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44.Bask in the afterglow④
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さっきの話が藤澤さんの話したかったことなのかと思いきや、もう1つ。
「三浦さんの方は29日って納会ですか?」
最初、『納会』と言われてピンとこなかったけれど。
「...確か...そんなことを田山さんから聞きましたが、納会って何をするのでしょうか?今年の営業の最終日ですよね?」
それについての内容の詳細を一切知らされておらず、参加だけは義務付けられていたのを思い出す。
田山さんは参加さえすればいいよと言う口ぶりだった為に、アドリブにめっぽう弱い私は、少し不安だった。違う所属だけれど、藤澤さんなら何か知っているかなと期待を込めてチラリ。勘のいい彼は私の不安をすぐに察してくれた。
「懇親会みたいものですよ。まあ、今年もお疲れ様といって、会社でおおっぴらに飲むだけなんですけどね」
...なんだ、本当に参加するだけ。
私はほっと胸を撫で下ろし、気になったのでもう少し詳しく。
「...その納会は遅くまでかかるのでしょうか?」
「得意先周りが殆どないので、夕方くらいで帰る人と残って飲む人に別れます。だから、その時に帰れますよ。ただ、その日の当番にあたっていると夕方には帰れません。三浦さんは当番ですか?」
うちが年内の営業を終えてもお客様はまだという場合もあり、電話番と品物配達を当番制で数人の営業が受けることになっている。
彼が聞いてきたのは、私がその当番に当たっているかどうかという事だった。
「いや、違っていたと思います」
「それなら...」と彼は言いかけ、珍しく周りを警戒しつつの小声になる。
「その日にどこかで待ち合わせして、帰りにデートしませんか?」
...え、え、え!?
これにはすんなり返事を返せなかった。
「だから、行きたい所を考えておいて下さいね」
藤澤さんは殆ど周りに人がいないからと、お茶目にウィンク。
せっかく自分なりにドキドキを抑えていたというのに、こんな素敵なお誘いに、また、挙動不審状態に陥る。
思ってもみなかった初デート!!
勤務時間中だというのに「どうしよう...」と、真剣に悩んでしまう。
ただ、彼が出来たら是非行ってみたいと思っている場所もいくつかあったので、お伺いを立ててみる。
「あの...本当にどこでもいいのでしょうか?」
すると、藤澤さんは笑顔で「もちろんですよ」と即答してくれた。
「それなら...」と遠慮がちに伝えたのは、夜景の見える展望台。
「展望台?そんな所でいいのですか?」
彼はもっと違うところを想像していたのか、意外といった風に聞き返してくる。
「は、はい...実はデートで行くのが、ずっと夢でして...」
流石に子供っぽいかと恥ずかしくなり俯いてしまいそうになったけれど、ふとある可能性が脳裏を過ぎった。
「...そこの展望台に行かれた事はありますか?」
デートスポットでもとても有名な場所だったから、彼自身はもしかしたら他の誰かと何度も行った事があるのではと気になってしまう。
彼の返事を真剣に待ってしまうと、柔らかく笑われた。
「...そうですね、友人と一度だけ行ったくらいでしょうか。それも大分前のことだから、どんなのかは忘れました」
彼の否定とも取れる言葉に安堵して、ホッとする。
「それなら、良かったです」
「えぇ。だから、是非行きましょう」
勤務時間中にも関わらず、デートの約束をしてしまうなんて。
付き合っている事を秘密にしてと話すわりに、藤澤さんは大胆だった。
それとも、私が寂しくないように気を回してくれたのかなとも思う。
いつも、藤澤さんの方が大人で一枚上手だから、自分も同じように大人になりたい。
そうなったら、なんでも気軽に話せる関係になれるのかな思っていると、向かいから白衣姿の男性がこちらに駆け寄ってきた。
「主任、探しましたよ。どこいってたんすか?」
松浦に声をかけられ、私と彼は顔を見合わせる。
そんな私たちの間に松浦はズケズケと入り、彼の持っていた段ボールを奪っていった。
「なんで、三浦のくせに主任に荷物待たせてんだよ?」
相変わらずのすごい言われように私は開いた口が塞がらない。彼は松浦の横柄な態度に苦笑いしつつも、私の手から紙袋を受け取った。
「これは俺たちが責任持って運んでおきますので。三浦さん、またね」
軽く手を振ってくれると、そのまま彼は松浦と2人で研究所へと向かう。
私が今にもスキップしそうなくらい浮かれて戻ったのは、言うまでもない。
「三浦さんの方は29日って納会ですか?」
最初、『納会』と言われてピンとこなかったけれど。
「...確か...そんなことを田山さんから聞きましたが、納会って何をするのでしょうか?今年の営業の最終日ですよね?」
それについての内容の詳細を一切知らされておらず、参加だけは義務付けられていたのを思い出す。
田山さんは参加さえすればいいよと言う口ぶりだった為に、アドリブにめっぽう弱い私は、少し不安だった。違う所属だけれど、藤澤さんなら何か知っているかなと期待を込めてチラリ。勘のいい彼は私の不安をすぐに察してくれた。
「懇親会みたいものですよ。まあ、今年もお疲れ様といって、会社でおおっぴらに飲むだけなんですけどね」
...なんだ、本当に参加するだけ。
私はほっと胸を撫で下ろし、気になったのでもう少し詳しく。
「...その納会は遅くまでかかるのでしょうか?」
「得意先周りが殆どないので、夕方くらいで帰る人と残って飲む人に別れます。だから、その時に帰れますよ。ただ、その日の当番にあたっていると夕方には帰れません。三浦さんは当番ですか?」
うちが年内の営業を終えてもお客様はまだという場合もあり、電話番と品物配達を当番制で数人の営業が受けることになっている。
彼が聞いてきたのは、私がその当番に当たっているかどうかという事だった。
「いや、違っていたと思います」
「それなら...」と彼は言いかけ、珍しく周りを警戒しつつの小声になる。
「その日にどこかで待ち合わせして、帰りにデートしませんか?」
...え、え、え!?
これにはすんなり返事を返せなかった。
「だから、行きたい所を考えておいて下さいね」
藤澤さんは殆ど周りに人がいないからと、お茶目にウィンク。
せっかく自分なりにドキドキを抑えていたというのに、こんな素敵なお誘いに、また、挙動不審状態に陥る。
思ってもみなかった初デート!!
勤務時間中だというのに「どうしよう...」と、真剣に悩んでしまう。
ただ、彼が出来たら是非行ってみたいと思っている場所もいくつかあったので、お伺いを立ててみる。
「あの...本当にどこでもいいのでしょうか?」
すると、藤澤さんは笑顔で「もちろんですよ」と即答してくれた。
「それなら...」と遠慮がちに伝えたのは、夜景の見える展望台。
「展望台?そんな所でいいのですか?」
彼はもっと違うところを想像していたのか、意外といった風に聞き返してくる。
「は、はい...実はデートで行くのが、ずっと夢でして...」
流石に子供っぽいかと恥ずかしくなり俯いてしまいそうになったけれど、ふとある可能性が脳裏を過ぎった。
「...そこの展望台に行かれた事はありますか?」
デートスポットでもとても有名な場所だったから、彼自身はもしかしたら他の誰かと何度も行った事があるのではと気になってしまう。
彼の返事を真剣に待ってしまうと、柔らかく笑われた。
「...そうですね、友人と一度だけ行ったくらいでしょうか。それも大分前のことだから、どんなのかは忘れました」
彼の否定とも取れる言葉に安堵して、ホッとする。
「それなら、良かったです」
「えぇ。だから、是非行きましょう」
勤務時間中にも関わらず、デートの約束をしてしまうなんて。
付き合っている事を秘密にしてと話すわりに、藤澤さんは大胆だった。
それとも、私が寂しくないように気を回してくれたのかなとも思う。
いつも、藤澤さんの方が大人で一枚上手だから、自分も同じように大人になりたい。
そうなったら、なんでも気軽に話せる関係になれるのかな思っていると、向かいから白衣姿の男性がこちらに駆け寄ってきた。
「主任、探しましたよ。どこいってたんすか?」
松浦に声をかけられ、私と彼は顔を見合わせる。
そんな私たちの間に松浦はズケズケと入り、彼の持っていた段ボールを奪っていった。
「なんで、三浦のくせに主任に荷物待たせてんだよ?」
相変わらずのすごい言われように私は開いた口が塞がらない。彼は松浦の横柄な態度に苦笑いしつつも、私の手から紙袋を受け取った。
「これは俺たちが責任持って運んでおきますので。三浦さん、またね」
軽く手を振ってくれると、そのまま彼は松浦と2人で研究所へと向かう。
私が今にもスキップしそうなくらい浮かれて戻ったのは、言うまでもない。
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