125 / 199
125.Turning point①
しおりを挟む
今日は久々の女子会。メンバーは真央ちゃんと真奈美ちゃんと私の同じマンションの3人組。入社1年目の時は仕事に慣れていないせいか、誰かのお家に行って食べ物や飲み物を持ち寄り、愚痴を言い合ったり、お喋りする機会が多かった。でも、次第に余裕が出て仕事に慣れてくると個々のプライベートが充実してくるから、そちらの予定がもちろん優先。それに前年度は私が管理部に行ってしまい、行き違いがあったりしたものだからこの3人でこんな風に会うのは、本当に数ヶ月ぶりだった。だからそれなりに積もる話もなくもない。
「かんぱ~い」
グラスを合わせたら夕食には遅い時間だったので、全員お腹が空きまくり。早速、各々、テーブルの上のデリバリーしてあったピザに手を伸ばす。わりとしっかり食べながらも話題が尽きないのは、女子会ならでは。今日はわりと現実的な話から始まった。
「もう住むとこ決まった?」
お酒に強い真奈美ちゃんが飲みながら、思い出したように。真央ちゃんはちょうどピザをモグモグ頬張っていて答えられず、私だけが返事をする。
「それがなかなか決まらなくて。忙しくて見に行く暇もないし...」
なぜこんな話になったかというと、このマンションの築年数が古いことから、老朽化が進み、建て替えするというお知らせが春に来ていたから。それに伴い、私たちは秋までに立ち退きを迫られている。このマンションは民間ではあったけれど、会社が借り上げてくれ、場所も友達もできたからとてもいい住み心地だった。私としては同じような条件の物件を探していたつもりだったけれど、なかなか現実は厳しいものが。
「...実家に帰っても良いかなぁ。会社まで通えない距離でもないし」
「え?優里ちゃんは彼氏とか居ないの?」
真奈美ちゃんの突拍子もない台詞。なぜ、ここで彼氏の有無が必要?と苦笑いしてしまったけれど、あながち関係がなくもないみたいで。
「...そんなのいないよ。でも、なんで?」
真奈美ちゃんはモグモグと口を動かしながらグラスを大きく一口。その後、真剣に真央ちゃんと私に問うた。
「よく考えてみてよ。彼氏と同棲すれば今より広い部屋にも住めるし...プレ新婚生活。というか、結婚へ持ち込めるチャンスかもしれないんだよ?よく言うじゃん。更新の時にプロポーズとかさぁ!」
...なるほど。
真奈美ちゃんがそれはそれは身を乗り出すように力説する迫力に、ただ、ただ、私と真央ちゃんは頷くしかなかった。そう、今の私たちはもう新入社員ではなく20代半ば過ぎの結婚適齢期。今、誰かと付き合うなら結婚だって視野に入れて良いお年頃だったりする。
今も藤澤さんと付き合っていたら、そういう話が2人の間には出ていたのかもしれない。離れてしまった今となれば、そんな事を考えてしまうのは無駄だって分かっているけれど、あの手紙が届いた日から密かに彼との未来を期待してしまっているのは否めなかった。
...同棲から結婚。
グラスを持ちながら思わず想像してしまう藤澤さんと私の未来の結婚式。私はともかく、彼はとても素敵だろうと想いを馳せると顔の筋肉が緩みそう。
「あ、優里ちゃん。誰を想像してるのかな?」
「えー?なになに?」
妄想中の私に、目敏い真奈美ちゃんとキョトンとしている真央ちゃんの視線が痛い。私は妄想がバレたくなかったので、無理やり話題の方向転換した。
「それを言うなら2人の方が可能性あるでしょ!」
真奈美ちゃんは社外に付き合いたての彼氏がいるし、真央ちゃんは課長代理と付き合っているのは言わずもがな。
「それを言うなら真央の彼氏の方が...ねぇ」
私に水を向けられた真奈美ちゃんは真央ちゃんの方をちらり。真央ちゃんはその意味が分かったようで、照れまくる。この頃には課長代理と付き合っているのを真奈美ちゃんも知っていたものだから、それはそれはここぞとばかりに大っぴらに彼女の事をかまう。
社内で2人の関係を知っているのは私とマナミちゃんだけ。彼女は課長代理と付き合い始めから皆んなに関係をオープンにするのを避けていた。その理由は私と課長代理との噂がわりと厄介なものだと目の当たりにしたからだと思えた。やっぱり、社内で目立つ人と付き合うのは何かにつけてリスクが高いのだと私も痛感している。藤澤さんと付き合っていた時は分からなかったけれど、彼もそういう考えがあったのかもしれない。それは今さら分かってしまってもどうしようもないことだった。
「岡田さんの自宅って、ウチの会社の近くじゃなかったっけ?」
「...まあ、そうなんだけど」
ゴニョゴニョと彼女は小声になり、両手で顔を覆い初々しく恥ずかしがる。
「でも、そんなのマサキさんには言えない...」
真央ちゃんは誰かに聞かれても良いように、課長代理の事を「課長」ではなく「マサキさん」と呼んでいた。そんな彼女にちょっとだけ酔っ払いの真奈美ちゃんはからかい混じりの「マサキさん」呼び。しかも、連呼。(笑)
「何言ってんのよ。マサキさん、真央には激甘じゃない!住むところがなかなか見つからなくて困ってるんですぅ...とか、なんとか相談してみなって。絶対、親身になってくれると思うよ、マサキさんは!」
「そ、そうかな...?」
「そうそう!絶対、話す価値、大!!」
しかも親指を立てての猛アピールに真央ちゃんもタジタジ。この日は真奈美ちゃんの言葉を酔っ払いの戯言と真央ちゃんは本気にせず終了したはずが、後に驚く後日談があった。
実はこの時の話がキッカケで2人は同棲を始めたのだ。
その報告を受けた真奈美ちゃんは「ほらね」と、得意げに教えてくれ、私は人生何があるか分からないと思ったのは言うまでもない。
「かんぱ~い」
グラスを合わせたら夕食には遅い時間だったので、全員お腹が空きまくり。早速、各々、テーブルの上のデリバリーしてあったピザに手を伸ばす。わりとしっかり食べながらも話題が尽きないのは、女子会ならでは。今日はわりと現実的な話から始まった。
「もう住むとこ決まった?」
お酒に強い真奈美ちゃんが飲みながら、思い出したように。真央ちゃんはちょうどピザをモグモグ頬張っていて答えられず、私だけが返事をする。
「それがなかなか決まらなくて。忙しくて見に行く暇もないし...」
なぜこんな話になったかというと、このマンションの築年数が古いことから、老朽化が進み、建て替えするというお知らせが春に来ていたから。それに伴い、私たちは秋までに立ち退きを迫られている。このマンションは民間ではあったけれど、会社が借り上げてくれ、場所も友達もできたからとてもいい住み心地だった。私としては同じような条件の物件を探していたつもりだったけれど、なかなか現実は厳しいものが。
「...実家に帰っても良いかなぁ。会社まで通えない距離でもないし」
「え?優里ちゃんは彼氏とか居ないの?」
真奈美ちゃんの突拍子もない台詞。なぜ、ここで彼氏の有無が必要?と苦笑いしてしまったけれど、あながち関係がなくもないみたいで。
「...そんなのいないよ。でも、なんで?」
真奈美ちゃんはモグモグと口を動かしながらグラスを大きく一口。その後、真剣に真央ちゃんと私に問うた。
「よく考えてみてよ。彼氏と同棲すれば今より広い部屋にも住めるし...プレ新婚生活。というか、結婚へ持ち込めるチャンスかもしれないんだよ?よく言うじゃん。更新の時にプロポーズとかさぁ!」
...なるほど。
真奈美ちゃんがそれはそれは身を乗り出すように力説する迫力に、ただ、ただ、私と真央ちゃんは頷くしかなかった。そう、今の私たちはもう新入社員ではなく20代半ば過ぎの結婚適齢期。今、誰かと付き合うなら結婚だって視野に入れて良いお年頃だったりする。
今も藤澤さんと付き合っていたら、そういう話が2人の間には出ていたのかもしれない。離れてしまった今となれば、そんな事を考えてしまうのは無駄だって分かっているけれど、あの手紙が届いた日から密かに彼との未来を期待してしまっているのは否めなかった。
...同棲から結婚。
グラスを持ちながら思わず想像してしまう藤澤さんと私の未来の結婚式。私はともかく、彼はとても素敵だろうと想いを馳せると顔の筋肉が緩みそう。
「あ、優里ちゃん。誰を想像してるのかな?」
「えー?なになに?」
妄想中の私に、目敏い真奈美ちゃんとキョトンとしている真央ちゃんの視線が痛い。私は妄想がバレたくなかったので、無理やり話題の方向転換した。
「それを言うなら2人の方が可能性あるでしょ!」
真奈美ちゃんは社外に付き合いたての彼氏がいるし、真央ちゃんは課長代理と付き合っているのは言わずもがな。
「それを言うなら真央の彼氏の方が...ねぇ」
私に水を向けられた真奈美ちゃんは真央ちゃんの方をちらり。真央ちゃんはその意味が分かったようで、照れまくる。この頃には課長代理と付き合っているのを真奈美ちゃんも知っていたものだから、それはそれはここぞとばかりに大っぴらに彼女の事をかまう。
社内で2人の関係を知っているのは私とマナミちゃんだけ。彼女は課長代理と付き合い始めから皆んなに関係をオープンにするのを避けていた。その理由は私と課長代理との噂がわりと厄介なものだと目の当たりにしたからだと思えた。やっぱり、社内で目立つ人と付き合うのは何かにつけてリスクが高いのだと私も痛感している。藤澤さんと付き合っていた時は分からなかったけれど、彼もそういう考えがあったのかもしれない。それは今さら分かってしまってもどうしようもないことだった。
「岡田さんの自宅って、ウチの会社の近くじゃなかったっけ?」
「...まあ、そうなんだけど」
ゴニョゴニョと彼女は小声になり、両手で顔を覆い初々しく恥ずかしがる。
「でも、そんなのマサキさんには言えない...」
真央ちゃんは誰かに聞かれても良いように、課長代理の事を「課長」ではなく「マサキさん」と呼んでいた。そんな彼女にちょっとだけ酔っ払いの真奈美ちゃんはからかい混じりの「マサキさん」呼び。しかも、連呼。(笑)
「何言ってんのよ。マサキさん、真央には激甘じゃない!住むところがなかなか見つからなくて困ってるんですぅ...とか、なんとか相談してみなって。絶対、親身になってくれると思うよ、マサキさんは!」
「そ、そうかな...?」
「そうそう!絶対、話す価値、大!!」
しかも親指を立てての猛アピールに真央ちゃんもタジタジ。この日は真奈美ちゃんの言葉を酔っ払いの戯言と真央ちゃんは本気にせず終了したはずが、後に驚く後日談があった。
実はこの時の話がキッカケで2人は同棲を始めたのだ。
その報告を受けた真奈美ちゃんは「ほらね」と、得意げに教えてくれ、私は人生何があるか分からないと思ったのは言うまでもない。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる