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【spin-off】bittersweet first love
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ダブルデート当日。
『天使ちゃん』とやらのリクエストで、場所はみなとみらいの遊園地。田山は高三の時に既に免許を取得しており、大学生活を満喫していたその車の助手席に座りながら、爽やかな風を受け、田山の運転のうまさに感心する。そして、彼女らの待つ駅のロータリーへと連れて行かれたのだが、先ほどまでの穏やかな気持ちが一変。
「はじめまして沙耶ちゃんと同じ大学の高澤です」
田山の『天使ちゃん』の友達だという彼女だが、どう見ても俺の知っている高澤にしか思えなかった。
...はじめましてじゃないだろっ!?
そう言いたいのを抑え、田山の方を見ると素知らぬ顔でそっぽ向いている。確信犯だと悟った俺は小さく舌打ちすると、高澤と目が合いにっこりと微笑まれる。俺も口元を引き攣らせながらも笑みを返した。
...どうにでもなれ。
そして、半ば諦めの境地な俺を尻目に他の3人は和気藹々と遊園地へと入ったのだが、予期せぬことが起きる。今日はダブルデートの予定なので、偶数の乗り物の時の順当な組み合わせは当然田山と天使ちゃん、俺と高澤となるはずだったのだが。
「高ちゃんはここ来てね!」
「え?いいの?」
といった具合に、天使ちゃんがやたらと高澤と一緒に乗り物の乗りたがり、俺と田山は必然的に隣同士。最初は高澤に隣を譲っていた田山も天使ちゃんのガードの堅さになかなかいつものペースに持っていけずに焦れてきた。
「...なんで、こんな所に来てまで藤澤となんか」
「なんかとは何だよ。失礼な」
前の2人がキャッキャっとはしゃいでいるのをいい事に隣でブツブツ愚痴をこぼす田山がウザい。俺としては高澤と何を話していいのか分からなかったので、このままの状態でも構わないと思っていたのだが。
「...田山は?」
お昼は遊園地内のテラスで取る事になり、自分の分を買いに戻ってくると田山がいなかった。たまたま高澤しかいなかったので、他人行儀を意識する事なく話しかけると彼女もまたいつも通りで。
「沙耶ちゃんとちょっと買い物みたい。私が戻ってきたら2人で出かけちゃって。先に食べてていいって言ってたわよ」
「ふうん...」
持ってきたトレイをテーブルに置き、高澤の向かいの席に座る。今日初めてまともに顔を見た気がした。
...髪、伸びたな。
以前はショートカットが代名詞だった彼女の髪は肩まで伸び、高校生の時より大人びた女性の雰囲気を醸し出しており、時間の経過を感じさせる。やはり、いざ2人きりになってしまうと、あの時の事を思い出してしまい気まずい空気が何ともいたたまれない。無言でハンバーガーを頬張りながら、高澤はどうなのかと思っていたら、彼女はいつも通りに話しかけてきた。だから、途中から俺も意識してしているのがバカバカしくなった。
「高澤ってここの大学だったんだ?」
「まあね。これでも受ける学校ギリギリ迷ったんだ。だから、藤澤には変更したの話してなかったよね。ごめん」
「いいさ、そんなの。それにしても今日は驚いたよ。まさか、高澤が来るなんて」
「あはは。本当ね。私も沙耶ちゃんと田山が知り合いだったなんてびっくりしたもの。でも、田山が連れて来るのは絶対藤澤だと思った。藤澤付き合いいいから」
「...何だよ、人を暇人みたいに」
「違うよ、本当に付き合いがいいんだなって。でも、...その、奈々ちゃん、大丈夫なの?」
さっきまで快活に話していた高澤が口籠る。『奈々ちゃん』とは倉科のことで彼女が気にするのは無理はなかった。
「...まあ、付き合い長いからそんなことぐらいじゃ、怒られないよ」
今はほとんどお互いに関心を持っていないなんて言える訳がなかったので適当に誤魔化したのだが、高澤が何とも複雑な顔をしている。
「...高澤は倉科と連絡取ってないのか?」
あれだけ仲の良かった2人なのに、俺と倉科のが付き合い始めてから倉科からも高澤の話題は殆どなかった事を思い出すと、高澤は「ちょっとケンカしちゃって」と小さく笑っていた。
...倉科の事は禁句?
地雷を踏んでしまった様な気がしたので、とりあえず、別の話題をと考えているとまだ田山たちが戻ってこない。あれからずいぶん経つぞと時計を見ると、高澤も同じことを思ったらしく自分のスマホを取り出し、「連絡してみる」と席を外した。俺も食事を終え、手持ち無沙汰だったので自分のスマホを見るといつの間にか田山からのメールが届いており、嫌な予感をしつつ開いてみると。
『天使ちゃんと2人っきりになりたいので、あとよろしく。高澤と仲良くね』
それは、くらくら眩暈がしそうな文面だった。
『天使ちゃん』とやらのリクエストで、場所はみなとみらいの遊園地。田山は高三の時に既に免許を取得しており、大学生活を満喫していたその車の助手席に座りながら、爽やかな風を受け、田山の運転のうまさに感心する。そして、彼女らの待つ駅のロータリーへと連れて行かれたのだが、先ほどまでの穏やかな気持ちが一変。
「はじめまして沙耶ちゃんと同じ大学の高澤です」
田山の『天使ちゃん』の友達だという彼女だが、どう見ても俺の知っている高澤にしか思えなかった。
...はじめましてじゃないだろっ!?
そう言いたいのを抑え、田山の方を見ると素知らぬ顔でそっぽ向いている。確信犯だと悟った俺は小さく舌打ちすると、高澤と目が合いにっこりと微笑まれる。俺も口元を引き攣らせながらも笑みを返した。
...どうにでもなれ。
そして、半ば諦めの境地な俺を尻目に他の3人は和気藹々と遊園地へと入ったのだが、予期せぬことが起きる。今日はダブルデートの予定なので、偶数の乗り物の時の順当な組み合わせは当然田山と天使ちゃん、俺と高澤となるはずだったのだが。
「高ちゃんはここ来てね!」
「え?いいの?」
といった具合に、天使ちゃんがやたらと高澤と一緒に乗り物の乗りたがり、俺と田山は必然的に隣同士。最初は高澤に隣を譲っていた田山も天使ちゃんのガードの堅さになかなかいつものペースに持っていけずに焦れてきた。
「...なんで、こんな所に来てまで藤澤となんか」
「なんかとは何だよ。失礼な」
前の2人がキャッキャっとはしゃいでいるのをいい事に隣でブツブツ愚痴をこぼす田山がウザい。俺としては高澤と何を話していいのか分からなかったので、このままの状態でも構わないと思っていたのだが。
「...田山は?」
お昼は遊園地内のテラスで取る事になり、自分の分を買いに戻ってくると田山がいなかった。たまたま高澤しかいなかったので、他人行儀を意識する事なく話しかけると彼女もまたいつも通りで。
「沙耶ちゃんとちょっと買い物みたい。私が戻ってきたら2人で出かけちゃって。先に食べてていいって言ってたわよ」
「ふうん...」
持ってきたトレイをテーブルに置き、高澤の向かいの席に座る。今日初めてまともに顔を見た気がした。
...髪、伸びたな。
以前はショートカットが代名詞だった彼女の髪は肩まで伸び、高校生の時より大人びた女性の雰囲気を醸し出しており、時間の経過を感じさせる。やはり、いざ2人きりになってしまうと、あの時の事を思い出してしまい気まずい空気が何ともいたたまれない。無言でハンバーガーを頬張りながら、高澤はどうなのかと思っていたら、彼女はいつも通りに話しかけてきた。だから、途中から俺も意識してしているのがバカバカしくなった。
「高澤ってここの大学だったんだ?」
「まあね。これでも受ける学校ギリギリ迷ったんだ。だから、藤澤には変更したの話してなかったよね。ごめん」
「いいさ、そんなの。それにしても今日は驚いたよ。まさか、高澤が来るなんて」
「あはは。本当ね。私も沙耶ちゃんと田山が知り合いだったなんてびっくりしたもの。でも、田山が連れて来るのは絶対藤澤だと思った。藤澤付き合いいいから」
「...何だよ、人を暇人みたいに」
「違うよ、本当に付き合いがいいんだなって。でも、...その、奈々ちゃん、大丈夫なの?」
さっきまで快活に話していた高澤が口籠る。『奈々ちゃん』とは倉科のことで彼女が気にするのは無理はなかった。
「...まあ、付き合い長いからそんなことぐらいじゃ、怒られないよ」
今はほとんどお互いに関心を持っていないなんて言える訳がなかったので適当に誤魔化したのだが、高澤が何とも複雑な顔をしている。
「...高澤は倉科と連絡取ってないのか?」
あれだけ仲の良かった2人なのに、俺と倉科のが付き合い始めてから倉科からも高澤の話題は殆どなかった事を思い出すと、高澤は「ちょっとケンカしちゃって」と小さく笑っていた。
...倉科の事は禁句?
地雷を踏んでしまった様な気がしたので、とりあえず、別の話題をと考えているとまだ田山たちが戻ってこない。あれからずいぶん経つぞと時計を見ると、高澤も同じことを思ったらしく自分のスマホを取り出し、「連絡してみる」と席を外した。俺も食事を終え、手持ち無沙汰だったので自分のスマホを見るといつの間にか田山からのメールが届いており、嫌な予感をしつつ開いてみると。
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