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【spin-off】bittersweet first love
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慣れない願い事をしたせいか、それとも神に嫌われてしまったのか。
理由はよく分からなかったが、手応えがあった本番の模試の判定はB判定。過去最高点にもかかわらず、自宅に郵送されたその結果を冷静に眺める。
...世の中そんなに甘くない、な。
これで外部受験をする事は叶わなくなってしまったのだが、不思議なくらいこの結果を淡々と受け止められており、今後の身の振り方を思う。自分としては不本意だが、自分から言いだした約束を守らざるおえない。明日、学校で塩爺が手ぐすね引いて待ち構えている事だろう。それは自業自得で異存はなかった。それよりも、気がかりなのは彼女の事だ。
...高澤になんて話そう?
誰かのために受験するのではなく自分のための受験だったのだが、自分の事のように応援してくれていた彼女の期待を裏切ってしまったようで、若干、心苦しい。それでも今回の結果は伝えるべきなのだろう。ちょうど、今週予備校の授業で彼女と一緒のコマがある。その時に話そうと思い、授業の前に待ち合わせをした。
※※※
高澤と待ち合わせたのは予備校の最寄り駅の改札。いつもは予備校でなんとなく会い、一緒に駅まで帰っていたので、わざわざ待ち合わせたのは今回が初めて。早めに到着してしまったので彼女を待つ間柄にもなくそわそわしていた。意味もなく何度か腕時計を確認して、待つ事十数分。彼女の方から声をかけてくれたのですぐに気がつく。
「...待った?」
遅れたと思い駆け寄ってきた到着時刻は遅刻ではなく約束通りピッタリ。それでも彼女は申し訳なさそうに態度に表す。
「いや、俺も今来たところだから」
「それならいいんだけど、遅れてごめん」
そんなに気にしなくてもいいのにと横に並び、歩調を合わせ予備校まで歩く。こんな風に高澤が隣にいても以前のように嫌悪感を抱く事はなかった。それどころか最近は彼女の違う一面が垣間見れ、自分が知っている高澤と違う人間なのではないかと思えるほど、彼女に対する印象は一変している。
...俺は高澤の上辺しか見てこなかったんだな。
予備校への道を歩きながら頭1つ分位下にある高澤の頭を見下ろすと初夏の爽やかな風で彼女の前髪がなびいていた。それを人知れず眺めていたら、高澤が突然俺の顔を見上げてきて、目が合ってしまいギョッとする。
「な、なんだよ?」
「...いや、そのぉ...間違っていたら悪いんだけど。この間の模試の結果もう出た...よね?」
彼女は今回の模試が俺にとってどれだけ重要か覚えていてくれたようで、遠慮しつつも気になって仕方がなかったのは高澤らしい。俺は今日話すはずだったのにもかかわらず、自分から言い出せない不甲斐なさに小さく息を吐き、自嘲するしかなかった。
「あぁ、結果出たよ。前回と同じB判定。どんなに頑張っても無駄な足掻きだった」
自分なりに頑張っても無理だった事には諦めがついている。だが、不思議な事に俺以上に彼女の方がショックを受けているように見えた。
「...なんで笑ってられるの?あんなに頑張ってたんだよ?このまま諦めちゃうの?」
「なんでって言われても...担任との約束だし。本番で失敗するよりはマシってことだろ?」
「でも、もう一度先生に掛け合ってみたら?模試の結果なんてあてにならない...」
「無理だよ。今回も大分粘っての事だったんだ」
自分のことのように心配してくれるのは嬉しいがこればかりはどうしようもない。高澤もこれ以上食い下がってもダメだと悟ったのか話さなくなり、予備校に着いた。彼女は自分の授業のコマの教室を確認し、いつもと同じように確認していないこちらを気にかける。
「...どうしたの?授業...あ、もしかしてここ辞めちゃうの?」
「当たり。今日は手続きに来たんだ」
「...そっか。そうだよね、受験しないならここに来ても意味ないし」
「うん、まあ、そういう事なんだけど...」
「残念だったね...」
こんな風にがっかりさせてしまう事も予想出来ていたので、予備校には1人で来ても良かった。それを敢えてしなかったのは理由がある。
「あのさ、もし良ければなんだけど渡したいものが...」
そう言って、通学カバンを漁っていると彼女は徐ろに腕時計を見る。すると。
「ごめんっ、もう時間だから!!急ぐから、バイバイ!!」
さっきまでのしんみりとした雰囲気が一変、一方的に別れを告げられてしまう。
「え!?ちょっと!???」
まだ、授業の始業時間でもないのに慌てて行こうとする彼女に追いすがったが、まるっと無視された。そして、残された俺は渡したいものがあるからまた会う機会を作って欲しいと日を置いて連絡したが、音沙汰はなかった。
理由はよく分からなかったが、手応えがあった本番の模試の判定はB判定。過去最高点にもかかわらず、自宅に郵送されたその結果を冷静に眺める。
...世の中そんなに甘くない、な。
これで外部受験をする事は叶わなくなってしまったのだが、不思議なくらいこの結果を淡々と受け止められており、今後の身の振り方を思う。自分としては不本意だが、自分から言いだした約束を守らざるおえない。明日、学校で塩爺が手ぐすね引いて待ち構えている事だろう。それは自業自得で異存はなかった。それよりも、気がかりなのは彼女の事だ。
...高澤になんて話そう?
誰かのために受験するのではなく自分のための受験だったのだが、自分の事のように応援してくれていた彼女の期待を裏切ってしまったようで、若干、心苦しい。それでも今回の結果は伝えるべきなのだろう。ちょうど、今週予備校の授業で彼女と一緒のコマがある。その時に話そうと思い、授業の前に待ち合わせをした。
※※※
高澤と待ち合わせたのは予備校の最寄り駅の改札。いつもは予備校でなんとなく会い、一緒に駅まで帰っていたので、わざわざ待ち合わせたのは今回が初めて。早めに到着してしまったので彼女を待つ間柄にもなくそわそわしていた。意味もなく何度か腕時計を確認して、待つ事十数分。彼女の方から声をかけてくれたのですぐに気がつく。
「...待った?」
遅れたと思い駆け寄ってきた到着時刻は遅刻ではなく約束通りピッタリ。それでも彼女は申し訳なさそうに態度に表す。
「いや、俺も今来たところだから」
「それならいいんだけど、遅れてごめん」
そんなに気にしなくてもいいのにと横に並び、歩調を合わせ予備校まで歩く。こんな風に高澤が隣にいても以前のように嫌悪感を抱く事はなかった。それどころか最近は彼女の違う一面が垣間見れ、自分が知っている高澤と違う人間なのではないかと思えるほど、彼女に対する印象は一変している。
...俺は高澤の上辺しか見てこなかったんだな。
予備校への道を歩きながら頭1つ分位下にある高澤の頭を見下ろすと初夏の爽やかな風で彼女の前髪がなびいていた。それを人知れず眺めていたら、高澤が突然俺の顔を見上げてきて、目が合ってしまいギョッとする。
「な、なんだよ?」
「...いや、そのぉ...間違っていたら悪いんだけど。この間の模試の結果もう出た...よね?」
彼女は今回の模試が俺にとってどれだけ重要か覚えていてくれたようで、遠慮しつつも気になって仕方がなかったのは高澤らしい。俺は今日話すはずだったのにもかかわらず、自分から言い出せない不甲斐なさに小さく息を吐き、自嘲するしかなかった。
「あぁ、結果出たよ。前回と同じB判定。どんなに頑張っても無駄な足掻きだった」
自分なりに頑張っても無理だった事には諦めがついている。だが、不思議な事に俺以上に彼女の方がショックを受けているように見えた。
「...なんで笑ってられるの?あんなに頑張ってたんだよ?このまま諦めちゃうの?」
「なんでって言われても...担任との約束だし。本番で失敗するよりはマシってことだろ?」
「でも、もう一度先生に掛け合ってみたら?模試の結果なんてあてにならない...」
「無理だよ。今回も大分粘っての事だったんだ」
自分のことのように心配してくれるのは嬉しいがこればかりはどうしようもない。高澤もこれ以上食い下がってもダメだと悟ったのか話さなくなり、予備校に着いた。彼女は自分の授業のコマの教室を確認し、いつもと同じように確認していないこちらを気にかける。
「...どうしたの?授業...あ、もしかしてここ辞めちゃうの?」
「当たり。今日は手続きに来たんだ」
「...そっか。そうだよね、受験しないならここに来ても意味ないし」
「うん、まあ、そういう事なんだけど...」
「残念だったね...」
こんな風にがっかりさせてしまう事も予想出来ていたので、予備校には1人で来ても良かった。それを敢えてしなかったのは理由がある。
「あのさ、もし良ければなんだけど渡したいものが...」
そう言って、通学カバンを漁っていると彼女は徐ろに腕時計を見る。すると。
「ごめんっ、もう時間だから!!急ぐから、バイバイ!!」
さっきまでのしんみりとした雰囲気が一変、一方的に別れを告げられてしまう。
「え!?ちょっと!???」
まだ、授業の始業時間でもないのに慌てて行こうとする彼女に追いすがったが、まるっと無視された。そして、残された俺は渡したいものがあるからまた会う機会を作って欲しいと日を置いて連絡したが、音沙汰はなかった。
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