あきらめきれない恋をした

東 里胡

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秘密を知りました1

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「ハナちゃん、引きつってるってば」

 もうっと頬をふくらます真宙くんに、どうしたらいいのかわからずに落ち込む。
 空人くんじゃないけれど、私だって写真が苦手だ。
 特に「笑って」なんて言われてからの笑顔はブサイクにしかならない。

「二宮、真宙に無理に付き合う必要ないからね?」

 必死に口角をあげた私を撮ろうと真宙くんがシャッターを切った瞬間、そのレンズを空人くんの手がおおう。

「うわ、何すんだよ! 空人!」
「何するって。今日は誰のために、なんで皆が集まったと思ってんの? 日曜日なのに」
「あー、俺のため? ですよねー」

 とぼけて笑う真宙くんの頭を空人くんではなく、ルカがグリグリと両拳で締め上げた。

「真宙が赤点取りそうだって泣きついてきたから、こっちは集まってあげたんでしょ」

 ルカと空人くんに責められて、そうでした、と首をすくめて、またテーブルの上のノートに目を落とす真宙くん。
 中間テスト前、「相談がある」と真剣な顔をした真宙くんに、私たち三人は集められた。
 最初からそんな予感がしていたのか、話を聞く前から空人くんはめちゃくちゃ嫌な顔をしていたけれども。

『お願いします! 今回だけ! 今回だけは助けて下さい』と泣き真似をし、頭を下げる真宙くんに、最後は仕方なく空人くんも折れていた。
 そうして本日、真宙くんのお宅に集まって勉強会となったわけだけれど。
 私としてはそんな真宙くんに感謝したい。
 一つは私も自信のない教科が複数あること。
 それからもう一つは、こうして休日に堂々と空人くんと会えるということ。

 制服姿じゃない空人くん、爽やかな白いパーカーが良く似合っている。
 私はピンクのパーカーワンピ、空人くんと並べばお揃いっぽく見える気がして一人にんまりしてしまう。
 ヤバイ、顔がゆるまないように気を付けないと。

「あー、ダメ! お腹空いた。お腹が空いたら頭になーんも入らない。お昼にしよう、お昼に!」

 そう言うと真宙くんは『はい、どうぞ』とお店のメニューを渡してくれた。
 ラーメン・チャーハン・オムライスなどなど、真宙くんの家は町の中華屋さん。
 
「二宮、決まった?」

 え? 食い入るように見ていたメニューから顔を上げたら全員が私に注目をしていた。

「な、なに?」
「ハナってば」

 耐えられないとでもいうように、笑い出すルカ。

「子供みたいに嬉しそうにメニュー眺めてるんだもん、あの顔ったら」

 ルカの言葉に今まで我慢していたのか、真宙くんも、それから空人くんまで噴き出した。
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