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46.デートしませう。②
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今日の目的地はサンシャインの展望台。
年の瀬が近かったせいもあり、駅構内からして人が溢れていた。
藤澤さんは池袋には不慣れだったので、当然のごとく行き先を乞う。
「さてと、どっちの方向に行ったらいいか教えてくれるかな?」
ここに彼を呼び出したのは私だったのでここでのナビゲーションは私の役目のはず...が、不意に道を尋ねられてしまい、視線があらぬ方向へと泳いでしまった。
「...えーと、ですねえ」
すぐに方向が定まらなくて、目の前の構内地図で現在位置を確認。実は私は大の方向音痴で、道案内は常に友達頼みだった。だから、改めて聞かれると具体的に行き先を決められず、固まってしまう。そこで同じように地図を眺めていた彼からさりげなく確信をついた一言が発せられる。
「もしかして、道が分からないとか?」
困りつつも、じっと見つめてくる視線を今の私にはかわすことなんて、とてもできない。
私は呆気なく白状した。
「...その、いつも友達に連れてきてもらっているので、あまり道はよく分からないんです。実はものすごく方向音痴で」
この場所までわざわざ指定して彼を呼び出したにもかかわらず、道案内すらできないなんて。
そんな自分に情けなくてシュンとしてしまうと、彼は怒るどころか優しく笑い飛ばしてくれた。
「じゃ、一緒に迷いながら歩いてみようか?これも初デートのいい思い出ってことで」
少しもイラつきもせずに私にとっては最上の打開案を示してもらい、それには躊躇することなく従う。
なんて大人な対応。そんな彼に比べ、あの松浦だったらと思うと道々どんな嫌味を言われるか考えただけでぞっとしてしまう。
...本当に優しくて、こんな人が自分の彼だなんて未だに信じられない。
そんなことを密かに思いながらも、彼の道案内のおかげで殆ど迷うことなく目的地にたどり着いた。
ここは年末だというのに、商業施設の為かわりと多様な客層で混雑気味。
目的の展望台は夜景がウリで遅くまでやっているということで、先に夕食を済ませることにした。
これで彼と二人で食事をするのは、まだ片手で数えて足りる回数程度。
だから、今日も彼の前で食事をするのは緊張で胸がいっぱいになり、普段の半分くらいしか食べられない。
それから食事を終え、展望台に向かう途中でも緊張は続きっぱなし。手を繋がれている傍から端正な横顔をちらちら盗み見ては、目をそらすのが習慣づいているというか。
そんな挙動不審なことを何度も繰り返していれば、見られている本人にバレるのは時間の問題だった。
「どうしたの?どこか他に寄りたいところでも?」
彼は私が何かを言おうとして躊躇っていると勘違いしたらしい。
「あ、いや。その、藤澤さんとここに来れるなんて夢みたいです。これは、夢なんでしょうか?」
言うに事欠いて何か可笑しなことを口走ってしまったけれど、彼も私につられたのか普段の彼からは全く想像できないことを言われてしまう。
「...いつも優里はそんな事ばかり...じゃあ、今、君と手を繋いでいるのは一体誰ですか?透明人間?」
そんな彼っぽくない言い回しに思わず顔を見てしまうと、繋がれている手に力が込められ答えを促されてしまった。
「その...ふ、藤澤さん...です」
「そうだよ、それが正解。だから、今は俺のことだけを考えてほしいんだけど」
いつも仕事では冷静な彼が、少し拗ねたように言う。それに今日の彼は少し様子が違っている気がする。
展望台へ直通のエレベーターに乗っている今も、私は恥ずかしくて俯いてしまっているのだけれど、ずっと見られている気配を感じて思い切って顔を見上げたら、彼と目が合った。
「あの...何か?」
髪にでも変なものが付いていますかと聞こうとした矢先、エレベーターの到着音でかき消されてしまう。
それから言葉を続けることができず、我先に他の乗客がゾロゾロと降りていく。
そして、ようやく最後の最後で藤澤さんが出ようとして、繋がれていた手が持っていかれた。
それには不意を突かれて、私はたまらずバランスを崩してしまう。
「きゃっ...!」
「...っと、ごめん」
彼によろけた身体を支えてもらうと、手以外の身体の密着に恥ずかしくなる。
「す、すみません...」
「どういたしまして」
でも、そこはいたって普通に返された。
...なんだ、さっき見られていたのも気のせいだったのね。
意識してしまったのは自分だけと、エレベーターを降りながら自意識過剰と自分を窘める。
すると、隣を歩く彼の方から独り言のようなものが聞こえた。
「本当に優里は危なっかしい。だから、いつも目が離せなくて困るんだ」
ずっと俯いてしまっていたから話していた時の顔は見れなかったけれど、独り言みたいに言ったのは照れ隠し?藤澤さんも私のことを少しは意識しているのかと、思うだけで幸せだった。
年の瀬が近かったせいもあり、駅構内からして人が溢れていた。
藤澤さんは池袋には不慣れだったので、当然のごとく行き先を乞う。
「さてと、どっちの方向に行ったらいいか教えてくれるかな?」
ここに彼を呼び出したのは私だったのでここでのナビゲーションは私の役目のはず...が、不意に道を尋ねられてしまい、視線があらぬ方向へと泳いでしまった。
「...えーと、ですねえ」
すぐに方向が定まらなくて、目の前の構内地図で現在位置を確認。実は私は大の方向音痴で、道案内は常に友達頼みだった。だから、改めて聞かれると具体的に行き先を決められず、固まってしまう。そこで同じように地図を眺めていた彼からさりげなく確信をついた一言が発せられる。
「もしかして、道が分からないとか?」
困りつつも、じっと見つめてくる視線を今の私にはかわすことなんて、とてもできない。
私は呆気なく白状した。
「...その、いつも友達に連れてきてもらっているので、あまり道はよく分からないんです。実はものすごく方向音痴で」
この場所までわざわざ指定して彼を呼び出したにもかかわらず、道案内すらできないなんて。
そんな自分に情けなくてシュンとしてしまうと、彼は怒るどころか優しく笑い飛ばしてくれた。
「じゃ、一緒に迷いながら歩いてみようか?これも初デートのいい思い出ってことで」
少しもイラつきもせずに私にとっては最上の打開案を示してもらい、それには躊躇することなく従う。
なんて大人な対応。そんな彼に比べ、あの松浦だったらと思うと道々どんな嫌味を言われるか考えただけでぞっとしてしまう。
...本当に優しくて、こんな人が自分の彼だなんて未だに信じられない。
そんなことを密かに思いながらも、彼の道案内のおかげで殆ど迷うことなく目的地にたどり着いた。
ここは年末だというのに、商業施設の為かわりと多様な客層で混雑気味。
目的の展望台は夜景がウリで遅くまでやっているということで、先に夕食を済ませることにした。
これで彼と二人で食事をするのは、まだ片手で数えて足りる回数程度。
だから、今日も彼の前で食事をするのは緊張で胸がいっぱいになり、普段の半分くらいしか食べられない。
それから食事を終え、展望台に向かう途中でも緊張は続きっぱなし。手を繋がれている傍から端正な横顔をちらちら盗み見ては、目をそらすのが習慣づいているというか。
そんな挙動不審なことを何度も繰り返していれば、見られている本人にバレるのは時間の問題だった。
「どうしたの?どこか他に寄りたいところでも?」
彼は私が何かを言おうとして躊躇っていると勘違いしたらしい。
「あ、いや。その、藤澤さんとここに来れるなんて夢みたいです。これは、夢なんでしょうか?」
言うに事欠いて何か可笑しなことを口走ってしまったけれど、彼も私につられたのか普段の彼からは全く想像できないことを言われてしまう。
「...いつも優里はそんな事ばかり...じゃあ、今、君と手を繋いでいるのは一体誰ですか?透明人間?」
そんな彼っぽくない言い回しに思わず顔を見てしまうと、繋がれている手に力が込められ答えを促されてしまった。
「その...ふ、藤澤さん...です」
「そうだよ、それが正解。だから、今は俺のことだけを考えてほしいんだけど」
いつも仕事では冷静な彼が、少し拗ねたように言う。それに今日の彼は少し様子が違っている気がする。
展望台へ直通のエレベーターに乗っている今も、私は恥ずかしくて俯いてしまっているのだけれど、ずっと見られている気配を感じて思い切って顔を見上げたら、彼と目が合った。
「あの...何か?」
髪にでも変なものが付いていますかと聞こうとした矢先、エレベーターの到着音でかき消されてしまう。
それから言葉を続けることができず、我先に他の乗客がゾロゾロと降りていく。
そして、ようやく最後の最後で藤澤さんが出ようとして、繋がれていた手が持っていかれた。
それには不意を突かれて、私はたまらずバランスを崩してしまう。
「きゃっ...!」
「...っと、ごめん」
彼によろけた身体を支えてもらうと、手以外の身体の密着に恥ずかしくなる。
「す、すみません...」
「どういたしまして」
でも、そこはいたって普通に返された。
...なんだ、さっき見られていたのも気のせいだったのね。
意識してしまったのは自分だけと、エレベーターを降りながら自意識過剰と自分を窘める。
すると、隣を歩く彼の方から独り言のようなものが聞こえた。
「本当に優里は危なっかしい。だから、いつも目が離せなくて困るんだ」
ずっと俯いてしまっていたから話していた時の顔は見れなかったけれど、独り言みたいに言ったのは照れ隠し?藤澤さんも私のことを少しは意識しているのかと、思うだけで幸せだった。
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