あきらめきれない恋をした

東 里胡

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友達になりました3

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「大丈夫だよ?」
「そう? 調子悪い時は隠さず言うんだよ、わかった?」

 私とルカのやり取りを男子二人は不思議そうに見ている。

「過保護なんだよ、ルカは」

 誤魔化すように笑えば真宙くんは、「そうなんだ」と納得してくれて。

「でも、顔赤くない?」

 空人くんの手が伸びてきて、遠慮がちに私のおでこに触れる。
 ドキドキする。

「カ、カラオケボックスの中、暑かったでしょ? それで火照っただけで」
「ならいいんだけどさ、熱でもあるんじゃないかって心配になった」
「大丈夫、ありがとう、空人くん」

 触れられたおでこが熱くなる。
 大丈夫と見上げたら空人くんが、良かったと目を細めてくれた。
 その時だった。

「空人、マズイかも」

 真宙くんの声がせっぱまっていた。
 なにごとかと、真宙くんの指さす方向を見たら。

「春香?」

 スクランブル交差点の斜め向こう側、こっちをじっと見ている人がいた。
 その顔は怒っているようにも泣いているようにも見えた。
 もしかしてさっきの空人くんが私を心配してくれた場面を見ていたかもしれない。

 私たちが春香先輩を見ているのに気が付いたのか、交差点に背を向けて雑踏の中に紛れ込んでいく。

「ヤバいんじゃないの? 絶対怒った顔してたぞ、はーちゃん先輩」

 気まずい空気の中で、空人くんも困ったような顔をしているから。

「空人くん、追いかけて。早く誤解とかないと!」
「でも、皆でご飯食べるつもりで」
「そんなのまた今度でいいよ。春香先輩、きっと空人くんが来てくれるの待ってる」

『大事な人なんだ、春香は。俺に勇気をくれた人だから』

 そんな大切な人を悲しませたりなんかしないで、空人くん。
 空人くんは少しだけ考えて、私の顔を見て頷いた。

「ごめん、俺行くわ。ありがとな、二宮」

 青に変わった瞬間、駆けて行く空人くんの背中を皆で見送った。
 どんどんボヤケて見えなくなるのは、なぜだろう。

「行くよ、ハナ」

 右手をルカが、握ると。

「よし、ハナちゃんの分は俺がおごってあげよう」

 左手を真宙くんが握った。

「ねえ、何でハナにだけ?」
「だって、ルカっちにおごる理由が見つからないんだよね」
「ふーん? もう勉強教えなくていいよね」
「わあああ、嘘です、奢ります! 奢らせて下さい」

 二人の優しさが温かい。
 ボロボロと止まらない涙の理由は、きっと真宙くんにもバレてるだろう。

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