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139.beloved⑦
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てっきり私はその日で吉田さんと会うのはおしまいで、連絡は来ないと思った。だから、その後もマメに本の話でメールをくれたりして、また映画に誘われる。
最初は戸惑いもしたけれど、私から連絡を途絶えさせるのもできなかった。でも、それは映画を観たり、本屋さんに行ったりと決して友達の範疇を超えないもの。そして、いつしか彼から連絡が来るのは当たり前の事のようになってゆき、会うのも以前ほどの抵抗はなくなってゆく。
気がつくと私にとって、吉田さんは趣味がとてもよく合う異性の友達になっていた。
そうして彼と過ごしてゆくうちに季節が進み、もうすぐクリスマスシーズン到来。
既に吉田さんとは4.5回ほど2人きりで会っており、彼と会うのに全く抵抗がなくなっていた。観たいなと思っていた映画に誘われたのでいつもの待ち合わせの書店へと急ぐ。それは慣れたものだった。
「こんにちは。今日の映画は前売り手に入れたので私が奢りますね」
いつも映画代や食事をご馳走になってばかりで気が引けていたので先手を打つと、同意はしてもらえたものの、今日1日、吉田さんの様子が少し変に感じる。変といってもほんの微かなもので、それは自分の気のせいだと思った。
だから、帰りもいつもみたいに私が乗る沿線の改札口の前で見送ってもらい、彼と別れるまで普段通りに過ごして。
「今日はご馳走様でした」
「いえいえ...こちらこそいつも付き合ってくれてありがとう」
今日は映画代の代わりにと夜ご飯を奢ってもらってしまった。こんなはずではなかったと思いつつも感謝の気持ちを伝える。そしていつもみたいに電車の来る時間なので改札口へと向かおうと彼と別れて歩き出そうとしたら呼び止められる。
「み、三浦さん!」
それが聞こえた私は改札口へ向かうのを止め、忘れ物かしらと再び彼の元へ戻ると彼は目を伏せながら。
「...今度の金曜日、もし良かったら会社帰りに会えませんか?その...食事でも」
いつも私たちが会うのは週末の会社休みのどちらかで、平日に誘われるのは初めてのことだ。しかもいつもみたいに観たい映画をではなく、純粋に食事に行きたいと誘われている。
「え...と...」
私には誘われている理由が分からない。目をパチクリ瞬かせると返事を待つ吉田さんの方からその日に会う意味を伝えられた。
「金曜日はクリスマスイブなので...出来たら、今年のクリスマスは三浦さんと一緒に過ごしたいと思いまして」
ここまで言われ、ようやく彼が誘ってくれた理由や少し様子が変だったのも理解する。
「それは...その」
ただ、すぐに返事はできずに押し黙り、そのまま私は俯いた。その時、ある人の顔が頭をよぎったものの、すぐに打ち消し、吉田さんの顔を見つめ笑顔を作った。
「誘ってもらえて嬉しいです...私もクリスマスイブ、楽しみにしています」
私の返事をずっと緊張した顔で待っていた吉田さんは目を細めて破顔し、今度は私の顔をちゃんと見てくれた。それがお互いに見つめ合うみたいになり、気恥ずかしくなってしまったけれども自分から目をそらすことが出来なかった。そして、しばらくその場で立ち止まっていると、次の電車の到着案内が流れて来るのが聞こえてくる。再び改札口で別れ、私は足早に到着した電車に乗りこむ。
...クリスマスイブに食事かぁ。
その日まで指折り数えると、もう何回めのクリスマスイブを1人で迎えたかしらと思う。
自宅のカレンダーも12月のページ。また今年もクリスマスの季節がやってくる。
人差し指でなぞる24日は一般的にはクリスマスイブしかない。
でも、藤澤さんに出会ってしまってから私にとってこの日は大好きな彼の誕生日になっていた。
何度すぎれば思い出さなくなる?
貴方は、今、誰と過ごしているの?
そんな風に、ずっと貴方を思い出していたけれど今年は私も一人ぼっちじゃないから。
藤澤さん、私はもう大丈夫だから安心してね。
最初は戸惑いもしたけれど、私から連絡を途絶えさせるのもできなかった。でも、それは映画を観たり、本屋さんに行ったりと決して友達の範疇を超えないもの。そして、いつしか彼から連絡が来るのは当たり前の事のようになってゆき、会うのも以前ほどの抵抗はなくなってゆく。
気がつくと私にとって、吉田さんは趣味がとてもよく合う異性の友達になっていた。
そうして彼と過ごしてゆくうちに季節が進み、もうすぐクリスマスシーズン到来。
既に吉田さんとは4.5回ほど2人きりで会っており、彼と会うのに全く抵抗がなくなっていた。観たいなと思っていた映画に誘われたのでいつもの待ち合わせの書店へと急ぐ。それは慣れたものだった。
「こんにちは。今日の映画は前売り手に入れたので私が奢りますね」
いつも映画代や食事をご馳走になってばかりで気が引けていたので先手を打つと、同意はしてもらえたものの、今日1日、吉田さんの様子が少し変に感じる。変といってもほんの微かなもので、それは自分の気のせいだと思った。
だから、帰りもいつもみたいに私が乗る沿線の改札口の前で見送ってもらい、彼と別れるまで普段通りに過ごして。
「今日はご馳走様でした」
「いえいえ...こちらこそいつも付き合ってくれてありがとう」
今日は映画代の代わりにと夜ご飯を奢ってもらってしまった。こんなはずではなかったと思いつつも感謝の気持ちを伝える。そしていつもみたいに電車の来る時間なので改札口へと向かおうと彼と別れて歩き出そうとしたら呼び止められる。
「み、三浦さん!」
それが聞こえた私は改札口へ向かうのを止め、忘れ物かしらと再び彼の元へ戻ると彼は目を伏せながら。
「...今度の金曜日、もし良かったら会社帰りに会えませんか?その...食事でも」
いつも私たちが会うのは週末の会社休みのどちらかで、平日に誘われるのは初めてのことだ。しかもいつもみたいに観たい映画をではなく、純粋に食事に行きたいと誘われている。
「え...と...」
私には誘われている理由が分からない。目をパチクリ瞬かせると返事を待つ吉田さんの方からその日に会う意味を伝えられた。
「金曜日はクリスマスイブなので...出来たら、今年のクリスマスは三浦さんと一緒に過ごしたいと思いまして」
ここまで言われ、ようやく彼が誘ってくれた理由や少し様子が変だったのも理解する。
「それは...その」
ただ、すぐに返事はできずに押し黙り、そのまま私は俯いた。その時、ある人の顔が頭をよぎったものの、すぐに打ち消し、吉田さんの顔を見つめ笑顔を作った。
「誘ってもらえて嬉しいです...私もクリスマスイブ、楽しみにしています」
私の返事をずっと緊張した顔で待っていた吉田さんは目を細めて破顔し、今度は私の顔をちゃんと見てくれた。それがお互いに見つめ合うみたいになり、気恥ずかしくなってしまったけれども自分から目をそらすことが出来なかった。そして、しばらくその場で立ち止まっていると、次の電車の到着案内が流れて来るのが聞こえてくる。再び改札口で別れ、私は足早に到着した電車に乗りこむ。
...クリスマスイブに食事かぁ。
その日まで指折り数えると、もう何回めのクリスマスイブを1人で迎えたかしらと思う。
自宅のカレンダーも12月のページ。また今年もクリスマスの季節がやってくる。
人差し指でなぞる24日は一般的にはクリスマスイブしかない。
でも、藤澤さんに出会ってしまってから私にとってこの日は大好きな彼の誕生日になっていた。
何度すぎれば思い出さなくなる?
貴方は、今、誰と過ごしているの?
そんな風に、ずっと貴方を思い出していたけれど今年は私も一人ぼっちじゃないから。
藤澤さん、私はもう大丈夫だから安心してね。
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