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パパのお弁当
しおりを挟む「二人暮らし大丈夫そう?」と、お昼時に聞いてきたのは、実家が隣同士な幼馴染みだった。小中高と学校が同じで、違うのは幼稚園くらいの男友達。どういうわけか、この男には頭が上がらなくて、時々困る。
彼の言葉に「うん」と返しながら、お弁当の包みを解いて、蓋を開けた。
出てきたのは、丁寧に詰められたおかずと、わかめとしらすの混ぜご飯で作ったおにぎりである。おかずは、からあげとたまご焼き。それから、昨日の夕飯にも出てきたほうれん草のゴマ和えと、きんぴらごぼう。冷凍のミニグラタンとミニトマトが二つ入っている。
「このトマトは弁当箱のスペースを埋める為に入れたな」と思いながら、箸をからあげにのばした。
「弁当、自分で作ったの?」
「ううん」
もぐもぐと鶏肉を咀嚼しながら首を横に振る。
二十回しっかりと噛んでから喉の奥に押し込み、一度水筒の麦茶を給水してから口を開いた。
「作ってもらった。自分用のついでだって」
実家に居たときは、忙しい母に代わって妹と自分のお弁当を作り、自分の分が間に合わないなというときはコンビニで買ってたりした。が、引っ越してからは作ってくれる人がいる為、朝ご飯の時間ギリギリまで寝てられる。買い食い用のお金の心配もしないで済む。
「超快適だよ」と笑って見せると、友人の目が生あたたかいものに変わった。
「ついでねえ……」
母親が作った弁当をひろげている彼は、視線を南の方へ向ける。
その方角は、パパの職場がある方だ。
「なに?」
「なんでもない。で、パパが作ってくれた弁当はどう? 食レポだと思って答えて」
ミニグラタンを一口食べてから、質問に答えた。
「自分以外が作った弁当って新鮮だね」
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