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王太子と侯爵令嬢の密談
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そういえばと、レオンハルト様から切り出されたのは最終学年に上がって少しだけ経過した頃でした。
並木の桜に似た花は散り葉が青く、新入生の初々しい顔を見ると二年前は自分もこうだったのかと少し懐かしく思います。
レオンハルト様とは週二日程、二人きりの昼食を摂るようにしております。
互いに友人や付き合いや学業に差し障りない程度の公務がある為、二人きりで過ごせるのはこの時と偶に放課後にお会いするくらいですから。
学生用の食堂やカフェテリアもあるのですが、二人でゆっくり食事を楽しみたいので個室にしていただいております。
何部屋かある個室は完全予約制です。同性、または婚約者同士しか利用できず、恋人も不可です。親の認めた者ではない異性同士が個室で問題を起こしてはなりませんからね。
わたくしはレオンハルト様以外ですとアメリア様達や学友との昼食時に利用したりいたします。
食堂でも勿論頂きますわ。
「リリは新入生の中に平民として生活していた男爵令嬢がいる話は聞いているかい?」
「いえ、存じておりませんわ。平民というと養女に迎えられた方ですの?」
「いや、詳しくは教えてもらっていないのだが、使用人だった母親が男爵の子を孕み、腹が大きくなると行方を眩ませたらしい。その子が見つかった時は母親が亡くなっていたので引き取ったようだ。その娘が新入生として入学したのだが貴族としての教養がないので、何か迷惑をかけても当面の間、最低限の教養が身に付くまで許して欲しいと教師から聞かされた。リリの方が関わる可能性があるだろう」
学年が違うので直接関わる可能性は低いですが、コーネリア様や友人の妹が今年入学しておりますので、間接的に関わる可能性はあるかもしれません。
「ええ、留意しておきますわ。それにしても、これから教養を身に付けないといけないなんてお可哀想に。マナー教育の先生に放課後個別でご指導頂けないかお伺いしてみるべきか迷いますわね。それに、相手が決まっていない方々もそろそろ婚約者を探さないとなりませんので、その方は同時進行となるのかしら?」
「男爵家だから、わたし達程厳しくないだろう。それにしても相変わらずリリは他人を心配する。そういう所は変わらないな。惚れ直す」
「なっ、レオ。余計な事は言わなくていいの」
「直ぐに照れる所も変わらない。顔が赤い、冷そうか?」
「頬を両手で触らないで下さいまし。食事中ですわよ。お行儀が悪すぎます」
「終わってからなら良いのか?」
「殿下、お控え下さいませ。リリア様もお困りでおいでです」
給仕をするレオンハルト様の従者にやんわりと咎められ、苦笑で返しておられます。
レオンハルト様は時々こうやってわたくしをからかいますの。
その時のお顔がとても楽しそうなので、見ているだけで嬉しくなるのだけどどうしても素直になれません。
自分からは行動に起こせないから触れてもらえると安心できます。嫌われていないのだと。
恋愛に対して臆病になるのは、自分に自信がないからと嫌われるのが怖いからなのでしょうと自己分析しておりますが、それに気づいた所で直せるかどうかは別です。
そもそも生前のわたくしが暮らしていた日本という国ではキスもハグも挨拶するように自然に行う文化ではなかったので、慣れないのは仕方のないことですわ。嬉しいけど恥ずかしいのです。
「リリはわたしに触れられるのは嫌か?」
そう問われて
「ご存知でしょう」
そう答えたら
「勿論」
見惚れてしまうような極上の笑みをわたくしだけに向けられます。
これから約一年掻き回される日々は多分ここから始まったのです。
並木の桜に似た花は散り葉が青く、新入生の初々しい顔を見ると二年前は自分もこうだったのかと少し懐かしく思います。
レオンハルト様とは週二日程、二人きりの昼食を摂るようにしております。
互いに友人や付き合いや学業に差し障りない程度の公務がある為、二人きりで過ごせるのはこの時と偶に放課後にお会いするくらいですから。
学生用の食堂やカフェテリアもあるのですが、二人でゆっくり食事を楽しみたいので個室にしていただいております。
何部屋かある個室は完全予約制です。同性、または婚約者同士しか利用できず、恋人も不可です。親の認めた者ではない異性同士が個室で問題を起こしてはなりませんからね。
わたくしはレオンハルト様以外ですとアメリア様達や学友との昼食時に利用したりいたします。
食堂でも勿論頂きますわ。
「リリは新入生の中に平民として生活していた男爵令嬢がいる話は聞いているかい?」
「いえ、存じておりませんわ。平民というと養女に迎えられた方ですの?」
「いや、詳しくは教えてもらっていないのだが、使用人だった母親が男爵の子を孕み、腹が大きくなると行方を眩ませたらしい。その子が見つかった時は母親が亡くなっていたので引き取ったようだ。その娘が新入生として入学したのだが貴族としての教養がないので、何か迷惑をかけても当面の間、最低限の教養が身に付くまで許して欲しいと教師から聞かされた。リリの方が関わる可能性があるだろう」
学年が違うので直接関わる可能性は低いですが、コーネリア様や友人の妹が今年入学しておりますので、間接的に関わる可能性はあるかもしれません。
「ええ、留意しておきますわ。それにしても、これから教養を身に付けないといけないなんてお可哀想に。マナー教育の先生に放課後個別でご指導頂けないかお伺いしてみるべきか迷いますわね。それに、相手が決まっていない方々もそろそろ婚約者を探さないとなりませんので、その方は同時進行となるのかしら?」
「男爵家だから、わたし達程厳しくないだろう。それにしても相変わらずリリは他人を心配する。そういう所は変わらないな。惚れ直す」
「なっ、レオ。余計な事は言わなくていいの」
「直ぐに照れる所も変わらない。顔が赤い、冷そうか?」
「頬を両手で触らないで下さいまし。食事中ですわよ。お行儀が悪すぎます」
「終わってからなら良いのか?」
「殿下、お控え下さいませ。リリア様もお困りでおいでです」
給仕をするレオンハルト様の従者にやんわりと咎められ、苦笑で返しておられます。
レオンハルト様は時々こうやってわたくしをからかいますの。
その時のお顔がとても楽しそうなので、見ているだけで嬉しくなるのだけどどうしても素直になれません。
自分からは行動に起こせないから触れてもらえると安心できます。嫌われていないのだと。
恋愛に対して臆病になるのは、自分に自信がないからと嫌われるのが怖いからなのでしょうと自己分析しておりますが、それに気づいた所で直せるかどうかは別です。
そもそも生前のわたくしが暮らしていた日本という国ではキスもハグも挨拶するように自然に行う文化ではなかったので、慣れないのは仕方のないことですわ。嬉しいけど恥ずかしいのです。
「リリはわたしに触れられるのは嫌か?」
そう問われて
「ご存知でしょう」
そう答えたら
「勿論」
見惚れてしまうような極上の笑みをわたくしだけに向けられます。
これから約一年掻き回される日々は多分ここから始まったのです。
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