れ出てしまっていたようだ。
「後で違うクラスも探してみようよ、ハナ」
めげるなと言うように私の背中をポンポンと叩き、はげましてくれるルカに頷く。
そうだね、諦めが悪いのが私だもの。
もしかしたら他のクラスにいる可能性だってあるし、その確率の方がきっと高いもん。
ポケットの中のお守りを握りしめて、もう一度気合を入れ直したその時だった。
「あのさ、そこ邪魔なんだけど?」
背中からかかる声に、振り向く。
声の主の顔を確認した瞬間に、時間が止まってしまったような気がした。
癖のある毛先の跳ねた黒髪、少しつり上がった猫のような目、その右側にある小さな泣きぼくろ。
あの時と同じように私を見下ろす、その視線。
あの人だ――。
感動のあまり彼の顔を食い入るように見上げていた私を、聞こえていないのか? と怪訝な顔で見下ろしていることにハッとした。
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