小鬼は優しいママが欲しい

siyami kazuha

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盛夏の頃

錆び

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 夏の青空が頭上に広がる。蒸し蒸しとした湿気が混じる気温に辟易としながらも、一学期最後の学校を終えて俺は大きく伸びをした。

「やっと終わったー!」

 期末考査から今日の終業式まで半日授業が続いたので長く感じた。明日から朝早く起きる必要が無い。仕事も早朝からあるものは入っていないし、ゆっくりできる。夏休み万歳。
 そう思っているのは俺だけではないらしく、クラスの子たちも明日からの夏休み何をするか、明日どころか午後からどこへ行こうかという話に花を咲かしている。
 そんなクラスの奴等を、俺は「いいなあー」と思いながら見つめていたと思う。仕事の予定は入っているけど、誰かと遊びに行く予定は入れていないのだ。幼馴染み二人を誘ってどこかへ行ってもいいのだが、いつ代打で仕事が入るかわからないから気兼ねなく誘えないし、遠くにも行けない。
 学生アイドルはこういう時不便だよなとむくれていると、菩薩の末裔が背後から耳打ちするように名前を呼んだ。不意をつかれて、俺の肩が跳ね上がる。「あんまりからかってやんなよー」という寺の孫の表情が視界の隅にあった。

「この後、仕事入ってる?」

「は、入ってないよ」とは答えたものの、一学期最後のHRが終わってからスマホを見ていないので自信がない。
 二人のくだらないやり取りを耳に入れながらスマホを見ると、パパからの通知は一切無かった。仕事は無さそうだ。

「午後から何かするの?」

「孫と一緒にお好み焼き食べに行こうって話してたんだよ。お寺の近所にあるお店」

「え? ずるい」

「それは普通に行きたいぞ」と訴えると「じゃあ一緒に行こう」と三人で教室を出る。二人は電車通学だけど、家と家の最寄り駅の間は自転車だ。俺は車通学だから、自転車がない。
「後ろのーせて?」と言うと、寺の孫は渋い顔したけど、幼馴染みは「しょうがないな」と了承してくれた。違反だけど、許して欲しい。
 久しぶりにやった二人乗りは、ぎっと耳にうるさい音がした。俺が使ってた自転車、今どうなっているかな?
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