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拗らせ王子視点

未定

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掴まれていた手をパッと引いて
慌ててシェニーの方に向くと
それはそれは
あの時、シェニーが1人になった時にみた
寂しそうにクリクリの目を少し潤ませたシェニーにがそこに立っていた。


これだ。
この顔だ。


俺は性格の悪い考えが頭をよぎった。
思わずニヤリとした。

「別にシェニーには関係ないよ。」

そう俺が言った瞬間
シェニーが悲痛な顔でぷくっと頬を膨らまして目をさらに潤ませた。


なにこれ。なにこの可愛い顔。
ぷくっと顔の上級がきた!
もっとみたい。もっと俺だけでいっぱいになってるシェニーをみたい。

そう思うととまらなくなった俺は
そこからシェニーにただひたすら
嫉妬して欲しいがためにサラと仲良くなっていった。

究極のクズ野郎の出来上がりであった。


それから休み時間のたびにサラのところに行き
サラにお熱を上げているバカ王太子を演じた。
全てはシェニーに嫉妬してもらうために。

もちろんサラとは急速に仲良くなっていったはしたが、そこに恋愛感情なんてものは全くない!
むしろサラには俺がどれだけシェニーを好きか休み時間のたびに惚気ている。

はじめのうちはサラも戸惑っていたが
今では俺のことを応援してくれている
よき友人である。


それに俺がいくらサラと仲良くしようと
シェニーは嫉妬でサラを虐めることはしなかった。
シェニーはそんな悪いことをする子ではないと信じていたからこそ
この方法でシェニーを俺から目が離せないようにしたんだ。

嫉妬で怒るシェニーは俺でいっぱいになる。
俺だけを見てくれる。

そんな傲慢さと独占欲で後々後悔する時がやってくるなんてこの時は思わなかった。




今日も今日とて相変わらず昼休みになると追いかけてくる可愛いシェニーを見たいがために慌ててサラを迎えに行く。


「サラ!昼にいこう!」

サラの教室まで足を運び扉付近から
教室の窓際の一番後ろの席にいるサラに声をかけた。

教室内の空気が少しだけ変わるのを感じたが対して気にもしなかった。

「アインス様!かしこまりました!」

そうカバンから弁当を持ってパタパタとやってくる彼女は華奢で守ってやりたくなるような見た目から他の男が見たら
惚れるんだろうなと思った。

「サラ別に敬語じゃなくていいぞ。」

「そういうわけにはいきません。いくら友人でもあなたは王太子様なんですよ。」

となぜかえっへん!という顔をした
サラと一緒に中庭の奥の木の下のベンチに向かった。

そこはシェニーのお気に入りの場所だった。

ある時の放課後。
シェニーに見送られて馬車で城に帰ろうとした時
シェニーはいつも俺を見送った後
自分の家の馬車が来るまで何をしているんだ?と疑問に思い急いで学園に戻り
こっそりシェニーの後を追った。

すると中庭の奥のベンチに腰掛けて
目をつむり穏やかな表情で
馬車を来るのを待っていた。

ピンクブラウンの髪は
心地よい風にユラユラと揺れていて
時折、可愛いその声で小さく鼻歌を歌っていた。


その姿があまりにも綺麗で。

いつも怒り散らしていた
あのシェニーはどこにもいなかった。








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