あきらめきれない恋をした

東 里胡

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「うそ、真宙のおごりなの?」
「俺のっつうか、母ちゃんからのね。勉強会の御礼にってさ。皆、今日予定ないよね?」

 中間テストが終わった日の放課後、真宙くんが素敵なチケットを手に私たちを集めた。
 町内会の商工会議所で各店舗さんに配られるクーポンみたいなもの。
 それは、カラオケボックス一部屋平日3時間無料パックという、学生の私たちにとっては夢のようなチケットだ。

「行きたい!」

 ルカと二人、ハイと手を挙げたのに対し、空人くんは一人スマホを持ち考え込んでいる模様。

「もしかして、何か用事あった? 空人くん」
「ん、でも、大丈夫。明日でもいいって言ってたし」

 そう言って誰かに何かを送信していた。
 明日といえば土曜日だ。
 そんな日に会うといえば、きっと春香先輩なんだろう。

「だったら、はーちゃん先輩も呼ぶ? 空人」

 空人くんの顔を見て真宙くんも気づいたみたい。
 その提案には即座に空人くんは首を横に振ってくれたことに、一安心したその後で。

「春香、カラオケ好きじゃねえんだよ」

 ボソリと呟いた声にまたズキン。
 そうだよ、付き合ってるんだもの。
 春香先輩の好みだって知っているし、土曜日にだってデートするさ。
 すぐに落ち込みかける自分に言い聞かせた。

「二宮、調子悪い? 大丈夫?」

 静かになってしまった私を気遣ってくれる空人くんに、慌てて首を振った。

「久しぶりだから、何歌おうかなって」
「え? 静かに気合い入れてたとこだったの?」
「そうじゃなくて!」

 恥ずかしさの照れ隠しで口元をふくらましたら、空人くんはクスクス笑っている。
 前を歩く二人は好きなアーティストの曲で盛り上がっているみたい。

「真宙さ、一曲目は絶対アニソン歌うから」
「そうなの?」
「チャラけた恰好してっけど、アイツ本当はただのアニオタ」

 意外だった、真宙くんってもっと遊んでる人風に見えてたから。
 言動も軽いし女の子大好きだし。

「つい半年前まで坊主だったしね」
「あ、そうだ、野球部だっけ?」
「ね、高校では髪を伸ばしたいからと言う理由で辞めたやつ」

 坊主頭の真宙くんなんて、今では全然想像もつかないけれど、空人くんは真宙くんのこととなるとよく話す。

「仲良しだよね、真宙くんと空人くん」
「そっちもじゃん」

 とルカの背中を指さす。

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