あきらめきれない恋をした

東 里胡

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*再会は突然に*

恋をしました2

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「あ、あの、どうぞっ!」

 教室の入り口を遮ってしまっていたことを謝りながら道を譲ったら。

空人ソラト、もうちょい優しい言い方できないの? 初っ端から、女子怖がらせて!」

 薄い茶色の長めの前髪を額で分け独特のふわんとした空気をまとわせた男子が、私とルカを見て「うちの空人がゴメンねえ」と人懐こい笑顔をこぼす。
 その横で顔をしかめたさっきの彼は、小さなため息をついて。

「別に。そんなつもりじゃなかった……、怖がらせてたらごめん」

 ぶっきらぼうな言い方だけれど、私とルカに小さく頭を下げてくれる。

「こっちこそ、邪魔になってたみたいで。あのっ、ごめんなさい」

 フルフルと首を振る私を見て、『空人くん』は少しだけ表情を和らげた。
 空人くんの態度に気を良くした彼のお友達は私とルカの顔を交互に見比べて。

「二人ともD組?」
真宙マヒロ、いきなりナンパとかすんなよ」
「ナンパじゃないよ、人聞きの悪い言い方すんなよな、空人ってば! 俺、瀬名セナ真宙マヒロ。で、こっちの怖い顔したのが及川オイカワ空人ソラト。二人とも三中出身のD組です、よろしくね」

 一気に情報が雪崩れ込んできた。
 待って、待って、え~っと!
 及川空人くん、三中出身、お友達の名前は瀬名真宙くんで、今日から私と同じクラス!?
 優しい人で、助けてくれた人で、それしか知らなかった私の記憶に色んな情報が上書きされていく。
 メモしたい、今すぐメモしたい。
 メモがないから忘れないように、必死に頭の中で彼の名前を繰り返しインプット。

「うちらは宮木野中出身、私は安西アンザイ琉伽ルカ、と」

 ちらりとルカの視線が私に移るから。

二宮ニノミヤ花菜ハナです、よろしくお願いします」

 彼らに頭を下げた。
 会えた、会えたよ、ルカ!
 この人だよ、とはしゃぎだしたい私の気持ちは、ルカには伝わっているみたい。
 二人にはわからないように、私にだけ小さくニヤリと笑うルカ。お願い、気付かれちゃうから顔に出さないで、とルカの脇腹を、気付かれぬように肘で小突いた。

「ハナちゃんとルカちゃん! 三年間よろしくね」

 明るくてしっかり者のルカ、陽気でムードメーカー的な瀬名くん。
 どこか気が合うようで、お互いの共通点を探して盛り上がり始める。

「宮木野中にさ、青木先生っていなかった?」
「あ! 三中から転任してきたんだっけ」
「そうそう、元担任なの。先生、元気にしてる?」

 私も、及川空人くんも置いてきぼりを食らったようで、二人の話を相槌を打ちながら聞いているだけ。
 実はこの時、私の耳にはちっとも二人の会話が入ってこないでいた。
 だって頭の中は、空人くんのことでいっぱいになってしまっていたから。
 そっと盗み見る横顔は、あの日のように優しい笑顔ではないけれど。
 間違いなく、空人くんは私の探していた人だ。

 私のこと、覚えてますか?
 あの日、あなたに助けてもらった者です。
 ずっとお礼が言いたくて、探してた、なんて。

 突然そんなことを言ったなら、気持ち悪がられるかもしれない。
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