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41.Bask in the afterglow①
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さっまで私の頰や髪を撫でていた手が後頭部に回り、いつの間にか唇に柔らかなものが触れていた。
目を一度瞬きさせると、触れていたものすべてが私の身体から離れる。
...今の、なに?
私を困惑させた張本人は、ハンドルに突っ伏してハンドルに謝っていた。
「ごめんっ、今日が誕生日だから調子に乗りましたっ!!」
そんな彼に目を見開いたまま茫然自失の私は反応できなくて、私の様子を伺おうと、ハンドルから恐る恐る顔をあげる藤澤さん。
「...三浦さん?」
私がずっと微動だにしないものだから彼は心配そうに私の前に手のひらをヒラヒラかざしている。その手の動きでハッとして夢から醒めたみたいに、何度も瞬きを繰り返した。
「...今の、キス...?」
うわ言のように私は同じ言葉を繰り返し、唇を自分の指先で触れる。
キスをしたという気がしなかった。
こんな偶発的な事故みたいな出来事がファーストキスだなんて、自分が想像していたものと全く違い、ショックだった。
「これが...はじめて...の?」
その言葉で、ずっと私の様子を見ていた藤澤さんが額に手を当て項垂れしまい、ため息をつく。
そして、顔をあげたと思ったら、さっきみたいに優しく頰をなでてくれた。
ゆっくりと私の意識を自分へと向けるように。
私はその手の感触に導かれ、彼の方へと身体を近づける。
彼は慈しむような笑みを私に向け、今度はそっと聞いてきた。
「ごめん。もう一度、いい...?」
それには驚いたけれど無言で頷くと、彼の親指が私の唇を拭うように触れてくる。
その仕草は、私に触れた自分の痕跡を消しているみたいに思えた。
少しの間、彼にされるがままじっとしていると、フッと口元を緩めた彼が耳元に唇を寄せる。
「目を閉じて?」
彼の低音で、暗示にかかったように目をとじながらも、すぐそばにある彼の腕を軽く掴んでしまう。
目を閉じると、聴覚だけが研ぎ澄まされ、静かすぎて少し怖かったけれど、藤澤さんの声で安心した。
「好きだよ...優里」
今度は、ちゃんと。
頰を撫でてくれる彼の手の体温が優しいと感じられる。
触れてくる彼の唇が私を好きだと言ってくれる。
さっきよりもほんの少しだけ長いキスで、私の心は幸せで満たさていた。
ゆっくりと彼が離れていく感覚を肌で感じて目を開けると、目の前の彼が私に穏やかに微笑んでくれている。その笑顔は、私だけのもの。
「ふ、藤澤さん...遅くなりましたけど。お誕生日おめでとうございます...」
すると、彼は離れるどころか、私の身体を引き寄せた。
「っ...」
突然のことで小さく息をのんだけれど、抗うことはせず、そのまま彼の腕の中に閉じ込められる。時折、ギュと腕に力を込められ、その都度、身体を強張らせてしまいそうになったけれど彼の背に縋りついていた。
それから、彼の唇が私の耳たぶに口づける。
「ん....」
意識せずとも甘さを含んだ吐息が漏れてしまい、彼に聞こえたら恥ずかしいと思っていたら、また、耳元で。
「...ファーストキスの上書きはできましたか?」
彼の声もなんだかいつもより甘く聞こえる。
さっきのキスで気持ちが蕩けていた私は「はい」とだけ答えて、気がつくと自ら彼の固い胸に顔を埋めていた。
...もう、藤澤さんは帰らないといけないのに。
私たちが抱き合う様を見ている車のデジタル時計は、とっくに12時を過ぎている。
目を一度瞬きさせると、触れていたものすべてが私の身体から離れる。
...今の、なに?
私を困惑させた張本人は、ハンドルに突っ伏してハンドルに謝っていた。
「ごめんっ、今日が誕生日だから調子に乗りましたっ!!」
そんな彼に目を見開いたまま茫然自失の私は反応できなくて、私の様子を伺おうと、ハンドルから恐る恐る顔をあげる藤澤さん。
「...三浦さん?」
私がずっと微動だにしないものだから彼は心配そうに私の前に手のひらをヒラヒラかざしている。その手の動きでハッとして夢から醒めたみたいに、何度も瞬きを繰り返した。
「...今の、キス...?」
うわ言のように私は同じ言葉を繰り返し、唇を自分の指先で触れる。
キスをしたという気がしなかった。
こんな偶発的な事故みたいな出来事がファーストキスだなんて、自分が想像していたものと全く違い、ショックだった。
「これが...はじめて...の?」
その言葉で、ずっと私の様子を見ていた藤澤さんが額に手を当て項垂れしまい、ため息をつく。
そして、顔をあげたと思ったら、さっきみたいに優しく頰をなでてくれた。
ゆっくりと私の意識を自分へと向けるように。
私はその手の感触に導かれ、彼の方へと身体を近づける。
彼は慈しむような笑みを私に向け、今度はそっと聞いてきた。
「ごめん。もう一度、いい...?」
それには驚いたけれど無言で頷くと、彼の親指が私の唇を拭うように触れてくる。
その仕草は、私に触れた自分の痕跡を消しているみたいに思えた。
少しの間、彼にされるがままじっとしていると、フッと口元を緩めた彼が耳元に唇を寄せる。
「目を閉じて?」
彼の低音で、暗示にかかったように目をとじながらも、すぐそばにある彼の腕を軽く掴んでしまう。
目を閉じると、聴覚だけが研ぎ澄まされ、静かすぎて少し怖かったけれど、藤澤さんの声で安心した。
「好きだよ...優里」
今度は、ちゃんと。
頰を撫でてくれる彼の手の体温が優しいと感じられる。
触れてくる彼の唇が私を好きだと言ってくれる。
さっきよりもほんの少しだけ長いキスで、私の心は幸せで満たさていた。
ゆっくりと彼が離れていく感覚を肌で感じて目を開けると、目の前の彼が私に穏やかに微笑んでくれている。その笑顔は、私だけのもの。
「ふ、藤澤さん...遅くなりましたけど。お誕生日おめでとうございます...」
すると、彼は離れるどころか、私の身体を引き寄せた。
「っ...」
突然のことで小さく息をのんだけれど、抗うことはせず、そのまま彼の腕の中に閉じ込められる。時折、ギュと腕に力を込められ、その都度、身体を強張らせてしまいそうになったけれど彼の背に縋りついていた。
それから、彼の唇が私の耳たぶに口づける。
「ん....」
意識せずとも甘さを含んだ吐息が漏れてしまい、彼に聞こえたら恥ずかしいと思っていたら、また、耳元で。
「...ファーストキスの上書きはできましたか?」
彼の声もなんだかいつもより甘く聞こえる。
さっきのキスで気持ちが蕩けていた私は「はい」とだけ答えて、気がつくと自ら彼の固い胸に顔を埋めていた。
...もう、藤澤さんは帰らないといけないのに。
私たちが抱き合う様を見ている車のデジタル時計は、とっくに12時を過ぎている。
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